狼は九夜山に吼える？｜リアクション

狼は九夜山に吼える？

転：できる限りの事を

　礼拝堂の調査が進んでいる頃。後木真央は1人、教会周辺を調査していた。彼女は相棒たる三毛猫『がおー』を頭に乗せ、慎重に歩いていく。
「真央ちゃんは殴打武器をＧＥＴに行くのだ。修ちゃん達も頑張ってなのだ。がおー、攻撃してくる敵は迎撃なのだ！」
　と挨拶した彼女はジャージの上着とズボンのポケット一杯に紙を詰め込み、身をかがめた状態で外へ出た。途端に冷気が彼女とがおーを襲う。だが、真央は瓶が落ちているのを見つけると蹴って罠がないか調べ、何もない事をしると拾い上げた。何の変哲もない瓶だが、拾った途端僅かに重く感じていた何かが晴れた気がした。
（？　なんか変わったのだ？）
　不思議に思いつつも、彼女は探索を続ける。そして、瓶を見つければ先ほどのように罠チェック。それを繰り返し教会の真裏に来ると、井戸を見つけた。
「おぉ、井戸なのだ！　うんうん、お水もたっぷりなのだ」
　その井戸は、明らかに生活のために使われているような印象だった。ためしにと水をくんでみると、淀みなどもない綺麗な水が入っていた。
（飲めそうなのだ？）
　ためしに少し口にすると、物凄く美味しい。真央は毒も何もない、と本能で察知し、がおーにも水を与えた。

　瓶は全てで、５つ確保できた。全て拾い上げた彼女は次に薄赤い結界に近寄ってみた。それだけなのに微妙な威圧感を感じ、直ぐに教会へ戻りたくなった。だが、それを堪え、瓶を手元に置き、ポケットから紙を取り出した。しかし、真央は首を傾げる。老朽化が激しいのか、読める部分は僅かなのだ。
（んー？　八つ当たりで本を引き裂くより、ここまで引き裂いておけば大丈夫だろうという判断で壊したのだ？　それとも老朽化で壊れたのだ？　どっちにしろ読みづらいのだ）
　それでも頑張って読んだ内容をざっくりと脳内で纏める真央。だが、その内容に思わず彼女は呻いた。

　――月の都にかけられし呪いは、＊＊によって増幅し、やがて民は絶えるだろう。

（よく解らないけれど、この増幅ってあたりが超絶ヤバいのだ。でも『何』によって増幅なのかがわからないのだ？）
　真央は首をかしげながら、とりあえずその紙を赤猫リュックにしまう。そして、井戸の事を早く伝えようと思うのだった。

　一方、教会の廊下は天動記士郎と骨削瓢によって蝋燭などに火が灯されて明るくなっていた。寝室にも明かりが灯ったのもあるが、そこの調査を引き受けた須藤清一郎自身も光源になるものを持っていたのでそれも使って調査していた。
　明かりをつける前、確かに狼の声がしていた。だが、明かりを灯すとその声はちょっとずつぼんやりしてくる。だが、光が届きづらい所では確かに聞こえた。
（……明るくするためにシーツとかに火をつけようと思ってたんだけどなぁ）
　瓢は寝室で清一郎のスマホを持ちながら渋っていた。彼は行動に起こそうとした際、清一郎に「悪いけどスマホ持っててくれへん？」と手伝いをお願いされたのである。妙に目力があって断れず現在に至る。
「使えそうなもんちゅうたら、この液体の入った瓶とか、傷薬っぽいのとか？　あと……これ？」
　清一郎があちこち調査していると古い十字架を見つけた。控えめな装飾が印象的だが、真ん中に月長石がはめ込まれていた。
「なかなか値打ちのありそうな物だよぃ」
「よぉ解らんけど、確かに装飾とか綺麗やな」
　瓢と清一郎はとりあえず持って行こう、と頷き合う。清一郎は他に持っていける物が無さそうだ、と睨むと「ゲートオープン」と唱え自分のろっこん『自分だけの倉庫』を発動させた。
　このろっこんは、清一郎自身が両手で持てる物を異空間に保管し、いつでも取り出せるというとても便利な物だ。正し、生き物は入れられない。
「ほな、シーツも持っていこか。多分役に立つ筈や」
（それを燃やすつもりだったんだってねぇ……）
　手早く畳んで異空間にしまう清一郎とそれを手伝いつつ内心で渋い顔をする瓢。だが、この時。清一郎は殺気を背中に感じた。
「伏せぇっ」「はぁ？！」
　清一郎に背中を押され、瓢は床に倒れこむ。文句の１つでも言ってやろうかと思った瓢だが、次の瞬間、黒い影が彼の頬を掠めたように思えた。幸い怪我はなかったが、清一郎に引かれ、背中に庇われる。
（あの烏やっ）
　彼は、これをチャンスと見ていた。声は枯れているが実はお姉さまかもしれないし、娘がいるかもしれない。もし女性ならナンパを、とも思ったがそれどころではないと魂で感じている。

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狼は九夜山に吼える？

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