勇者オーディションIN寝子島！｜リアクション

勇者オーディションIN寝子島！

「わぁ、音と光、すごいねぇ！」
　目前の光景に曖浜瑠樹がそんな歓声を上げる。パフォーマンスの時間が迫り、参加者たちは舞台まで密やかに移動していた。寝子電スタジアムは灯りが消され、雰囲気を醸し出す照明が点けられている。いまは小さなイベントが行われているらしく、バックヤードからは光の乱舞と響く音が感じられた。
　瑠樹の姿は、少年勇者だった。抽選で当たったためか、ぴったりのものが一式用意されていたのだ。背中にはおもちゃの剣、腕にはクッションの盾。盾にはゆるっとした猫がプリントされていた。
　今回は彼がトップバッターとして登場する。他の出場者とも合わせてレクチャーを受けたのだが、瑠樹への要望は「勇者っぽく自由に振る舞って」とだけだったので、実は本番まで何が起こるのか、よく分かってなかったりする。
「……まぁ、なるようになるよねぇ」
　そんな達観じみた、彼なりにのんびりながらも緊張を含んだ言葉を口にした時、暗めの視界で手が上下に振られた。手の主を見上げれば、響タルトが笑いかけていた。
「あっ、猫ちゃんだ！」
「やっほーリュウキくん、元気かな？」
　魔女っ子勇者に扮したタルトは、装着した猫耳と尻尾を揺らした。瑠樹の衣装を見る。
「リュウキくんかっこいいね～。その盾もいいなー」
「ホント！？　ありがとっ。このたて、終わったらおじさんたちがくれるって言ってくれたんだぁ」
「そうなの？　いいなー。僕も何かもらえないかなぁ」
　タルトがそう言って盾の猫とにらめっこしていると、「にゃんこたーん？」と声が聞こえてきた。人垣の中から、カウボーイ姿の鎌八まもるが現れる。
「あ、ムッシュくんだ。似合ってるねっ」
　タルトがまもるに言うと、まもるは手にした投げ縄を示して笑う。
「にゃんこたんはオレが捕まえてやるぜ」
「ふっふっふ。ボクは誰にも捕まらないよーだ☆」
　和気あいあいながらもどこか真剣勝負をにおわせる二人に、瑠樹は首を傾げた。
「お兄さんは、猫ちゃんと仲良しの人？」
「ムッシュくんは、ポニテ好きのへんた……友達だよっ」
　一瞬、失言をしかけたタルトだったが、まもるは何事もなくうなずいた。
「こんにちは。今日もいいポニテ日和だね。トップ、頑張って。応援してるよ」
　瑠樹は「ぽにてびより（音でよく聞こえなかった）」なるものがよく分からなかったが、好意的なまもるの雰囲気に「うん、頑張るねぇ」と返す。

　そしていよいよ、舞台に出る時間がやって来た。
　だが、ここで事件が起こった。

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