【お正月】初夢が見られなくなる！？｜リアクション

【お正月】初夢が見られなくなる！？

●獏を助けよう

　ロープで輪っかを作った御剣刀は、暴れる獏の首に引っかけた。
「ぐるぐる巻きにしてやる」
　捕縛できたと思われたが、獏の力は予想以上に強くロープを引きちぎった。
「太っていたら簡単に捕まえられると思ったんだが。できるだけ穏便に済ませたいんだけど……木刀で叩きのめそう」
「御剣さん、獏さんは禁断症状が出ているのと同じ状態です。助けてあげてください」
「手荒な手段はやむを得ないのはわかっています。私からもお願いします」
　森蓮と綾辻綾花の懇願に「わかった」と承諾した刀は、木刀を獏の腹部に叩き込もうと接近する。
　そう思った刀が獏に駆け寄ると同時に、誰かが猛ダッシュでやって来た。

「見つけたぞ！　万有引力の威力を思い知れ！」
　立花なつと追いかけていた卯木衛は、つま先で地面を軽く蹴ってろっこんを発動、飛び上がってキック。
　スカートを穿いているのを忘れてるので、それは気にしていない。
「やっと追いついた～……まもる、早いよ」
「ごめん、なつくん」
　衛のキックを喰らった拍子に体制を崩した獏に、刀がすかさす木刀を叩き込む。
「これで吐き出してくれるといいんだが」
　吐きそうになる獏だったが、必死に堪えているのか、夢は出てこない。
「これでもくらえ！」
　獏に接近した風雲児轟は、腹に向かって拳を乱打。
「その腹に溜め込んだ皆の夢を返してもらうぜ！」
　ある程度攻撃したら、とどめの一撃に震脚からの右ストレート『ストレイト・スマッシャー』を叩き込んだ。
「これでも吐き出さないなんて……何てヤツだ」
「こうなったら奥の手だ。風雲児、後は任せた！」
　そう言うと、刀は轟の足首をいきなり掴んでぶん回した。
「急にジャイアントスイングするな！　何する気だ！」
「飛べ、正義の味方！　夢の中だからできる！」
　獏めがけジャイアントスイングされた轟が投げられた。ぶつかった衝撃で吐き出すかと思われたが、これも失敗だった。
『そんな攻撃、甘いわよ。私に任せなさい』
　宇宙戦艦に乗り込むと、神薙焔はレーザーで攻撃すべく狙いを定める。
「主砲チャージレーザー充填、90……100……120パーセント！　フルチャージ！　目標補足！　発射！！」
　威力あるレーザーは、狙い通り獏の腹部に叩き込まれた。
　これまで蓄積されたダメージのせいか、獏はのたうちまくりながら口から何かを吐き出した。
　吐き出されたのは、これまでに食べた数々の夢。中には、この場にいる者の夢がいくつか。

「これ、わいの夢やないか」
　最初に出てきたのは、カレー番長鬼河内巌の夢。周囲にカレーの良い匂いが漂いそうな雰囲気が。
「これ、俺の夢だ」
　轟の夢、ヒーロー達と団結している場面が出現。
「こ、これは……！」
　八神修は、突然出てきた自分の夢に焦った。
「み、見るな！」
「もう遅いぞ、八神」
　刀が修の肩をポンと叩きながらクスリと笑う。
　遊園地で遊んだり、文明が滅びた世界で逞しく生きたり、海外でオーロラを見たりしているが、どの場面にも七夜あおいがいる。
　鳥の姿のままの御巫時子は、自分の夢がなかったので安心した。
（夢が食べられる心配はもうありませんね……）
　誰にも気づかれないよう、そっと飛び立っていった。
　夢を吐き出したことで楽になった獏だが、綾花があった時とはすっかり別物に。
「これが、本来の獏さんの姿なんですね。元気になって良かったです」
　本当に無事で良かったです、と蓮は胸を撫で下ろした。

『メイワクカケテスマナカッタ、ミンナ、イイユメヲミテ……』

　頭を下げてお礼を言った獏は、異空間の中に消えると同時に、獏を追いかけていた面々の意識は遠のいた。

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