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【お正月】寝子島神社に願いを込めて
普段と違わぬ跳ねた髪先。眠たげな目つき。コートを着込み、冷えた空気に白い息を吐く水守 流は面倒くさいと普段なら考えてしまうものの――新年はちゃんとするかと意気込んで初詣へとゆっくりと向かう。
折角のお参りだ。御神籤と言う運だめしをしようかと社務所に向かった所で、見慣れた『巫女』に首を傾いだ。
「あれ？ 本居、巫女服着て何やってんだ？ いや、似合ってるっちゃ似合ってるけどよ」
「あ、水守君。あけましておめでとー！」
楽しいスクールライフが為に小遣い稼ぎだと勤労意欲を燃やす本居 陽毬は流へと手を振る。
元気いっぱいな食い友に「明けましておめでとう」と頭を掻いた彼は、新年早々『アルバイト』とは不思議だと彼女なら飛びつきそうな屋台群と彼女の顔を見比べて首を傾いだ。
「バイトか？」
「そうなの。今年も親戚一同で初詣……って思ったんだけどね、高校生にもなったし。
折角の休みだし！ 頑張ってお小遣い稼ぎしないとね！ 新年から尊い勤労をしてまーす！」
愛らしいかんばせにドヤッと笑みを乗せた巫女はまるで小さな犬の様に褒めて欲しそうな眸で彼を見上げている。
「あー……ちょっとまってな」
「……？」
挨拶もそこそこにいってくると背を向けた流を見送って、腹ペコな陽毬は小さく溜め息を吐く。
（……お腹すいたなぁ……）
屋台から立つ香りは食欲を誘い、空腹に如何したものかと腹を撫でる。まさに色気より食い気な彼女は『美味しい物』の為に貴重な休みを尊い労働に費やしているのだ――それでも、空腹なのは変わらない。
お小遣いでどんな美味しい物を食べようかと悶々と考える陽毬の前へと流が戻ってくる。
「団子の一本位なら奢ってやるよ」
ほら、と自分の物と陽毬の物を手に顔を出した流へと陽毬は瞳を輝かせる。
美味しそう、と飛びつきそうになる感情を抑えて「ありがとう」と陽毬は受け取った。
「頑張ってるからな」
「あ、それでね……あのね、水守君……今日のアルバイトの時間、もうすぐ終わりなんだ」
ふと、上目遣いに見上げてくる陽毬に流の頬にカッと赤みが差す。
子犬の様な愛らしさに、乙女の色香が混ざり込み流は「な、なに」としどろもどろに彼女へと返した。
「だから……その、水守君がよければ……バイトが終わるまで待っててほしい……な……？」
じ、と見上げる瞳は涙に濡れている。まるで少女漫画の様なシチュエーション。
高鳴る胸を押さえられずに流は「いや、別に暇だからいいけどよ……」と頬を掻いた。
内心、戸惑いが隠せずに期待してしまうのはオトコノコ。甘える『少女』を無碍に出来ないのはそういう生物だからだ。
（おいおい……待てよ、なんか意味深な雰囲気じゃね？ ……いや、でも、こいつの事だぞ。
きっと、バイトの後に屋台で何か奢ってくれとかそういうのだろうな。……わかってる、分かってるんだ――それでも何かを期待してしまうのは――そう、そうだ）
巫女服、とカッと目を見開く。
彼女が身に纏っているのは神聖なる巫女服だ。
彼は慄いた。恐ろしいのは『巫女服』という装甲だ。
それだけで、何かを期待してしまう。恐ろしい補正だと彼はたじろぐのだった……。
「んじゃ、バイト終わるまで適当にブラブラしてるとするぜ。
あ、おみくじ引いてってもいいか？」
「あ、ありがとうございます～」
きちんと仕事をされてはもう、何も言えまい。
アルバイトの終了後、「水守くん」と手を振る陽毬は嬉しそうに流へと駆け寄ってくる。
「お、終わったかー？」
「うん！ 一緒にかえろ？」
瞳を輝かせる陽毬の胸中には奢らせることもできるしね、という乙女回路（あくどい）が働いている。
無論、其れに気付かぬ流でもない。ちら、と隣に立った陽毬を見遣った流の視線に気づいた様に彼女の笑顔は更に深くなった。
「水守くん、いつもありがとう！」
「…ですよねー……」
ご飯食べたい的な、と問い掛ければ大きく頷く。正に平常運転だ。
屋台に釣られているのは間違いなかったようで。丁度小腹も空いてきた頃だ、「一緒に食おうぜ」と帰った答えにぱぁ、と陽毬の表情が華やいだ。
「あ、言っとくけど割り勘だか……そんな顔、すんなよ……」
じ、と見据える陽毬の不服そうな表情に流はどうする事も出来ないと小さく溜め息をつく。
この表情には何時も折れてしまう。巫女服補正が抜けてもこれだから救いがない。
「……わかったよ、いい物見させて貰ったってのもあるし、ちょっとだけ奢ってやるよ」
「ありがとう！ 私、アップルパイが食べたいなぁ」
同級生の子が屋台出してるんだって、と流を手招き歩き出す彼女の背中に肩を竦めた流は小さく息を付いた。
今年も集られる気がすると内心思いつつ新年のあいさつと共に購入した『商品』は八割程彼女の胃袋の中に消えて行った――
折角のお参りだ。御神籤と言う運だめしをしようかと社務所に向かった所で、見慣れた『巫女』に首を傾いだ。
「あれ？ 本居、巫女服着て何やってんだ？ いや、似合ってるっちゃ似合ってるけどよ」
「あ、水守君。あけましておめでとー！」
楽しいスクールライフが為に小遣い稼ぎだと勤労意欲を燃やす本居 陽毬は流へと手を振る。
元気いっぱいな食い友に「明けましておめでとう」と頭を掻いた彼は、新年早々『アルバイト』とは不思議だと彼女なら飛びつきそうな屋台群と彼女の顔を見比べて首を傾いだ。
「バイトか？」
「そうなの。今年も親戚一同で初詣……って思ったんだけどね、高校生にもなったし。
折角の休みだし！ 頑張ってお小遣い稼ぎしないとね！ 新年から尊い勤労をしてまーす！」
愛らしいかんばせにドヤッと笑みを乗せた巫女はまるで小さな犬の様に褒めて欲しそうな眸で彼を見上げている。
「あー……ちょっとまってな」
「……？」
挨拶もそこそこにいってくると背を向けた流を見送って、腹ペコな陽毬は小さく溜め息を吐く。
（……お腹すいたなぁ……）
屋台から立つ香りは食欲を誘い、空腹に如何したものかと腹を撫でる。まさに色気より食い気な彼女は『美味しい物』の為に貴重な休みを尊い労働に費やしているのだ――それでも、空腹なのは変わらない。
お小遣いでどんな美味しい物を食べようかと悶々と考える陽毬の前へと流が戻ってくる。
「団子の一本位なら奢ってやるよ」
ほら、と自分の物と陽毬の物を手に顔を出した流へと陽毬は瞳を輝かせる。
美味しそう、と飛びつきそうになる感情を抑えて「ありがとう」と陽毬は受け取った。
「頑張ってるからな」
「あ、それでね……あのね、水守君……今日のアルバイトの時間、もうすぐ終わりなんだ」
ふと、上目遣いに見上げてくる陽毬に流の頬にカッと赤みが差す。
子犬の様な愛らしさに、乙女の色香が混ざり込み流は「な、なに」としどろもどろに彼女へと返した。
「だから……その、水守君がよければ……バイトが終わるまで待っててほしい……な……？」
じ、と見上げる瞳は涙に濡れている。まるで少女漫画の様なシチュエーション。
高鳴る胸を押さえられずに流は「いや、別に暇だからいいけどよ……」と頬を掻いた。
内心、戸惑いが隠せずに期待してしまうのはオトコノコ。甘える『少女』を無碍に出来ないのはそういう生物だからだ。
（おいおい……待てよ、なんか意味深な雰囲気じゃね？ ……いや、でも、こいつの事だぞ。
きっと、バイトの後に屋台で何か奢ってくれとかそういうのだろうな。……わかってる、分かってるんだ――それでも何かを期待してしまうのは――そう、そうだ）
巫女服、とカッと目を見開く。
彼女が身に纏っているのは神聖なる巫女服だ。
彼は慄いた。恐ろしいのは『巫女服』という装甲だ。
それだけで、何かを期待してしまう。恐ろしい補正だと彼はたじろぐのだった……。
「んじゃ、バイト終わるまで適当にブラブラしてるとするぜ。
あ、おみくじ引いてってもいいか？」
「あ、ありがとうございます～」
きちんと仕事をされてはもう、何も言えまい。
アルバイトの終了後、「水守くん」と手を振る陽毬は嬉しそうに流へと駆け寄ってくる。
「お、終わったかー？」
「うん！ 一緒にかえろ？」
瞳を輝かせる陽毬の胸中には奢らせることもできるしね、という乙女回路（あくどい）が働いている。
無論、其れに気付かぬ流でもない。ちら、と隣に立った陽毬を見遣った流の視線に気づいた様に彼女の笑顔は更に深くなった。
「水守くん、いつもありがとう！」
「…ですよねー……」
ご飯食べたい的な、と問い掛ければ大きく頷く。正に平常運転だ。
屋台に釣られているのは間違いなかったようで。丁度小腹も空いてきた頃だ、「一緒に食おうぜ」と帰った答えにぱぁ、と陽毬の表情が華やいだ。
「あ、言っとくけど割り勘だか……そんな顔、すんなよ……」
じ、と見据える陽毬の不服そうな表情に流はどうする事も出来ないと小さく溜め息をつく。
この表情には何時も折れてしまう。巫女服補正が抜けてもこれだから救いがない。
「……わかったよ、いい物見させて貰ったってのもあるし、ちょっとだけ奢ってやるよ」
「ありがとう！ 私、アップルパイが食べたいなぁ」
同級生の子が屋台出してるんだって、と流を手招き歩き出す彼女の背中に肩を竦めた流は小さく息を付いた。
今年も集られる気がすると内心思いつつ新年のあいさつと共に購入した『商品』は八割程彼女の胃袋の中に消えて行った――
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2016年04月03日
- 参加申し込みの期限
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- 2016年04月10日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2016年04月10日 11時00分
