カルティック・レボリューション　武装カルタバトル！｜リアクション

カルティック・レボリューション　武装カルタバトル！

　渾身の一撃を、ロベルトは札一枚で押しとどめる。
　驚愕に見開かれるシグレの瞳。

　勝負あった、と誰もが思った。
　万策尽きた、と思えた。

　だが不屈のロシア帝国。
　奥の奥の、さらに奥の手。

　秘められたツアーリ・ボンバ（皇帝爆弾）。
　
　ゆっくり動く、彼の唇。

「Не в свои сани не садись. （自分のものでないそりに乗るな）」

　効果：カウンター。効果を打ち消し、相手に偏向させる。

　ゴォウッ！
　閃光が巻き起こり、シグレが激しく吹き飛ばされた。

　相手の技を見切り、それをわが物とする――。
　不意を突いて相手を戦意喪失に陥れる。
　
　シグレの性格を読み切っての、起死回生の戦術。　
　純朴、直情径行と見えて、ロベルト、単純ではない。

　―ー満場、しんとして、声も出ず。
　まさかの逆転劇に、誰もが言葉を失う。

　勝負あったか――。

　だが。
　

「The darkest hour is that before the dawn.」

　低いつぶやきが、シグレの口から洩れる。
「最も暗い時間は夜明け前である――事態の悪化は好転の兆し」

　明けない夜はない。
　瀕死のダメージを回復し、かろうじて戦線に踏みとどまらせる。
　
　並の盗人なら、自分の技を掠め取られたときに、自我が崩壊していた。
　矜持を奪われ、茫然自失に陥っていただろう。

　だが、シグレ・ナイトウォーカー、生粋の盗賊であり、騎士。
　たかが一度や二度の失策で折れるほど、彼の誇りはやわではないのだ。

　裂帛の気合とともに、シグレはロベルトに跳躍。

「最高！」
　ロベルトは笑う。
　美しいものを愛する彼。
　人が情熱を高ぶらせている瞬間は――それが少年でなくても――彼の心をときめかせる。
　熊の一撃で屠るべく、此方も跳躍。

　二つの影が交錯した。
　薔薇の花弁が舞い、清冽な薫りがあたりに満ちた。