【かるた】わんだふる・ゑきさいてぃんぐ・かるた大会｜リアクション

【かるた】わんだふる・ゑきさいてぃんぐ・かるた大会

　ほととぎす　鳴きつる方を　眺むれば　ただ有明の　月ぞ残れる

　小萩の反応は早かった。自分の名前に使われている”ほ”の文字に、自分が大好きな小萩は敏感な反応を示す。
「やりました！」
綺麗に弾かれた札は、真っ直ぐ二メートルほど飛んでいった。

　みゆきは、首にかかったチャームにそっと手を触れた。
（私は、今まで様々な人に出会い、支えられてここまで来た。だから私は、一期一会の心を大切にしたいんだ）
　チームメイトは皆９月生まれで、誕生日は一週間と変わらない。何かと共通点の多い二人を同じチームに誘えたのも、何かの縁だろう。そんなみゆきの琴線に触れた歌がある。

　これやこの　ゆくも帰るも　別れては　知るも知らぬも　逢坂の関

　大切にしている歌が読まれたのを聞いて、みゆきは強い気持ちを込めてその札を払った。
「人の出会いや別れを歌にしてるのが、印象に残ったんだ」
　自分のとった札を見つめながら、優勝のためにベストを尽くそうと改めて感じた。

　君がため　惜しからざりし　命さへ　長くもがなと　思ひけるかな

　六字決まりの札に、レイはピンときた。「君がため」で始まる歌は、相手の陣の左右に分かれて置いてある。レイは読まれるとすかさず右側に手を伸ばし、フェイントをかける。相手チームが惑わされているうちに、六文字目まで冷静に聞いて左側にあった取り札を押さえた。
「さっき送ったばかりの札だからね。場所は完璧だよ」

　ながらへば　またこの頃や　しのばれむ　憂しと見し世ぞ　今は恋しき

　冴来が綺麗な払い手を見せた。この歌への思い入れも、また強いものだ。今どんなに辛くとも、時がすぎればその痛みは過去のものに変わっていく。そして、いつかは懐かしく、愛しく思い出せる時が来る―――そういう思いの込められた歌である。
「そう思うと、辛くてももう少し頑張ってみようと思うのよね」

　瀬をはやみ　岩にせかるる　瀧川の　割れても末に　あはむとぞ思ふ

　レイが素早くアイコンタクトを送った。
（相手陣の奥ね！）
　それを瞬時に読み取った玲栖が、力強く敵陣下段の札を払う。レイの手の届かない範囲に関しては、真ん中に座る玲栖のスピードが頼りだ。
「お手つきには気をつけてね！」
　玲栖は余裕を持った笑みを浮かべてチームメイトに声かけをする。札を取られた局面でも、決して焦らず落ち着いた態度を見せる。札を取る動作一つ一つにも、流し目が決まっていた。
「おおー、素晴らしかー」
　七瀬が、札を取った玲栖を賞賛する。だが、その目は相変わらず取り札の文字に釘付けになっていた。

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