【大晦日】シーサイドタウンでカウントダウン☆｜リアクション

【大晦日】シーサイドタウンでカウントダウン☆

●二人で初日の出を
　志波拓郎は、桜花寮の自室で高梨彩葉とメールのやり取りをしていたが、くきゅる、と自らの腹の虫が鳴いてしまって気付いた。――小腹空いた。
『食堂、何か食べない？』
　OKの返事を貰って、食堂で合流。
　みんなが紅白歌合戦を見ているところに二人も座り、お菓子を食べながら鑑賞することに。
（……あ、この歌今年のヒットか……そういえば結構聞くや）
　耳慣れた歌を聞きながら、お菓子に手を伸ばす。すると、女性アーティストの歌が終わった辺りで彩葉が呟いた。
「この女の人の歌う明るいラブソング好きなんだよね」
「いい曲だよな」
　うんうんと頷くと、次は男性グループの曲。
「自分はこの曲好きだな、テンションがあがるから」
　これもいいね、と彩葉はTVを見つめながら、ふと尋ねてみた。
「そういえば、拓郎はどうして寮に残ったの？」
「自分は、部活出てたら休み短いし……あとお金かかるからかな？」
　あぁ、と彩葉は頷く。
「冬休みは短いし、部活をやってる人たちには難しいよね。後お金の節約っていうのも凄くわかる」
「でもそのおかげで彩葉さんと一緒に過ごせるしいいかな、うん！」
　逆に彩葉さんは？　と問われて即答する。
「私はお金の節約。クリスマスで若干お金を使いすぎたからね」
　そうそう、年末って何かとお金が飛んでいくんだよな、そう同調しようとしたときだった。
「それと……」
　続けられた言葉に、拓郎は彩葉を振り返る。
「拓郎と一緒に年を越したいなと思ったんだよね」
「……！」

　彩葉の言葉に嬉しさが込み上げつつも、なんだか恥ずかしくて頬が熱くなってくる。
「ん、じぶん、も……」
　もごもごと聞き取れない程度のボリュームで口ごもりながら、拓郎はお菓子をもう一つ口に運んだ。へへ、と照れ隠しに笑う彩葉と、上手く目を合わせられない。
　年が明けると、寮の皆で新年のあいさつを交し合い、それから、各々これからの予定を話しはじめたようだった。そこで、拓郎はふと思い出す。
（そういえば……日の出スポット、いくつかあったな……）
　彩葉がまるで拓郎の思考を読んだかのように提案する。
「初日の出、見に行かない？」
　自分もそう思っていたところ、と頷くと、情報を携帯で検索しながら彩葉は言葉を続ける。
「じゃあ、エノコロ岬に行こうよ」
　夜更かしするのは大変だけれど、と二人でコーヒーを飲んで眠気を覚ます。
　日の出の２～３時間前。そろそろ出かけようとなって、互いに自室に一度戻り身支度を済ませてきた。
　拓郎は彩葉からもらったリストバンドを身に着け、しっかりと着込んで玄関で彩葉を待つ。
「あ、それ付けてくれたんだ」
　背後から彩葉に声をかけられ振り返ると、彼女はクリスマスにプレゼントした猫耳のニット帽をかぶり、新しいセーターを纏っていた。
（やっぱり似合う、かわいい……！）
　なんとなく、声には出せなかったけれど頬がほんのり染まっていることから多分伝わってはいるだろう。
「そういえばこのセーターも新調したんだよね、似合うかな？」

　やはり声には出せないけれど、拓郎はしっかりと頷いた。
（すごく、似合ってる）
　行く途中、コンビニに寄って温かい飲み物とピザまんを買う。拓郎は、コーヒーと肉まん。道中、彩葉が少しでも寒くないように拓郎は風が当たらない位置をさりげなく探して盾になるようにして歩く。
「うううう！　さ、寒い～！」
　灯台に着くと、彩葉は震えながらコンビニの袋から暖かい飲み物を取り出した。
　この寒さですっかりぬるくなっている缶が、ほんのりと指先をあたためていく。
（この岬……彩葉さんと喧嘩したり、告白したり、鐘を一緒に鳴らしたりと思い出深い場所だな……）
　拓郎もコーヒーをすすりながら、東の空を見つめる。すると、またも彩葉は考えを読んだかのように想いを口にした。
「この場所はいろいろと思い出深いよね、私達が喧嘩して自分たちの思いを告白した場所でもあるから……こうやって大切な人たちと一緒に思い出を作っていきたいね」
（……あぁ、自分と、同じ事考えてたんだ……）
「そうだな」
　嬉しくて、照れくさくて、小さく頷く。
　空が、白んでそれから金色の光が満ちていく。それと同時に彩葉は拓郎に伝えた。
「拓郎、あけましておめでとう。今年もこれからも、よろしくお願いするよ」
　眠い目をこすりながら、拓郎は大きく頷く。
「あけましておめでとう、これからもよろしく……な」
　今年、だけじゃなくて、これからもずっと。
　そんな思いを、込めて。

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