ここは、夜の寝子島駅前。
1人の少女が、行き交う人々に一生懸命話しかけています。
「マッチョ、マッチョはいりませんか」
「お願いです、マッチョを買ってください」
「このままでは、明日のプロテイン代にも困るんです」
しかし、少女の声に応える人物はいません。
少女が腕に提げたかごには、小さな箱が詰まっているのが見えます。
箱のラベルには、筋骨隆々とした逞しいメンズのイラストと、
「マッチョ」と言う字が力強く踊っていますが、どうやらマッチのようです。
「はあ……困ったわ、このままじゃプロテインどころか、
明日食べる鶏肉も買えない……」
鶏肉は高タンパク低脂肪で、マッチョを目指す者には欠かせない食べ物です。
それはそうと、朝から卵の白身しか食べていない少女は、
ついに空腹から寝子島駅の駅舎に凭れかかって座り込んでしまいました。
「このマッチョなマッチが、プロテインだったらなあ……」
疲労困憊した少女は、マッチョなマッチの小箱を一つかごから取り出すと、
しゅっと音を立ててマッチを擦りました。するとどうでしょう!
ゆらゆらと揺れるオレンジ色の炎の中に、
シャワールーム完備の高級トレーニングジムの様子が浮かび上がりました。
速度調節機能付きのルームランナーをはじめ、クロストレーナーやエアロバイクなど
最新の機器が所狭しと並んでいます。
もちろん、室内は鏡張りで、360度どこからでも自分のスタイルが確認できる仕様です。
しかし、少女が手始めにとルームランナーに駆けよれば、高級トレーニングジムは忽ち消え失せ、
目の前に広がるのは寝子島駅前の街並みばかり。
悔しくなった少女は、もう一度かごから取り出したマッチョなマッチを擦ります。
すると今度は、エレガントな受付の会員制日焼けサロンが姿を現しました。
鍛え上げられたワガママバディをこの日焼けサロンで小麦色に焼くのです。
早速入会するため申込用紙を手に取ろうとしたところで、会員制日サロはたちまち煙と消えました。
少女はますますむきになって、マッチョなマッチを再度手に取りました、が。
ちょうどそこへ通りかかったのが、あなたでした。
「お願いです、マッチョを、このマッチョなマッチを買ってください!」
初めましてこんにちはこんばんは、白丸あこと申します!
ごあいさつ代わりのシナリオ、ぜひ楽しんでいただければと思います。
マッチョなマッチを購入すると、マッチョなキーワードに関連した幻を見ることができます。
例えば、ダンベル、運動、ジム、プロテイン、筋肉、ボディビルなどなど!
幻を何かの決断のきっかけにするもよし、ただ面白がるもよしです!