- 0
- 0
- 種族
-
- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
マッチョ売りの少女
「お願いです、マッチョを、このマッチョなマッチを買ってください！」
何を血迷ったのか少女が最後に声をかけたのは、林檎の被り物をした177cmの筋肉質な男性だった。
夜の寝子島駅前に佇むその姿は、完全に事案である。
だが、一見事案に見える彼、リンゴ・スタージンガーは、
林檎への愛を体現しているだけで本当は心優しい青年なのだ。
少女が困っている様子を見て放っておけず、マッチを買い求めに来たのだった。
手渡されたマッチの箱を大事に持ち、消火用の水を用意して周囲に可燃物がないことを確認したうえで、
リンゴはそっとマッチを擦って火をつけた。
被り物のせいでその表情はうかがい知れないが、ワクワクしている、ような気がする。
ぼんやりと灯ったマッチの炎の揺らめきに浮かび上がるのは
今いた寝子島駅前とは全く違う開けた場所だった。
目の前には、なぜかパンチングマシーンがリンゴの挑戦を待つように
賑やかな彩りの画面を映し出している。
「Wow！ 久し振りに挑戦したかったのです。一体何点が出るでしょうか？」
目の前に突如現れたパンチングマシーンにもひるむことなく、
リンゴは袖をまくり上げ、マシーンの前に立った。
「マツモト…イナ、サク…ゼンコージッ！」
信州いいとこ巡りのような掛け声と共に、
リンゴは嬉々としてパンチングマシーンに渾身の一撃を叩き込んだ。
ズガン！！ と激しい音と共に倒れ込むパッド部分。
先ほどまで華やかなイラストが躍っていた画面では２ケタの数字がシャッフルされ始めた。
画面が一瞬暗転して点数が表示されるかと思いきや、
そこに映し出されたのはどこか懐かしい、のどかな果樹園の風景だった。
ひとりの少年が、汗を拭きながら両手で箱を持ち上げ、どこかへと移動させている。
見覚えのあるその光景は、リンゴの中学生時代の記憶だった。
「体に負荷がかかり、筋肉もついてきていますね」
小さい頃は今からは想像もつかないほど線が細く儚げだったリンゴは
近所の子どもたちに『ずくなし』と馬鹿にされて泣いてしまうこともあった。
けれど、そんな幼き日のリンゴの切ない心を癒したのが、もぎたての信州林檎だったのだ。
ひとくち齧ればほどよい固さとしゃくっ、という軽い音。
口の中一杯に広がる林檎の甘酸っぱい蜜と爽やかな芳香は、
何よりも幼き日のリンゴの心を弾ませた。
そして、そんな素晴らしい果実を丹精込めて作っている
地元の林檎農家の皆さんにお願いしてお手伝いをさせていただくようになり、
収穫時期は収穫した林檎の運搬や出荷、それ以外の時期は林檎の木の世話や
受粉の手助け、できたばかりの実に袋を掛けたりなど、様々な作業を手伝った。
そして林檎と共に育くまれた肉体は、
いまやムキムキマッチョと言っても差し支えないほどに磨き上げられている。
目の前に映し出されているのは、そんなムキムキマッチョにたどり着く前の過程のほんの一瞬の輝きだ。
だが、リンゴの目に映る少年は、重たい林檎がぎっしり詰まった箱を運びながらも、
本当に楽しそうに動きまわっていた。
その姿が今のリンゴにはとても微笑ましく、また成長していく姿に喜びさえ覚えるのだった。
少年が林檎の詰まった箱をトラックの荷台に載せ、
肩にかけた手拭いで額の汗を拭いたところでマッチの火が消え、
リンゴは夜の寝子島駅前へと戻ってきた。
「おっと、次の火を熾さなければ」
もう少し、幼き日の甘酸っぱい思い出を味わいたいと
リンゴはマッチをもう一本擦るが、
右手の路地からひっ、という小さな悲鳴が聞こえて視線を路地へと向けた。
どうやら声の主は、マッチのぼんやりとした明かりに照らされる
林檎の被り物をした男性の姿に恐怖を覚えたようだ。
「Oh！ 誤解です、お待ち下さい！ 私は怪しい者ではありません！」
リンゴは慌てて弁解を図るが、彼は目を見開いて身を翻し、来た道を一目散に引き返していく。
「あんちゃん！ あんちゃん、待つだわ！」
慌てすぎてついには信州弁が出てしまったリンゴが
全力ダッシュで逃げる彼を追いかける。
こうして、夜道の鬼ごっこならぬリンゴっこが開始されたのだった。
数日後、シーサイドタウンのスポーツショップで、
プロテインを購入している少女を見た人がいるとかいないとか……
何を血迷ったのか少女が最後に声をかけたのは、林檎の被り物をした177cmの筋肉質な男性だった。
夜の寝子島駅前に佇むその姿は、完全に事案である。
だが、一見事案に見える彼、リンゴ・スタージンガーは、
林檎への愛を体現しているだけで本当は心優しい青年なのだ。
少女が困っている様子を見て放っておけず、マッチを買い求めに来たのだった。
手渡されたマッチの箱を大事に持ち、消火用の水を用意して周囲に可燃物がないことを確認したうえで、
リンゴはそっとマッチを擦って火をつけた。
被り物のせいでその表情はうかがい知れないが、ワクワクしている、ような気がする。
ぼんやりと灯ったマッチの炎の揺らめきに浮かび上がるのは
今いた寝子島駅前とは全く違う開けた場所だった。
目の前には、なぜかパンチングマシーンがリンゴの挑戦を待つように
賑やかな彩りの画面を映し出している。
「Wow！ 久し振りに挑戦したかったのです。一体何点が出るでしょうか？」
目の前に突如現れたパンチングマシーンにもひるむことなく、
リンゴは袖をまくり上げ、マシーンの前に立った。
「マツモト…イナ、サク…ゼンコージッ！」
信州いいとこ巡りのような掛け声と共に、
リンゴは嬉々としてパンチングマシーンに渾身の一撃を叩き込んだ。
ズガン！！ と激しい音と共に倒れ込むパッド部分。
先ほどまで華やかなイラストが躍っていた画面では２ケタの数字がシャッフルされ始めた。
画面が一瞬暗転して点数が表示されるかと思いきや、
そこに映し出されたのはどこか懐かしい、のどかな果樹園の風景だった。
ひとりの少年が、汗を拭きながら両手で箱を持ち上げ、どこかへと移動させている。
見覚えのあるその光景は、リンゴの中学生時代の記憶だった。
「体に負荷がかかり、筋肉もついてきていますね」
小さい頃は今からは想像もつかないほど線が細く儚げだったリンゴは
近所の子どもたちに『ずくなし』と馬鹿にされて泣いてしまうこともあった。
けれど、そんな幼き日のリンゴの切ない心を癒したのが、もぎたての信州林檎だったのだ。
ひとくち齧ればほどよい固さとしゃくっ、という軽い音。
口の中一杯に広がる林檎の甘酸っぱい蜜と爽やかな芳香は、
何よりも幼き日のリンゴの心を弾ませた。
そして、そんな素晴らしい果実を丹精込めて作っている
地元の林檎農家の皆さんにお願いしてお手伝いをさせていただくようになり、
収穫時期は収穫した林檎の運搬や出荷、それ以外の時期は林檎の木の世話や
受粉の手助け、できたばかりの実に袋を掛けたりなど、様々な作業を手伝った。
そして林檎と共に育くまれた肉体は、
いまやムキムキマッチョと言っても差し支えないほどに磨き上げられている。
目の前に映し出されているのは、そんなムキムキマッチョにたどり着く前の過程のほんの一瞬の輝きだ。
だが、リンゴの目に映る少年は、重たい林檎がぎっしり詰まった箱を運びながらも、
本当に楽しそうに動きまわっていた。
その姿が今のリンゴにはとても微笑ましく、また成長していく姿に喜びさえ覚えるのだった。
少年が林檎の詰まった箱をトラックの荷台に載せ、
肩にかけた手拭いで額の汗を拭いたところでマッチの火が消え、
リンゴは夜の寝子島駅前へと戻ってきた。
「おっと、次の火を熾さなければ」
もう少し、幼き日の甘酸っぱい思い出を味わいたいと
リンゴはマッチをもう一本擦るが、
右手の路地からひっ、という小さな悲鳴が聞こえて視線を路地へと向けた。
どうやら声の主は、マッチのぼんやりとした明かりに照らされる
林檎の被り物をした男性の姿に恐怖を覚えたようだ。
「Oh！ 誤解です、お待ち下さい！ 私は怪しい者ではありません！」
リンゴは慌てて弁解を図るが、彼は目を見開いて身を翻し、来た道を一目散に引き返していく。
「あんちゃん！ あんちゃん、待つだわ！」
慌てすぎてついには信州弁が出てしまったリンゴが
全力ダッシュで逃げる彼を追いかける。
こうして、夜道の鬼ごっこならぬリンゴっこが開始されたのだった。
数日後、シーサイドタウンのスポーツショップで、
プロテインを購入している少女を見た人がいるとかいないとか……
あとがき
担当マスター：
白丸 あこ
ファンレターはマスターページから！
マッチョ売りの少女のお財布の危機を救ってくださった皆様、
ありがとうございました！
変なシナリオで誰も入ってくださらなかったらどうしようと
ちょっと心配していたのですが、
全くの杞憂だった上に、予想以上に濃ゆい個性の参加者様に
楽しくリアクション書かせていただきました！
またお会いしましょう〜！
ありがとうございました！
変なシナリオで誰も入ってくださらなかったらどうしようと
ちょっと心配していたのですが、
全くの杞憂だった上に、予想以上に濃ゆい個性の参加者様に
楽しくリアクション書かせていただきました！
またお会いしましょう〜！
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2016年03月18日
- 参加申し込みの期限
-
- 2016年03月25日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2016年03月25日 11時00分
