夜の美術館でおいかけっこしましょ！｜リアクション

夜の美術館でおいかけっこしましょ！

　美術館に、轟音が響く。
　それと殆ど同時に――館内が、まるで夜明けの光が射したように白み始めた。

　朝鳥さゆるに付き添っていた服部剛は、
「……夜が、終わった？　って、窓もないのに分かるんも妙な話やけど」
　辺りを見渡して、そんなことを呟いた。
「ほら、顔上げてみぃ」
　間断なく泣き続けていたさゆるが、剛に言われるまま面を上げる。
　その双眸に、淡く明け始めた世界が映り――それは、この世界での最後の記憶となった。

　都府楼暦もまた、美術館の様子が変わるのを目の当たりにしていた。
「え……次は、一体何……？」
「落ち着け。……多分だが、悪い展開じゃねぇだろ」
　暦を宥めて、彼女と共に出口を探していたフィーナ・シレンツィオは眩しさに目を細める。
「……これは、使わずに済みそうかもな」
　己の手の中、ミネラルウォーター入りのペットボトルを見遣ってフィーナはひとりごちた。

　響いた轟音に、鎌八まもるは辺りをきょろきょろと見回す。
「何だ？　何が起こったんだ？」
　美術館のキャッチャの出番かと拳を握るまもるの隣で、思案するは八神修。
「夜明け、か……」
　音の正体は気になるが、目前の現象は状況の改善を思わせる。
「……この世界は、なんだったのだろう」
　呟きは、意識と共に光の中に溶け消えた。

　獅子目悠月の応急処置を終えた尾鎌蛇那伊も、
「あら、今度は何事かしら？」
　と、轟音と館内の変化に素早く辺りに視線を走らせた。
　世界の白んでいくのに、悠月はほうと息を漏らす。
（帰る、のか？　父の所じゃなくて、寝子島に）
　そう思うと、胸の奥に灯りが点るような心地がした。
　胸の内に燻る焦りは消えないけれど、次に目が覚めた時はきっと、自由の中だ。

　急激に色を変えていく館内の様子に、北風貴子は伊賀解理に縋りついた。
「こ、今度は何……？」
「大丈夫ですよ、先輩。僕がいるし、夢補正もありますから、ね」
　貴子を安心させるように柔らかく声を掛けながら、解理は思う。
（本当なら、こんな忌々しい場所ビームでぶっ壊してやりたいが……）
　今は、震える手で自分の腕を掴む人の支えにならなくては、と。

　轟音が世界からその他の全ての音を奪って、気づけばそこは光射さぬ場所。絵画の中だ。
　夜海霧楓は、闇の中でぼんやりと思案した。
（俺は……死んだ、のか）
　腕の中に、彼女を抱き締めた感触が残っている。と、その時。
（あれは……）
　塗り潰したような黒の中に、楓が見たのは爆弾を抱えた、先刻と変わらぬ彼女の姿。
　瞬間辺りには光が溢れ――それきり、彼の意識は途絶えた。

　かくて、美術館は沈黙する。
　次に目を覚ませば、そこは、彼らが馴染んだフツウの世界。

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あとがき

担当マスター：巴めろ
ファンレターはマスターページから！

お世話になっております、ゲームマスターの巴めろです。
まずは、ご参加くださった皆様、本当にありがとうございました！

警備員とそれぞれの方法で向き合ったり、状況打破のために知恵や力を尽くしたり。
奇妙な美術館でのＰＣ様方の奮闘ぶりを描かせていただきまして、
ＰＣの皆様の姿に胸をいっぱいにしながらの執筆となりました。

ＰＣ様方にとって、皆様にとって。
このシナリオ内での出来事が、意味のあるものとなることを心より願っております。

重ねてになりますが、ご参加くださった皆様に心からの感謝を。
本当に本当に、ありがとうございました！

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