勇者オーディションIN寝子島！｜リアクション

勇者オーディションIN寝子島！

●謎解きは馬車に揺られて
　こうして勇者たちは、魔王の打倒に必要なオーブを探すため、馬車へと乗り込んだ。
　ここより先は、手にした地図とカードのヒントを頼りに、各人各ペアがオーブを探すことになる。
「さて、私がもらったのはＣですねー」
　梢は席に座ると、改めてカードを確認した。

Ｃカード・ヒント

Ｃ－1あの場所で復活呪文を唱えてもらおう
Ｃ－2てんぼうだい
Ｃ－3忍者の頭領に聞け

「寝子島の……と考えれば、『てんぼうだい』は九夜山の展望台、忍者といえば旧市街のあの場所ですかねー」
　もっとも謎かけらしいものは一つ目だが、これはゲーム好きの梢にとってはさして難しくもない。どの順番で回るか考えて、御者に行先を告げる。
「最初は星が丘にお願いしまーす」

「Ｂのカードをくーださい！」
　瑠樹は受け取った地図を広げ、ヒントとにらめっこ。

Ｂカード・ヒント

Ｂ－1終点の長のかお
Ｂ－2暖かな湯で回復だあ
Ｂ－3魔術師がいるのは、最も本がある場所でい

「三つめのたくさん本がある場所って、図書館だよねぇ」
　でも「終点の長のかお」の「かお」って、なんでひらがななんだろ？　瑠樹は首をかしげた。

「馬車移動らしいけど、どんな馬車だろうな？」
「本当に馬が牽いてる馬車なのかなー？　乗ったことないから愉しみー！」
　控室から外へ向かうフィーナと雅人が、そんな言葉を交わす。やがて見えてきた出口に、茶色い大きな動物の一部が見えて、二人は足早に外に出る。
「わぁ」
「おお！」
　並んだ二頭の馬に、ファンタジックな外観を見せる客車がそこにあった。大人しそうな馬は思い描いていたものよりずっと大きく、足が太い。フィーナが御者に確認をとって、馬に触れた。口笛を吹く。
「いいな。なんかワクワクしてきたぜ」
「はい、フィーナちゃん、お手をどうぞ」
　そんな彼女をエスコートすべく、雅人が先に客車へと足をかけ、手を差し伸べた。
「あ、わりぃ。はしゃぎすぎたな」
　そこまで言ってから、フィーナは咳払いをした。きりっとした雅人の声……なのだが、柔和な顔のせいか背伸びしているようにも見えなくもない。
　だがこういうのは雰囲気が大事だ。
「くるしゅうない、か？」
　フィーナも姫騎士を意識して応じ、雅人の手を取る。
　そんな彼女は、恥ずかしがってたさっきのパフォーマンスより、楽しそうに見えた。

「求む賢者！　勇者だけじゃきついよ～」
「私でもいい？」
　タルトの声に応じ、翠響が彼女のいる馬車に乗り込んだ。
「剣士だけど、三人寄れば文殊の知恵っていうし」
「大歓迎だよ！　よろしくね！」
　タルト、翠響、そしてまもるの三人は互いのカードを見せ合う。
「オレがＡで、二人はＢだね」

Ａカード・ヒント

Ａ－1沢山の馬の中に伝説のうま
Ａ－2千年老のすぐ下に
Ａ－3動物を統べる長の背中に

「Ｂ－2は寝子温泉か『ねずの湯』でちょっと迷ったけど、番号順としては寝子温泉かしら？」
「うん、そうなるよね。どのカードも一つ目が星が丘、二つ目が九夜山、三つめが旧市街のエリアで統一されてるのかも」
「となると、千年老は千年杉で間違いないな。けっこうまわらなきゃだな？」
　そう言ったまもるに、翠響とタルトは顔を見合わせた。
「むしろ……」
「ムッシュくんの場合、Ａ－3の方が難関になるかも？」
「……」
　まもるが押し黙る。
　三人の脳裏には、堂々とした百獣の王の威容が浮かび上がっていた。