【星幽塔】酒場にて　→飲む　→話す　→外に出る　→脱ぐ｜リアクション

【星幽塔】酒場にて　→飲む　→話す　→外に出る　→脱ぐ

　教会の鐘が２回鳴り、サジタリオに夜を告げた。
　踊り騒いだ結梨亜・カールシュテインや桜庭円も酒場を出、ステラも眠かったのだろう、酒場の奥に引っ込んでしまった。
　ここからは、大人の時間。それを待ち望んだかのように真境名アリサが酒場に現れた。

（……あれ？　確か自分は仕事から帰って布団へ潜り込んだはず）
　アリサはきょろきょろと騒がしい周囲を見回した。それは明らかに自宅ではないし、この騒がしさは何だか彼女の職場……水着ガールズバーのようだ。
　しかし違和感があった。客がおかしいのだ。みんなＲＰＧっぽい格好をしているし、人間ではなさそうな者もいる。
（そう言えば、眠りに落ちる時になんか女の子の声が聞こえたような……）
　確かステラって言ってなかったかしら……と思いながらも、アリサは自分の格好をまじまじと見た。
　彼女の格好も変わっていた。それはまるでお伽噺に出てくるような、色っぽい踊り子の格好であった。とにかく露出が多い。しかしこの格好に関してはアリサは違和感は感じなかった。現実の仕事は似たような格好でやっているからだ。
　何だかなぁと思っていると、誰かが声をかけてきた。
「知らない姉ちゃんだなぁ、シラフで踊るくらいなら酒でも飲みなよ。どうせタダなんだから」
「え？　お酒タダなの？」
　アリサは思わず男の方を振り返り訊く。男は彼女の衣裳にデレデレと鼻の下を伸ばした。
「ああ、黒竜討伐の祈願みたいなものさね。どうだい姉ちゃん、オレと飲むかい？」
　男は椅子を勧めてくる。特に抵抗もなくアリサは男と飲むことにした。

　アリサは何となく、ここが夢ではなく、知らない世界らしいことが分かってきた。飲んだことのない味ではあったが、酒の味がはっきりと美味かったからだ。
　だからと言ってアリサは特別慌てることもなかった。
「あ、ここのお酒って結構イケちゃう」
と言いながら、彼女はあっという間にグラスを空ける。そして次のグラスに手を伸ばした。

　それは、不思議なお酒だった。１口飲んだ途端に、何だか身体が火照ってきたのだ。
　飲めば飲むほど、身体の奥からジンジンと熱せられていくような感覚を覚え、アリサは思わず色っぽく身悶えをしてしまう。前の男がゴクリと唾を呑んだ。
「……ああ、熱い……」
「え？　暑い？」
　うつ伏せてしまったアリサに男が戸惑いながらも声をかける。アリサは違うと叫びたかった。身体が熱くて熱くて堪らない。突然アリサがガタンと立ち上がった。
「あたし、踊ってくる！」
　そう叫ぶとアリサはホールの中央にある小さなステージに飛び出した。

　酒場にどよめきが走った。
　突然スタイル抜群の見た事のない踊り子が、酒場のステージで踊り出したのだ。
　その妖艶な踊りは酒場の男達の視線を釘付けにする。その視線に誘われるまま、アリサは少しずつ自分の身に着けている衣裳を剥ぎ取り、投げ始めた。
（どうしてこんなに熱くて脱ぎたくなるの？！）
　思いながらもアリサは踊るのをやめない。それだけは、混じり気のない自分自身の衝動だからだ。
　不思議で妖しげな空気が酒場に満ちていた。最後の１枚を剥ぎ取ったアリサは、観客の異様な熱気に包まれながら、一糸まとわぬ姿でトランス状態になって踊り続けるのだった。