九夜山ミステリー・凍り付いた山荘の悲劇～犯人はフジコ～｜リアクション

九夜山ミステリー・凍り付いた山荘の悲劇～犯人はフジコ～

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「なあ、さっきのアレ、お前のろっこんで防げたんじゃねーの？」
　屋根裏部屋にて、物色していたアカリが悠月に言う。
「え？　あ。あー……」
　防御のできるろっこんを持つ悠月。しかし難しい顔をする。
「あの状況で、冷静に聖歌を唄えって？」
「……無理だな」
　再び武器探しに戻る二人。
「イカしたものが見つかった」
　サキリは戦利品を装着し、刀に見せた。
「！？」
　チェーンソーにホッケーマスク。そして鉈。
「殺人鬼には殺人鬼ファッション、だ」
「頼むからいきなり飛び出してくるなよ」
　反射的に攻撃しそうだ、と言う刀。その手には、置いてあった西洋甲冑から拝借した剣がある。
「ん？」
　剣の鞘に紙が巻きつけてあった。取ろうとした時、未沙が不気味に笑いだす。
「朝野……大丈夫か？」
「女の子って、いいよねぇ」
　全然大丈夫じゃない。
　未沙は極度の興奮状態を維持していた。触手化が治っていない。
「変態オーラも維持……フラグは立ったままか」
　サキリが心配げに言った時、妙な音が聞こえてきた。視線が屋根裏部屋で唯一の窓に集まる。
「フジコか？」
　誰かが言う。やがて手が見え、葉月が窓を押し上げて入ってきた。
　追い詰められた葉月は、窓の脇にあった非常用のはしごを使い上ってきたのだ。しかし吹雪に身体をさらしたため、その身体は低体温となってしまっている。
「女の子！」
　あろうことか倒れた葉月に、変態＝未沙が触手乱舞で襲いかかった。
「朝野！」
　直後、レーザーが未沙の心臓を貫いていく。
「朝野ー！」
『ウフ♡』
　フジコが現れ、窓を突き破って入ってきた。葉月に手刀を振り下ろす。
「させるか！」
　サキリが瞬間移動して、チェーンソーを構えた。刃が手刀と火花を散らす。
『邪魔シチャ、メッ』
　フジコの服の下から手榴弾が落ちてくる。
「なに持ってるんだよ！？」
　刀が葉月を回収。二階へと撤収を始める。
　爆発が起こった。毒々しい色の気体が屋根裏部屋に充満する。
「毒ガス！？　おい、来島！」
　ろっこんで障壁を張った悠月。一足遅く爆風を受けたアカリは痙攣し目を閉じていく。
「あれ、俺、なんだか眠く……」
　寝るな！
　唄いながらアカリを抱え起こそうとした時、悠月は爆煙を破って障壁に張り付いてきたフジコと目が合った。
「う、うわああ！？」
　聖歌が途切れ、直後、フジコの両腕が悠月を昇天させた。

「死んでないのは俺達だけか」
　極低温の葉月を抱え、サキリと刀はダイニングに帰還する。
　そこには、月、武道、庚の三人がいた。
「いよいよ籠城だな。近代武器やレーザーにどこまで対抗できるか分からないが」
　武道が家具や調度品を使って扉を塞いでいく。
「志波先輩、こんなものを見つけたんだ」
　先ほどの紙の中身を見た刀が、厳しい表情で武道に渡す。
「なになに……これは」
　それは最初の犠牲者、サンマの手紙だった。サンマ臭いから間違いない。
「フジコの私室に、街へ出られる地下トンネルがあるらしい」
　だが、そこは死と隣り合わせの危険な場所であると書いてあった。
「夜明けまで待ってもいいが、確かめる価値はありそうだ」
『行カセナイワヨォ』
　フジコの声がダイニングに響き、扉が激しく鳴動した。

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