仲良くなりたい？｜リアクション

仲良くなりたい？

○北風貴子

　寝子島高校風紀委員長、北風貴子は走っていました。
　そして貴子の後方数メートルには、それを追う伊賀解理の姿がありました。
　９月にも解理は同じ遊歩道で貴子のランニングにつきあわせてもらいましたが、今は１２月。
　二人はそれなりに厚着をしていました。
　しかし相変わらず体力差のせいで置いていかれる構図は変わらないのでした。
「いいんちょ……いや、北風先輩……」
　ゼエゼエと苦しい息をつきながら解理は呼びかけます。
「なあに」
　こちらは相変わらず平然としている貴子です。
「あの小屋のところまで走ったら休憩、でしたよね……」
「そうね」

　どうにか目的地に着き、二人は汗をぬぐいます。
「ぷはー！　そういえばテストも終わったし、あとは終業式だけですね。先輩はクリスマスとか……年末年始はどうするんですか」
　スポーツドリンクをあおり生き返った解理が尋ねます。
「クリスマス……寝子島の風紀が最も乱れる１日と言っても過言ではないわね。公衆の面前でみだらな男女がいれば笛を吹いてまわるわ！」
　息を整えながらストレッチをしていた貴子の眼鏡がキラリと光りました。
「そ、そうですよね！　さすが先輩」
「大晦日には星ヶ丘でスカイランタンを飛ばすお祭りがあるそうよ」　
「そうなんですか、面白そうですね」
　年末年始が過ぎれば三学期はあっという間。
（そしたら進級、卒業……来年で先輩は卒業なんだなぁ）
　ふと解理は気づきます。
（……寂しくなるなぁ。でもいつかはそういう別れが来るんだから仕方ないか）
「どうかした？」
「いえ……」　
（その時が来たら笑って門出を祝ってあげたいなぁ）
　貴子の顔を見ながら、そんなことを思う解理でした。