仲良くなりたい？｜リアクション

仲良くなりたい？

○浜マンボウ

　マンボウ君こと浜マンボウは、最近寝子島観光大使（見習い）になったばかりのマンボウです。
　ピュアでがんばり屋ですが、虚弱体質な上メンタルが弱く、すぐ「きゅう」と気絶してしまいます。
「仕事頑張ってるねー」
　真境名アリサは、師走の街で久しぶりに再会したマンボウ君に声をかけました。
　アリサはマンボウ君が寝子島へ上陸した際に最初に知り合い、寝子島案内をしてあげたのです。
「わわっ、こんにちは～アリサお姉さん、久しぶり」
　道中で出会った猫からマンボウくんを守ってあげたアリサを、マンボウ君は忘れていませんでした。

　十文字若菜は、マンボウ君が寝子島デビューした際にみかけて一目惚れしてファンになりました。
「マンボウ君、頑張ってるなぁ」
　今日もサンマさんの後を追ってとてとて歩くマンボウ君をほのぼのと見守っていたのですが。
「あっ！」
　マンボウ君が飛び出してきた猫をよけようとして、よろよろと転びそうになりました。
（危ない！）
　陸上部の足を生かし、ダッシュで助けようとした若菜ですが。
　どんっ！
　なんということか、勢いあまって逆にマンボウ君を思いっきり突き飛ばしてしまう羽目になったのでした。
「……きゅう」
「痛たたたた……」
　気絶したマンボウ君を助け起こそうにも、若菜も転んでしまい痛みにうめくありさまです。　
「……あちゃー、また気絶しちゃったよ……マンボウ君、しっかり！」
　その間にアリサが駆け寄り、マンボウ君を介抱します。
「大丈夫？　ケガはない？」
「びっくりしたあ……う、うんー、大丈夫みたい。ありがとう～」
「ったく、トロトロしないで急ぐぞ。姉ちゃん、ケガはないかい。気をつけてくれよ」
　サンマさんが来て若菜に声をかけ、マンボウ君を立たせます。
「は、はい……あの」
　若菜は痛みをこらえて返事をしましたが、謝ろうとしたときにはサンマさんもマンボウくんも背を向けていました。
「しょうがないな……今日もエスコートしよっか」
　アリサが言い、マンボウくんの脇に立って歩き出します。
　若菜がやっと立ち上がった時には、マンボウ君はサンマさんとアリサに連れられて先へ行ってしまっていました。
「ど、どうしよう。これじゃ私がマンボウ君を転ばせたことに……誤解されてるよね」
　途方にくれる若菜でした。

　何日か悩みつつもマンボウ君には会えない日々が続きました。
　そんなある日、若菜はマンボウ君が観光大使として頑張っているのを発見しました。
（やっと会えた……こ、声かけなきゃ）
　と思いつつ。
（でも嫌われてたらどうしよう。私の顔見ただけで気絶しちゃうかも）
　そんなことを思ってしまい勇気が出ません。
（でも言わなきゃ！）
　意を決して、若菜はマンボウ君に声をかけました。
「マ、マンボウ君、あの……」
「こんにちは～」
　マンボウ君は、いつも通りのつぶらな目とのんびりした声で挨拶してくれました。
「この間は、私が突っ込んじっゃて転ばせてごめんなさい」
　若菜は必死で頭を下げました。
「あ～、だいじょうぶだよおー、ボクのほうこそごめんねえ。十文字さん、ケガしなかった？」
「マンボウ君……」
　若菜の目から、涙が溢れました。
「わわっ、どうしたの？　やっぱり痛かったのかなあ～」
「違うの。怒ってなくて、良かった」
　慌てるマンボウ君に、若菜は涙を拭いて笑ってみせるのでした。

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