授業風景～１年３組の場合～｜リアクション

授業風景～１年３組の場合～

●揚げ物奮闘

　唐揚げを作る瑚野上栞凪と椿美咲紀、マグロの竜田揚げを作る神城凛も下味をなじませる作業に取り掛かっていた。
　彼女達は雪見大福に手順を教わったが、普段から料理をしている栞凪はともかく、美咲紀と凛は苦戦気味だった。
　美咲紀に至っては、エビフライに使うエビの殻と背ワタを取り除く作業があるので、更に苦戦するかもしれない。

　それ以上に苦戦しているのは、丼に使うとんかつの下拵えをしている毒島林檎だった。
　豚肉に小麦粉、卵、パン粉に浸けて油で揚げるだけかと思いきや、大福に「筋切りはしないの？」と言われてクールな表情が一瞬崩れかけた。
「……ど、どうすればいいのか……教えてほしい……」
　作り方がわからないので、大福と白沢先生に教えを乞う。そのおかげで、筋切りと肉を叩いて柔らかくするところまでなんとかやり終えた。
　これに塩、こしょうを振り、小麦粉をつければ林檎が思っているとおりの手順となる。

　下味がなじんだ時間になったところで、揚げるための油の温度調整を。
「油の温度は、水に濡らした菜箸か湿らせたパン粉の広がり具合でわかるります。１７０度が揚げ物に適した温度です」
　白沢先生がそう教えてくれたので、私が試してみるよと栞凪が軽く水で濡らした菜箸を油が入った揚げ物用鍋に入れる。
「箸から細かい泡が出てるね」
「パン粉は鍋全体にゆっくりと広がったな」
　パラパラとパン粉を落とした凜がこれは何度くらいかと尋ねると「１７０度から１８０度ってとこかな？」と大福が答えた。
「じゃあ、丁度良い温度なんだね。何から先に揚げる？」
「まずは１８０度で揚げる唐揚げからが良いな。その後にとんかつと竜田揚げを揚げよう」
　大福の意見に賛成した皆は、まず唐揚げから揚げることに。
　まずは、唐揚げを揚げるのは栞凪と大福。
「じゃ、まずは私から揚げるね」
　栞凪は家から持ってきた唐揚げをまぶして馴染ませたものを入れようとするが、揚げ油を汚さないようにするには片栗粉を衣にしたほうからが良いという大福のものから先に揚げることに。
　皮目が下になるようにして入れ、２分ほど揚げ、一度ひっくり返してまた２分ほど揚げる。
「泡が小さくなってきたね。揚ったのかい？」
「揚ったみたいだね。カラッとした色になってきてるし」
　揚げたての唐揚げを興味津々に見る凜と栞凪は、大福のが揚り終えると自分達のものを入れ、揚げ始めた。
「良い感じに揚ってきたみたいだね」
「うん、良い感じだ」
　出来具合に大満足の２人は、揚ったものを金網に置き余分な油を切る。冷めたら盛り付けができる。

「次は私のエビフライを揚げる番ね。上手くいくかしら」
　苦労しながらも自力で殻と背ワタを取り除き、軽く切れ目を入れ、小麦粉、卵、パン粉をまぶしたエビを菜箸でそっと入れる美咲紀。
「浮いてきたら強火にして。そうするとカラッと揚るから」
　大福の指示に従い、強火にして揚げる。揚げた後は、唐揚げと竜田揚げと別の金網に置く。

「……あ、揚げるぞ……！」
　おそるおそる小麦粉、卵、パン粉をまぶした筋切りした豚肉を入れる林檎だったが、パン粉の表面が固まったのを見ると揚げることができたとホッとする。
「そろそろひっくり返したほうが良いですよ」
「……わ、わかった……」
　様子を見に来た白沢先生にそう言われ、ゆっくりとひっくり返す。それから４分ほど経つと泡が小さくなってきた。揚った合図だ。
「……で、できた……」
　揚げたてのとんかつを見て、林檎は力が抜けた。だが、彼女のお弁当はこれで完成ではない。
　栄養面を考え、玉ねぎととんかつを卵でとじて丼にする。林檎いわく、最終の丼カツドゥーン。
　これをお腹一杯食べるとなると、まだとんかつを揚げなければならない。
（筋切りは大変だったけど、カツドゥーンをお腹いっぱい食べるために頑張る！）
　とんかつを揚げては卵でとじる作業の繰り返しは大変だが、皆で食べることを考え頑張る奮闘する林檎だった。