【お正月】カルタ！　～つくってあそぼう～｜リアクション

【お正月】カルタ！　～つくってあそぼう～

「おいしい珈琲が飲める店、ミルクホール」

　誉と刀、翠響と紅緒、月詠とイリヤの３つのチームは接戦を繰り広げていた。
　英二の——時給を上げて欲しいのでは、と疑惑が持ち上がった——この札も、かれこれ４回読まれているので、絵札と読札が一致してきている事もあって素早く翠響の手に収まる。
「いただきっ！」
　彼女の小柄さを生かしたファインプレーに、札の場所を覚えていた刀も先を越されてしまった。
　しかし次の札はこれだ。

「よるが来る、フツウじゃない者達の時間だよ」

　今度は刀が、自身が描いた黄昏時に三日月と星が浮かぶ空の絵札を取る。
「やった！」
「頑張る美少年たち、眼福眼福♪」
　刀と誉がハイファイブするのを読み手になったタルトが見ながら感想を述べて、次の札をめくった。

「こだわりの、料理には幸せが詰まってる」

　オムライスの描かれた絵札、そしてもう一枚。

「ほし屑の海、浮かぶ三日月が、船のよう」
　これらはやはり本人の誉が確保した。二枚目は遠い位置にあったが、ほとんどスライディングのような勢いで取ったのだ。
「貰った！！」
「すげー勢い」と双子が拍手してきたので、誉は振り返りながらぎこちない笑顔をする。
「せめて自分の読札は確保したいので——」
　何故なら恥ずかしいからだ。
　描いている時は気にしていなかったが、いざ第１試合で紅緒の口から文が吐かれた時に、自身のロマンチストぶりに気づいてしまったのである。
　タルトが読んでいる最中に取ったのも、最後まで読ませまいとする気持ち故だ。
　しかしこの二つの札がテーブル上からなくなってしまえば、緊張感から解放され、気づけば夢中になっている。
　それはチームメイトの刀も、対戦相手の翠響たちも同じようだ。
　試合は最後に集計するまで、どのチームが勝ったかも分からない接戦の展開だったが、やはり一度ついた火はちょっとやそっとでは消えなかったのか、翠響と紅緒のチームの優勝で終わった。

＊　＊　＊

　全ての試合を終えて、皆はホールに残ったまま、双子が焼いてきたベイクドチーズケーキをつついていた。
　おやつの時間は逃してしまったし、ひとしきり騒いだ後だったので、甘い物が一層美味しく感じられる。
「三位か……。
　でも集中力と反射神経…記憶力……色々と試されて楽しかった！」
　誉が感想を述べると、英二が「でも」と苦い顔で笑う。
「札の内容にいちいち突っ込んでたら、出遅れちゃったな。次やるなら普通のカルタもいいかも」
「今度は皆何して遊ぶ？」
　刀が話しかけると、あと少しの自由になる時間の使い道を、皆が模索してまた騒がしくなり始めた。
　長いようで実は短い正月休みの１日を、彼等はめいいっぱい楽しもうとしていた。

このページにイラストを設定する