おおそうじ！｜リアクション

おおそうじ！

「今年ももう終わり……そろそろお掃除しないとだね」
　カレンダーを見て、白真白は拳をぎゅ、と固めた。
　今年のおおみそかは久しぶりに両親が帰ってくる。嬉しいし、どうせならびっくりさせてあげたい。
「張り切ってやるぞー！　家じゅうぴかぴかにしてやる！」
　
　掃除の基本は高い所から。
　マスクをして。自慢の白い髪が汚れないようバンダナをして。それでも髪は長いのではみ出た部分は束ねる。
　バケツの準備良し、雑巾の準備も良し、掃除機もスタンバイ！
「それじゃあ、始めるよ！」
　天井へと宣戦布告をする真白。
　そんな彼女の身長は127センチ！
　小学三年生くらいと大差ない！　むしろ負けてるかも！
「く……この！」
　はたきを持って精いっぱい背伸びしてみるが、口惜しくもあとわずかなところで天井には届かない。
　真白はいさぎよく椅子を取ることにした。
「こういう時、背が低いのは不便だね。椅子を足場にして……も届かないの！？」
　棚の上の埃を落として雑巾で磨いたり、窓を拭いていくことはできる。しかし、どうしても手が届かない部分があった。
　台替わりにしていた椅子の上に、さらに台になる物を乗せる。高さを稼いでその問題は解決したが、いかんせん手間がかかる。
「胸の代わりに身長が大きくなればいいのに」
　人によっては呪われそうな悩みを呟いて、真白は埃をあらかた落とし終える。
　次は掃除機がけだ。
　落とした埃を吸い込み、棚の中の物なども一度全部出して、隅々まで掃除機をかけていく。
「ふー、やっとリビングが終わったよ」
　次はキッチンだ。
　両親があまり家に帰ってこないせいか、キッチンは割とすっきりしていて掃除するポイントが限られている。リビングよりは大丈夫だろうと楽観的に取りかかった。
「あ、これって」
　棚の整理をしていると、前に買ったカップ麺が出てきた。
　どうも奥まったところに置いたまま、そのままにしてしまっていたらしい。消費期限は大丈夫だった。
「うーん」
　時計を見る。そろそろお昼だった。
　何か作るにもキッチンは掃除中。まだリビングしか終わっていないし、掃除するところはまだまだたくさんある。
「作ってる余裕ないし……今日のご飯はこれにしよっと」

　ご飯を終え、キッチンの掃除も終えると、次はお風呂場へ。
　真白は勇んで洗剤をスポンジでこすりつけ、その他カビ対策なども行っていく。本格的にしたおかげか、シャワーで汚れを落とせば綺麗になっている気がして気持ちがいい。いつしか真白は鼻歌をうたっていた。
　そのまま不用意に歩いてしまったのがまずかった。
「うわっ！？」
　滑って転びそうになる。なんとか浴槽につかまり、転ばずに済んだものの、持ってたシャワーが手から離れて暴れまわる。反射的に捕まえようとした真白が真正面から水をかけられた。
「けほっ、けほっ。ひどい……」
　ようやく水を止めた時には、全身びしょ濡れ。鏡の中の自分は身体のラインが分かるくらい服が張り付いている。体中が冷たかった。
「うわー、そこも濡れてるの？」
　手をあてて確認して、真白はため息をついた。
「……着替えよ」
　いっそ掃除が終わるまで我慢しようと思ったが、これだけ濡れればもう使いものにならなくて、それに正直ちょっと、感触が気持ち悪い。新年を前に風邪を引くのも嫌だったので、真白は着替えるため服を脱ぎ始めた。

「よし、今日はここまで！」
　ハプニングがあったものの、真白の掃除は無事終了した。
　始めた頃に明るかった空は夕焼け色に染まっているが、なんとか間に合った形だ。
「ふふ。お母さんたち、綺麗な家を見たらびっくりしてくれるかな？」
　喜んでくれればいいけれど。
　達成感と期待に微笑みながら、真白は今度は両親を迎える準備を始めた。

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