￥まゆ先生と迷子の水着

「ヒャッホー！　まゆ先生が見てるイベントだー！　お宝目指して頑張るぜ！」
　黙ってればイケメンな細マッチョな冴木 竜司は、一気にテンションを上げレインボー褌姿で燃えていました。
（初夢にまゆ先生のイチャラブな夢を見て以降、しみったれた現実に危うく素の自分に戻りかけてたが……久しぶりのまゆ先生！）
　幼女を愛する竜司の好みにジャストフィットする身長と童顔の相原 まゆ先生。
　グラウンド貸し出し責任者として観戦のみならず、せっかくだから出場しようとしていましたが。
「水着、いったいどこいっちゃったんだろ？　やっぱり雪の中……」
　あちこちを見回しているまゆ先生に、爽やかに竜司が声をかけます。
「まゆ先生―！　お久しぶりです！　貴女の冴木竜司、ただいま参上！」
　まずは軽いジャブで攻めようという竜司。
「竜司君も出るのね。頑張ってね」
　竜司はどこからか虹色に輝く布きれを取り出しました。
「聞けば今回のイベントの為の水着を無くされたとか！　そこで俺特製のレインボー褌はどうですか！　勿論胸を隠すサラシもレインボー色ですよ！　何より俺とペアルックですよ！」
「……せっかくだけど遠慮しておくわ」　
　雪の中頑張る竜司のモチベーションを下げまいと、ひとまず笑顔で答えるまゆ先生ですが。
「えっ、いやだ？　じゃあ、こっちのレインボー水着はどうですか？」
　次に竜司が出したのは虹色のスクール水着でした。
　おおっ、と見ていた男子生徒やＯＢたちからどよめきが上がります。
　まゆ先生の身長と顔だちにはとても似合ってしまいそうで、でもまゆ先生はこう見えて出るところは出ているしで、いろんな意味で危険です。
「光り輝くまゆ先生はまさに地上に降りた女神！　という訳で俺と一緒に初めての共同作業しましょう！」
　まゆ先生はわなわなと拳を震わせました。
「……しません！　スク水とか絶対着ないから！　一人で頑張ってちょうだい」
「どいひー！？」
　こうしてひとしきりいつものやりとりをして、竜司は『今の冴木竜司』を見つめ直したのでした。
（お宝とか興味ないけどまゆ先生と触れ合いの為にがんばるぞい！）
　
　
「綺麗で頑丈な雪像を作るのに久しぶりに芸術科として腕を振るいましたわ」
　満足そうに言うのは星ヶ丘寮所属の美人メイド、檜扇 唱華。
　今年のお年玉＆お年賀争奪戦は猫鳴館だけでなく星ヶ丘も協賛。
　寝子高のＯＧでもある唱華はお世話がほしいとお呼ばれされたようです。　
「流石元猫鳴館所属の方々、あれだけ雪像作ったのに生徒を迎えにいける体力を残して……」
　と言いかけたところ、和風メイド服姿を見たＯＢたちは、
「いやあ、可愛い後輩たちのためにすっかり力を使い尽くしました……」
　急にふらふらとなり、弱弱しげな声を出します。
「あららやっぱりお疲れでしたか、ささこちらへ」
　唱華はＯＢたちをスタッフ席へ誘います。
「タープテントを張ってそこにストーブと七輪とガスコンロを持ち込みました。既におしるこは準備できてます。他にししゃもにスルメに…ビールもございますよ？　勿論ジュースも。流石に寒い！　という方の為、毛布をご用意しております。ぬかりありません」
「さすが檜扇さん、完璧ですなあ」
　ＯＢたちはすっかりくつろいでいます。
「今お餅焼いてるところですわ。まゆ先生は味見役でお先に食べて頂いてます」
「うん、美味しいわ」
　満足そうにおしるこを食べるまゆ先生に、唱華は耳打ちします。
「まゆ先生の水着、雪像の中だと思うのですが……」
「えっ？」
「ええ、すみません。誰かがセクシー路線で入れたものと思います」
「まったく困ったものね」
「少しお待ちいただければ、探せると思います」
「でも、誰が入れたかわからないんじゃ探しようもないでしょう？」
　まゆ先生の問いに、唱華は黙って微笑みます。
　彼女は雪像に『直接聞いて』みるつもりでした。
　唱華のろっこん『声無き声』は、人工物から声を聞き、会話できるのです。
（どの雪像に入ってるかはＯＢと先生の秘密ですけど。発見した瞬間まゆ先生がクラウチングスタートして生徒から強奪あわよくば記憶抹消（物理）できるように）
　そこへ北原みゆきがやってきました。
「まゆ先生、水着なくしたんですか？　背丈的にあうと思うのでよかったら私のスペア使ってください。未使用なので大丈夫かと思うのですが」
「えっ……ありがとう」
　ちょっと迷った様子のまゆですが。
「こういう機会ですし、一緒に参加しましょう」
　大人しそうなみゆきにこう言われて、水着を受け取ることにしました。
「そうね、それじゃ使わせてもらうわ」
　　

「猫鳴館のＯＢがお年玉を配るって聞いたんだけど……」
　噂を聞いて桜花寮からやってきたのは眼鏡にクローバーのピアスの桃川 圭花。
「圭花ちゃん、こんにちはなのだ水着持ってきてないなら水褌使うのだ」
　真央がやってきて水褌を勧めます。
「えっ？　いや水着持参と聞いたから持っては来たけど、いかがわしい話だったらＲＰＧ方式(ああいうのって、敵を叩くとゴールドとか落とすでしょ？)に変更させてもらおうと思って……」
　言い終える前に唱華が声をかけました。
「更衣室はこちらです。どうぞ」
「水着持参ってこーいう話だったの！？」　
　着替える羽目になった圭花は説明を聞いて状況を理解しました。
「……………………寒い！！！　正直もう帰りたくなってきたんだけど……でもここで逃げ帰るのも癪だし、一銭にもならないんじゃ脱ぎ損よね。ここは大きく稼がせてもらうわよ……！」
　圭花の目に欲望の炎が燃え上がります！　心なしか体も暖まってきた気がします。
「まゆ先生の水着？　見つけたら容赦なく競売させてもらうわよ！」
　竜司にとっては厄介なライバル出現のようです。

「これも違うのですね……」
　唱華は雪像や雪だるまにろっこんで中身を質問して回っていますが、水着が見つからないままスタート時間がきてしまいました。