箱庭のノイズ｜リアクション

箱庭のノイズ

【エピローグ】

　翌日。
　修と美咲紀は、再び例の店を訪れていた。昨日撮った写真と、箱庭を見比べるためだ。
　だが、ショーウィンドーから箱庭は消えていた。
　驚く二人を、店主が店の奥へと手招く。
　そこで彼らが見たのは、湖の部分に大きな亀裂が入ったあの箱庭だった。
　今朝、店主が店に来たところが、こうなっていたのだという。
　二人は、思わず顔を見合わせた。
「シュー君、これって……」
「ああ。やはり、夢とこの箱庭は、関係があったということだ」
　低く囁く美咲紀に、修も小声で返す。
　店主はその二人に、午後から修理に出すことと、オルゴールが鳴り出したこと、中から魔法符が出て来たことを教えてくれた。
　二人は再び顔を見合わせつつ、礼を言って店を出る。
　入口で、彼らは夏朝と出くわした。
　箱庭の異変を話すと、彼女も驚いた顔をする。
　出て行く二人を見送って、夏朝は改めて店内を見回した。
（夢を見始めた時、夏夜ちゃんがあの箱庭に捕らわれているんじゃないかって思った。……そして、この店の中には他にも『誰か』が『商品』に捕らわれて、商品ごと陳列されているんじゃないかって……）
　胸に呟き、ゆっくりと店の中を見て回り始めた。
（結局、箱庭は僕が考えていたようなものじゃなかった……）
　そう、修と美咲紀の取材によって、違うことが判明した。
（でも……）
　夏朝はつと、綺麗に着飾った人形の前で足を止める。
「『悪い意味でフツウじゃない』お店でないと、いいけど」
　低く呟いて、視線を上げた。
（もし、そうなら……）
　きっとこれからも、またこの店の商品にからむ奇妙な事件が起こることになるのだろう――そう思わずにはいられない、夏朝だった。

　数日後。
　今回の顛末は、修と美咲紀によって寝子高新聞部の『寝子島ミステリーレポート』にまとめられた。
　更にその数日後には、例の店のショーウィンドーに修理を終えた箱庭が再び飾られた。
　修理された箱庭は、優しいオルゴールの音色を響かせて店を訪れる人々と道行く人々の耳と心を楽しませた。
　そして、いつしか夢の噂は忘れられて行ったのである――。

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あとがき

担当マスター：織人文
ファンレターはマスターページから！

参加いただき、ありがとうございました。
マスターの織人文です。

さて、こんな形になりましたが、いかがだったでしょうか。
ガラスの蝶たちの鱗粉については、文字数の関係でせっかく作った設定を生かしきれなかった気もしておりますが……。
参加して下さったみなさまが、少しでも楽しんでいただければ、幸いです。

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