シャンシャンシャンのその前に｜リアクション

シャンシャンシャンのその前に

　ふと気が付くと、テオが見えないように配慮しながら、じっと手紙に見入っていた。
「サンタポスト……」誰かが呟く。

「いいのかな？　手紙読んでるけど」綾花が尋ねる。
「まあな……色々とな」
　曖昧に答えるテオ。神様関係のつながりでも、何かあるのかもしれない。
「……まさか、私の手紙は読んでないよね？」
　わずかに顔を赤らめて、テオに尋ねる綾花。

　ごくささやかなお願いだ。
　彼女の思い人の、写真が一枚欲しい……。
　大それた願いなどいらない、それが精一杯だった。

「読んでないよね？」
「んー？」ふふん、と笑って見せる。「いいじゃねえか。一生懸命な願いってのは、悪くないぜ」
　はぐらかされたような気分の綾花、気分を変える。
「テオのお願いごとは、なにかな？」
「俺のか？」
「聞きたい」
「……僕も、聞きたいな」
「願いか」
　ふっと笑うテオ。
「俺くらいになると、願いなんてものはないぜ。
　人間の営み、悲しみ、喜び、みんな見てきた……。
　望んでもかなわない夢……。願いの季節は過ぎた……。
　さめる熱、さめない夢――それが、俺の願いだぜ」
「……中２病？」
「食べ物だったらありますよ」
「そういうのじゃない」テオは首を振った。「今日は、そんな気分なんだ」
遠い目をするテオに、綾花がにゃんこ用煮干しとチーズ入りの蒲鉾を取り出す。
「食べますか？　美味しいですよ」
　常に携帯している猫用食事。
　テオはじっと見つめるていたが、
「いただくぜ」

「なになに？　サンタポスト……？」
　ひょいっと覗き込んできたのは、嘉島和穂。