カルティック・レボリューション　武装カルタバトル！｜リアクション

カルティック・レボリューション　武装カルタバトル！

「ボケ彦め……」
　迅速に飛翔しつつ、大田原いいなは顔をしかめる。
　思い出すのも忌まわしい、数々の因縁が彼にはあった。
　関わって、ろくな目に合わないだろう。
　だが、と思い直す。
　考えてみれば、今は敵同士。さらに今回はカルタのバトルだ。
　こてんぱんに叩きのめして、溜飲をさげてみるのもいいだろう。

　歌留多研究会の、優秀なブレーンの一人。
　カルタに造詣は深く、カルタ勝負の四十八手に通じる。
　――たろっとでも、とらんぷでも、花札でもなんでも構わぬ。
　――使える札はなんでも使え、なのじゃ。
　そして彼女は、同じく歌留多同好会の仲間を思い浮かべる。
　基本は孤高。単独行動。
　だが、使える札はなんでも使う。
『彼女』にとって、自分が『使える札』であるなら、それは無上の嬉しさだ。
　
「……さて、儂もそろそろ出陣するかの？」

「いーちゃん！　大人いーちゃん！　おひさー！」
　ぶんぶんと手を振る信彦。
　開始早々、いいなはろっこんを解放。
　その姿を、二十歳前後のグラマラスな女性に変える。
「通りすがりのおねーさん、デボネラちゃんでーす！」
　セクシーなポーズに、信彦の注意が集中する。
　その彼に、巨大な肉食獣の影が覆いかぶさった。
　咄嗟に逃れる信彦。狼ほどもある、巨大な犬。
　黒毛を逆立て、牙を光らせる様は、まるで悪夢の生き物のよう。
「『煩悩の犬は追えども去らず』
　煩悩は追い払っても去らない。犬のように。涅槃経より」
　よく通る、澄んだ声が響き渡る。
「効果：犬を召喚して攻撃。威力は相手の煩悩の深さによるのです」
　ただならぬ空気に、一同が声の主を振り返る。
　巨大な犬を従えて、全身からカルタエナジーを発散させ、少女が降り立つ。

　本条小萩。
　歌留多同好会会員にして、残念妄想なら人後に落ちることはない。
　殺傷力抜群のリーサルウェポン、爆現。
　
　小萩の号令の元、再び跳躍する犬。
　煩悩で満ち満ちている信彦にとって、この攻撃はまさに肯綮！
　だが、慌てず騒がず札を取り出す信彦。

『犬も歩けば棒に当たる！』
　
　彼の右手に現れたのは、棒ならぬＢＯＷ、超巨大なバリスタ。
　引き絞って弾くと、光の箭が幾条にも煌めき、矩形を描いて飛来する。
　電撃のような矢は犬を貫き、一瞬で送還せしめる。
　あくまでひねくれて『棒』では出さない信彦。

「『漁夫の利』！」
　信彦のバリスタが消失。
　素早く逃れるいいなの手には、まんまと盗んだ札。
　――とにかく戦闘を避け、消耗と優位を狙うのじゃ……。

　ちらりと、自軍の様子をうかがう。