無機質ワールドとオカシな戦士｜リアクション

無機質ワールドとオカシな戦士

【辛党の狂信者】

「お待ちください、総統！」
「んん？」
　ナマズカーの後部座席から、辛党のメンバーの一人である日暮ねむるが、骨削瓢の前にニュッと姿を現した。
「あの程度の者達に、総統の手を煩わせるわけにはいきません！　ここは僕にお任せください！」
「お、おう……」
　あまりに暑苦しいねむるの様子に、瓢も若干引いていた。
『辛党』と書かれたはちまきを締めたねむるの目つきは間違いなく狂信者のそれであった。
（信じる心って怖いですねぃ……）
　瓢は他人事のように思いつつ、面白そうだからねむるの好きにさせることにした。
「いよし。それじゃあおたくに辛党の未来を託すから、好きにやっといでぃ」
「はっ！　ありがたきお言葉！」
　偉大なる総統のお言葉に、ねむるは普段の彼からは想像もつかないくらい暑苦しい敬礼をした。
「それでは総統、行って参ります！」
　ねむるはいつもとは別人のような熱さを振りまきながら、武器一式が入ったアタッシュケースを手に、ナマズカーを緊急停止させて、車外へと飛び出した。
　そんなねむるの後ろに、同じく辛党に所属する名もなきメンバー達も続く。彼らは全員が全員目を血走しらせていて、正直、かなり怖い。
「む……。ウナギから人が出て来たな」
「何か目つきあやしいな」
　無機質警備隊の隊員達が口々に言いながら、車外に出たねむる達へ接近してくる。
　瓢はねむる達に接近する無機質警備隊達を尻目に、再びナマズカーを急発進させた。
「あとは任せたよぃ」
「頑張ってねぇ～」
「「「「はっ！」」」」
　瓢と新参者の丸美が車上から手を振ると、ねむるを始めとする辛党の面々がビシッと敬礼をする。
　そして、

「よし、お前達。武器はこのタバスコ入り水鉄砲を使え！　死を恐れるな！　正義は僕らにある！　総統に胃袋を捧げよ！　ジーク・ヒサゴッ！」
「「「ジーク・ヒサゴ！」」」

　というような暑苦しいやりとりが繰り返し行われた。
　日暮ねむるのキャラ崩壊、ここに極まれりである。
　まあ、そんなこんなで。
　シーサイドタウンのどまんなかで、『辛党』のねむる隊と、無機質警備隊との正面衝突が開始する――。