シャンシャンシャンのその前に｜リアクション

シャンシャンシャンのその前に

「いいから書いちまえよ」
　ぬっと首を突き出したテオに、びっくりする和穂。
「こ、こんにちわー……」
　とりあえず挨拶する。

（……そうか、あなたが……）
　噂では聞いていたが、あまり『らっかみ』とか『もれいび』とか、意識したことはなかった。
（そうしたら、神様がいるんだから）
　はっと気づく和穂。
（……っていうか、見ていてくれるんだから）
　便せんの白さが、清冽に目を射る。
（このお願いも、もしかしたらもしかするのかも？）

「……ねえねえ、聞いちゃいますけど」
「何だよ」
「このお願いって――本当に叶うのかしら」

　さりげなさを装う和穂のセリフに、テオは「さあな…・・・」とタメを作った。
「叶うと思えば、叶う。叶わないと思えば、叶わないだろう。
　願いが叶うことが、却って苦しみを深めたりする。人生と同じさ」
「……中２病？」
「違うっ」
「そういう思わせぶりな言い方が、困る……」
　頭を抱える和穂。
「うーん、ますます悩む……！
　どうしよっかな、うーん……」

　頭を抱える和穂を見て、夏朝も自分の願いを思い出す。
　さっき受け取った、サンタポストの便せん。
　そこに書いた願いは、彼女を巻き込んだ、ある悲しい事件にまつわるものだった。
「サンタ★ポストか……」
　思いのままに投函した願い。
　今となっては記憶も定かでない。
　ひどくあいまいな、ふわふわした願いを書いてしまった気がする。
　到底解決のしようのない、ばかげた、笑われるような、子供じみた願い。

　――無難な願いを入れなおすべきかな、どうかな……。