シャンシャンシャンのその前に｜リアクション

シャンシャンシャンのその前に

　じゃあ……と、手が空いたのを見計らって、ミルカと朱蘭に声を掛ける武道。
　荒太郎が、二人と知り合いなら心強い。
「噂のお店と聞いて来たんです！」
　武道の言葉に、笑顔で答えるミルカと朱蘭。
「下宿先のお店の……居住スペースの方に飾るので、何かいいのナイカナーって思っているんですけど……」
　武道がクリスマスと聞いて、真っ先に思いついたのが、下宿先の夫婦へのプレゼント！
「お世話になりまくってますしね、下宿させてもらっている若夫婦さんたちには！」
　力強い口調から、武道がいかに下宿先に感謝しているか伝わってくる。
「でも、いざ見てみると、どれがいいか……」
「武道様、予算などをお聞きしてもよろしいですか」
　しばし考える。「お手頃なので……高すぎて、気を使わせない程度に……ね」
　バイトで予算はちゃんとあるが、プレゼントを受け取った側が気おくれするのは避けたい。
「落ち着いて、ヨサゲに見えるような、クリスマスの飾るグッズ――で、おススメなのを、教えて欲しいかな」
「店内を、ご案内します！」
　颯爽と歩き出す朱蘭とミルカ。
　手近なところを見繕ってもよいのだが、なるべく武道の気に入るものがいい。
　熱意に当てられた感じだ。気持ちの入ったプレゼントを渡そうとする相手には、こちらも心行くまで、しっかり選んでもらった方がいい。
　荒太郎といっしょに、店内を歩きだす。

　ツリー各種、オーナメント各種といった定番どころから、それぞれの文化に沿った地方色豊かな物品、さらにクリスマスにこだわらない、北欧を連想させるグッズまで、多種多様に置かれている。
　興味津々といった様子で店内を見回す荒太郎。
「あまり見ないものも多いけど、日本じゃなくてフィンランドなのかな？ ――へえ、外国ではこういうものもクリスマスに飾るんだね？」
「鯉の料理を食べたり、特別なスポーツをしたり、陶器を割ったりするお祭りをするところもあるんですよ」
　一つ一つ手に取る荒太郎。
　変わった路線で、猫鳴館のみんなを興奮のるつぼに叩き込むのも楽しい。
「わー」荒太郎が、店内の一角に目を止める。「小さいツリーとか、スノードームもいいねえ」
　武道も頷く。気を使わせず、喜んでもらえるクリスマスプレゼントなら、スノードームはぴったりだろう。
　やはり人気なのだろう。ツリーコーナーは人ごみができている。ウキウキしながら、一同は歩き出す。