【球技大会】普通のサッカー（黒猫組サイド） -前半-｜リアクション

【球技大会】普通のサッカー（黒猫組サイド） -前半-

【そのころ、応援席では　白猫組】

　さくっと戻ってきた月詠は持ち込んだスケッチブックにがりがりと絵を描き始めた。
　いわゆる素描と呼ばれるそれは、瞬く間に完成していく。
　これを試合中も続けるつもりだ。
　傍らにはスポーツドリンクの入った紙パックがある。
　ちなみに、お手製だ。
「ベストを尽くせばそれでよい」
　そうつぶやいて、再び視線を下に落とした。
「ねぇねぇ！　何描いてるの？」
　そう話しかけたのは絵梨菜だ。
　なんとチアガールの格好をしている。
　彼女も同じく休憩中のようだが、そのコスチュームで応援する気満々だ。
「あとでスケッチさせてくれるなら」
「えっ、いいよ！」
　そう言って許可が出されたのを見る。
「わぁ、すごいね！」
　お世辞でも何でも無いその賞賛に、月詠はこくりと頷いた。
　一方、朝陽と耀が解理と海と作戦会議をしている。
「……つまり、このまま行けば体力で勝るこちらが勝つということだ」
「まぁ、そうなるよな」
　解理のよどみない解説に頷く耀。
　海も朝陽も真剣に聞いている。
「これから相手は守ってくるだろうから……前半２のメンバーがそれをどう崩すかだね」
『なんだか、おもしろいね』
「え？　面白い？」
　朝陽が思わず聞き返す。
　こくりと頷いた海はさらに書く。
『こうやってみんなでかいぎしたり、さわいだり……たのしくて、おもしろい』
　そう言って笑う海に、あぁ、サッカーを楽しんでもらえているんだなと思った朝陽と耀であった。

【そのころ応援席では　黒猫組】

「やっぱり……厳しく、なる……と、思う……ぞ」
「最初は上手くいったが、次は上手くいくとも限らない、か」
　拓郎の言葉を受けて修は頷いた。
「ぬーん、なんだか難しい話だねー」
「だから監督や司令塔があるってのはありがたいからな」
　伸幸の言葉に、シグレ・ナイトウォーカーが重ねるように言う。
「……あとはあの応援をどうするかだが」
　そう言って男子一同を釘付けにしている千鶴を見る。
　本人は白猫組の信彦に吹き込まれたと言っていたがその猫耳チアガールコスはなんというか……。
　非常に大胆であり、おそらく激しく動くといろいろ揺れたり見えたりするであろうそれがなんともやっかいだが……。
「むしろ、それは逆用できる気がするな……見ろ」
　そう言って仄がそれぞれのチームを指さす。
「うちの攻め手は女子が多いし、というかほとんど女子だ対して、相手チームのFWを見てみたらいい」
　そう言って、見た一同はあちゃー……と思った。
　望月がでれる信彦を引き戻したりしっかりしろとどやしつけたりしている。
　結局、待機していた相原まゆ先生によって両チームのチアの応援は停止になったのであった。
「なんつーか、今年はやたら賑やかだな」
「それはいいことじゃん！　先輩」
　そんな風景を見ながら言う黒子の言葉にラッセルが応える。
「ま、今後もどんどん盛り上がっていってほしいもんだな」
　何せ、来年からは自分たちはいないのだ。
　隠しもしない言葉の裏をはっきりとラッセルは読み取った。
「だから、毎年盛り上がって、寝子高今年もやってんなーって言わせてやるよ先輩！」
「そうだな、楽しみにしておくぜ。後輩」
　そう言って、黒子はどんどんやれと言わんばかりに笑った。
「おい、後半組はそろそろ体をほぐすんだ。休憩中にウォームアップできるようにな」
　監督ポジションである仄の言葉に、何人かはゆっくりと準備を始めた。
　

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