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回向亭茶話 ~三世を渡る
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静かに彼は己の手を見つめている。
何もうまくできない。せっかく身に備わった、「特別な力」があっても、うまくそれを使えない自分が悔しく、苦しい。
己の中にある「正義」が他者にとっては身勝手な理屈でしかないということ、全て自分のエゴでしかないということに、とうに気づいていた。
だが、己がいなくともこの世界は回るのだ、自分自身は何ら特別に必要とされているものではないのだ――そんな世界を見せつけられた今の彼にとっては、その認識が、厳しく、重い。
「僕なんか、いらないんだ――」
つぶやくと同時に、ろっこんが発動する。
誰にも見られない、ビルの屋上。ゆっくりと、少年の身体が炎に包まれた。
化成の服が焼ける際の鼻につく異臭。
蛋白質の焦げる独特の臭気が、周囲を満たす。
アツイヨ――イタイヨ――
微睡みに沈む寝子島の街の一角で、慟哭が炎へ巻き上げられ――消え去った。
灯 斗南
が見たいと思ったのは、「自らの生まれなかった世界」だった。
それに応えるかのように、扉をくぐった彼は、その世界を見ることができていた。
パッと見には、その世界は何らも変わったような気配がない。
それが現実と異なると気づかされたのは、ふと気づくと祖父の家近くにいつの間にか立っていたこと、そして、そこに笑い声が響いていたこと。それだけだった。
入るべきか否か。
迷う斗南の横を、小さな少年が駆け抜けていく。
斗南が見えていないかのように、門前に立つ彼の横をすり抜けた少年は、まったく物怖じすることなくその扉を開いた。
「じいじ! ママ! ただいま!」
明るい声。
おかえりなさい、と家の奥から聞こえる「母」の声。
祖父がいる気配を感じたが、彼の知る、家に宿ってでもいるかのようなあの厳しい気配は全くない。
短いやりとりでも――悟らざるをえなかった。
――やっぱり、「あの時自分は生まれてはいけなかった」んだ。
記憶の中の、厳しく斗南を鍛える祖父もいない。
頭を撫でながら、悲しそうに笑む母もいない。
ここにあるのは。斗南のいない生活の中で……皆から愛される、一人の子供。
斗南では決して受けられなかった、皆からの愛を受け取る、子供。そして、皆の笑顔。
いたたまれなく、走り続けていくばくかの刻が過ぎた。
夕闇をとうに過ぎ、あてもなく寝子島の中をさまよった斗南。彼がその現場に居合わせたのは、たまたまなのだろうか。
――よくも!
いつか、どこかで聞いた声。
他の仲間たちに己の判断を責められた、あの時の記憶が唐突に呼び起こされる。
そんな斗南の目の前で、見たことのない青年が、どこからか呼び出した、茨の鞭をふるう。
斗南の目の前で、華麗な立ち回りを見せるその青年が、相手の少女を傷つけることなく、その身を封じ――少女にとりついていた「ナニカ」の宿るイヤリングを外しとった。
目前で燃える少女の髪を見ながら、己の身体に火をつけ敵の動きを封じる――そんな選択肢を選んだ己とは異なる戦いぶりに、愕然とする。
自分以上に、うまくろっこんを使い、そして華麗な正義のヒーローとして立ち回る人間は、存在するのだ。そう、「自分がいなくとも」。
揺れる世界の中で、斗南は一歩、後ずさる。
もう、いやだ。
走り出した斗南。夢中で走り――気づけば、扉を抜けていた。そこには確かな存在感と、それまでの世界では感じなかった、世界に「自分がいる」感覚を肌で得る。
だが、そんなことはどうでもよかった。
扉を走り抜けた勢いそのままに、彼は店を走り抜け、そして小路を抜け、街へと消えていった。――やがて、夜陰に塗れたビルの屋上へ立つまで、どこで何をしていたのか……斗南の中で、その記憶は存在しなかった。
アルコールの冷たい感覚。
身体を包む炎。
焼け落ちる皮膚と、その痛み。襲い来る後悔と、安堵、そして空虚。
ふと気づくと、それらがすべて、「消えていた」。
「よう、小僧。戻ったか」
ふと見上げれば、目前には祖父と同年代の、禿頭の坊主が一人。背中には扉。
何のことはない、そこは回向亭の、中だった。
「死んでみた気分はどうだ。また死にたいくらい最悪の気分か」
ほれ、のまんかい――そう言って黒々とした珈琲を差し出す老爺の声。反駁の気力もわかず、斗南はただ、そのカップへと手を伸ばしていた。
重い脚を引きずり、斗南は歩く。
人通りの多い通りを抜け、そこはいつしか海岸沿いの、砂の上。
――回向の意味を知っとるか。
坊主は坊主らしくたまには説教でもしてやるか、そう述べた声が、耳に嫌悪の感情を伴い纏わりついている。
本来説教などせんが、特別にしてやろう――そう言って、少年の目線に合うよう、ひざを曲げ、腰を下ろす老人が言の葉を紡ぐ。
『回向は利他の行。他者の善を認め喜び、己が善を伝え他者の喜びを伝えるが回向。これすなわち功徳の道よ』
ぎり、と唇を噛み締める斗南に、坊主は口の端を曲げて答えた。
『……意味が分からぬであろう。であれば考えよ。まず、人を見、人を思いなされ。お主はヒーローとなりたかったか? 違かろう――いてくれてありがとう、左様に他者に喜ばれる、その為に必要なのは何か。己が善行をなしたと思うことをやめ、只管に皆の喜ぶことを考え、己を思う人を見よ』
そうして、老人は斗南の手をとり立たせた。
『そしてひたすらに、真に在りたいものであれ――なりたきものとなるために必要なことを見定め、そうあろうと生きるのじゃ。絶望は、そのあとでも遅くなかろう。主はまだ、やりきっておらぬとわしは思うんじゃがな』
力なくあるく斗南を店の外へと連れ出した老人は、トン、と背中を押して声だけを残す。
『ひたすらに歩き、人を思い、悩めい小僧――今は、それが似合いじゃて』
気づけば、波打ち際に足が浸かっていた。
このまま歩けば、波にのまれ、水の底へ沈むのだろうか。
そんな考えが斗南の心中に、静かに沁みる。
歩いていけば、今度こそ死が待つ。
だが、斗南は歩けない。一歩踏み出しかけ、砂から抜けぬ足に気付く。
「――歩けない、動けないんだ……」
崩れ落ちる少年は、波の音を耳に拾いながら、小さく沈む日に照らされ呟いていた。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
蒼李月
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
神話・伝説
定員
15人
参加キャラクター数
12人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年05月30日
参加申し込みの期限
2016年06月06日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年06月06日 11時00分
参加キャラクター一覧
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