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回向亭茶話 ~三世を渡る
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「紀伸くん」
病院に横たわる私を、妻が眺めていた。
泣かないで――涙を流していない彼女の顔を見ながら、そう思う。
ああ、そうだ……私もまた、涙を流せぬまま、彼女を看取ったのだったか。
私、病気なの――そう打ち明けられた
久須部 紀伸
が、葛藤の末に画業の道をあきらめたのはまだ20代になったばかりの頃だった。
恋人であるひかるが、生きていくために必要な治療費を稼ぎ、安定した生活基盤を整えてあげること。懊悩の後、紀伸が出した結論に、彼女は反対してきた。
それでも、だ。
「君を失うほうが、いやなんです」
だから――これからも、一緒に過ごしてほしい。
事実上のプロポーズ。紀伸の言葉にひかるは申し訳なさと、それ以上の嬉しさをにじませながら、小さく、肯いてくれたのだ。
「紀伸くん、最近無理してない?」
朝、お弁当を渡しながらそう問いかけてきたひかるに対して紀伸は笑みを浮かべて「そんなことないよ」と手を振って見せる。
妻の病気は一段落を見せていたものの、継続的に高額な薬の服用が必要で――紀伸は、それこそ死に物狂いで働いてきた。
それでも、30代を少しばかり超えた二人の同居生活は割合に順調で、ほんの少しだけ貯金もできて。できれば、どこかに記念旅行にでも行きたいね、とそんな話をしたりもするようになっている。
「そう? あんまり眠れてないみたいだから……」
申し訳なさそうな表情をほんの少しだけ浮かべ、そう言うひかる。その頭を撫でて紀伸は笑った。
「大丈夫、今日は早く帰るからね」
「じゃあ少し奮発しちゃおうかな」
楽しみだ――そう言って、妻の頬へ軽く口づけを落とし、紀伸は「行ってきます」と告げて家を出た。
いってらっしゃい。そんな妻の声を聴きながら後ろ手に玄関を閉じて一歩踏み出した紀伸。不意に意識を失い……次に気付いた時には、妻の泣き顔が、視界いっぱいに広がっていた。
「紀伸くん」
涙をこらえるひかるの顔に、紀伸は横たわったまま、手を伸ばす。
「ごめんね――ごめん、ごめんなさい」
私のせいで、紀伸くんがたおれちゃうなんて、やだよ……。流れぬ涙をぬぐってあげたいのに、伸ばした手は、動かない。
言葉も、自由に紡ぎ難くて。
ひかるのために画業をあきらめて、がむしゃらに働いてきた。
苦手な営業を頑張って売り上げもあげられて、どうにかこうにか稼ぐことができて――どうしてこんなことになったんだっけ。
ぼんやりとそんなことを考えた紀伸は、不意にああ、と得心する。
私が、これなら幸せになれるんじゃないかと思ったのだった。
画業に明け暮れてひかるの病に気付けなかったかつての自分を悔やんでいたから。
だから、そこまで戻って――ひかるの病を治すことだけに。彼女と。「絵をかいて」と言い残して死んだ彼女と、死に別れずに暮らせることができたなら、どれだけ幸せだろうと思って。それで、願ったのだった。
思い出した今、この世界で過ごした十年が、胸に去来した。
なかったはずの、十年。
楽しかった。けれど、時々ひかるは、申し訳なさそうに私を見ていた。そんな時は、たいてい、私が何か絵画展のポスターに注意をひかれたりしたときで。
私が画業を諦めればそれで良くなると思ったのに、結局はこうして倒れて、逆に彼女を悲しませてもいる。この選択肢も間違いだったようだ、と思い、ならばどうすれば正解だったのだろうと自問自答する。
結局は死別する運命だったのだろうか。
苦いものが胸にこみあげたが、微かに、握られた手にひかるの温かさを感じて、思考を停止した。
青ざめた彼女の顔に、すまないとの思いがこみ上げてきて、そして同時に思い至った。そうだ、今思うべきは、何が正しかったかなどでは、ないのだ。
そう、紀伸は自分を叱咤する。
記憶よりも少しだけ齢を重ねた彼女。今だからこそ――言えなかった言葉を、言わねばならない。
「ひかる」
必死の思いで、かすれた声を紡ぐ。
「ひかるは、私の絵を好きだといってくれたろう」
画家であった親からも否定された、歪な精神の具象であるのに。
「私はそれで救われたんだ――だから、絵よりも……君を失うことが耐えられなかった」
最後の思いを絞り出し、握られた手に、力を籠める。ほんの少しだけ、動いた気がして、どうにか、笑みを浮かべることにも成功できたと、思う。
「ありがとう、私の絵を好きだと言ってくれて。私と一緒に、生きていてくれて。出会ってくれて――ありがとう」
それは、言えなかった言葉。
ようやく、言えた。その安堵の中で、紀伸の意識は、闇の中へと旅立っていった。
気づけば、そこは喫茶店の店内で。
しばしの沈黙。淡々と珈琲を用意する壮年の店主に、紀伸は笑う。
「我ながら、甘い夢でした」
「それくらいでちょうどいいさ」
ほら、目覚めにちょうどよかろうよ。声とともに、店主が珈琲を出してくれる。
「……苦いですね」
「そうだな」
同じ珈琲を飲みながら、店主も笑う。
「これが、現実の味ですね」
「そうだな」
しずかな店内で、二人はそれからたわいもない会話を繰り返していく。
まるで、長い間地中に眠っていた化石を掘り起こすかのように、丹念で、丁寧な――繊細な会話を、長いときをかけて。
今の紀伸にとって、自身に必要なことがそれなのだと、無意識のどこかで感じていたせいかもしれない。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
蒼李月
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
神話・伝説
定員
15人
参加キャラクター数
12人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年05月30日
参加申し込みの期限
2016年06月06日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年06月06日 11時00分
参加キャラクター一覧
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