ウィンター！部活動のお時間です！～運動部編～｜リアクション

ウィンター！部活動のお時間です！～運動部編～

【ボクシング部】

　冬休みのある日。車から降りた寝子島高校ボクシング部は山間部にある仏教系高校の門の前に整列していた。本日からこの高校と練習合宿を行うのだ。目の前には相手校の部員達がずらりと勢揃いしている。野々ののこが小声で串田美弥子に囁いた。
「すごいねー、男の子坊主頭がいーっぱい！」
　彼女達はボクシング部員ではない。体験入部として本日参加したのだ。そんな２人に苦笑しながら部員の笠原ひびきはしーっと人指し指を口元に立てた。北条冬華は彼女達に優しげに笑い、普段から眠そうな日暮ねむるは、車で寝ていたにも拘わらずまだその目はとろんとしている。そして日頃からの服装である熊皮を着て整列していた邪衣士はその姿で相手校の生徒達の目を丸くさせていた。
　部長の桜庭円が１歩進み出て、大きく頭を下げる。
「本日からこちらで勉強させて頂きます。よろしくお願いします！」
「「「「よろしくお願いします！」」」」」
　部員達も後に続き、相手校も同様に頭を下げ、挨拶をする。

　寝子高ボクシング部、冬の練習合宿が始まった。

　挨拶を済ませるとボクシング部一行は一旦高校に隣接する寺に荷物を置き、着替えてから練習場の方に向かった。
　ここの練習場は割合と広く、勿論リングも常設だ。サンドバッグその他必要な練習器具はほぼ揃っており、合同練習にはうってつけと言えた。

「さすが牛瀬センセー、手回しが良いな。こういう学校と練習合宿を組んでくれるなんて」
　軽くストレッチをしながらひびきが言った。今相手校はロードに出ている。
「男子生徒の坊主率高いし、やっぱ仏教系なんだねぇ。うちとはだいぶ違う感じ」
　そう言ってねむるはふわぁとあくびをする。その頭を誰かがわしっと掴んだ。
「日暮君も髪でも剃ってみるか？」
　相手校との打ち合わせから帰ってきた顧問の牛瀬巧だった。意外と似合うかもしれんぞとわしゃわしゃとねむるの髪を掻き乱しながら、近くにいた士に声を掛けた。
「おう、邪衣君は着替えたんか。よかった、あっちの部員達が結構びびってたからな、熊が山から下りてきたって」
　士がきょとんとしながらぱちくりと瞬きをする。その様子に北条冬華が思わず笑ってしまう。

「確かに私達、邪衣さんの熊皮姿に慣れちゃってますもんね」
　そこに巧の後ろから同じく打ち合わせに行っていた円がひょいと顔を出した。
「ちなみに冬華ちゃんは大人気だったよ。可愛いマネージャーさんですね、だってさ」
　ガーン。今度は冬華が固まってしまう。その横でぼそりとひびきが呟いた。
「チェストガード、北条はＬでもきついもんな……」
　きゃわきゃわわいわいとののことストレッチをしていた美弥子が、ひびきの言葉に反応した。冬華の豊満な胸をじっと見て、自分の控えめすぎる胸をじっと見る。そして突然涙目で円に詰め寄った。
「桜庭さん！　ボクシングすれば私もあんな胸になれるのっ？！」
　そのあまりの勢いに円は後ずさりしながらもクッとつらそうに答える。
「いや、残念だけど美弥子ちゃん……ボクを見てから言おうか」
　２人は無言で見つめ合う。そしてガッシリと固い握手を交わした。そんな彼女達の背中を巧が勢いよく叩く。
「おら！　あちらさんがロードから戻るまでに全員アップはしとけ！　練習試合が待っとるぞ！」
「「「「ハイッ！！」」」」
　気合いの入った声が練習場に響いた。