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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
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【クリスマス】星ヶ丘のホーリー☆ナイト
雪のせいだろうか。それとも寒さか。
なぜだか綾辻綾花はイルミネーション・スペースに出たとたん、早川珪への想いがこれまでに増していっそう募るのを覚えていた。
抱きしめられたい。
彼の体温を体で感じたい。
そんな大胆なことまで考えてしまう。
――どうして……でも……？
今ならできる、触れあっても許される――そんな気がした。
しかし実行に移したのは、珪のほうだった。
「寒いね」
と何気ない口調で、手を伸ばして綾花の手を握ったのだ。
――！
嬉しくて、でも、思いがけない気もして、それで、綾花は固まってしまう。まるで体が動くことを拒否したかのように。
握り返すことすら忘れ、綾花はこう言うのが精一杯だった。
「あの……ベンチに、座りませんか……？」
生まれてこの方、綾花がここまで緊張したことはなかった。
ベンチに腰掛けると、綾花は持参した手提げ袋からプレゼントを取り出した。このとき手が離れてしまうのが惜しかったものの、そこは懸命にこらえる。
「プレゼント、です。会えたら渡したいと持ち歩いてました……」
「僕に？」
「はい……っ」
赤い紐のラッピングを解くと、万年筆のインクボトルセットが入っていた。この時期だけの限定品だ。
「珪先生は、万年筆を使われてるのでインクなら使ってもらえるかなって……。先生が書く姿ってよく見てたから印象が強いです」
固辞するのではないかと綾花は不安に思ったが、珪はむしろ、顔をほころばせて贈り物を受け取った。
「ありがとう」
そうして告げたのである。いつかお返しをしなくちゃね、と。
立ち上がった珪は、堂々と手をさしのべていた。
「さあ、もう少し、雪景色を見ないか？」
珪はもうマスクをしていない。綾花も、していない。
彼にはしかし、まだ心のマスクがあるように綾花は感じる。それを脱いで、本当に素顔を見せてくれるのはいつなのだろう……？
でも今は気にするまい。この、貴重な時間を大切にしよう。
宮祀智瑜は桐島義弘とこの場所に来ている。
聖夜の雪景色が一望できた。あまりに見事すぎて、光に包まれた一幅の絵のようだ。
雪の勢いは止まねど、むしろそのおかげで、これが絵ではなく現実だと理解できる。
桐島先生とデート、夜景を眺めながら、教師と生徒としてではなく、単なる男女として――本当に、夢かもしれない。
「ほら、あそこ、観覧車が見えます」
智瑜は夜景を指さし前のめりになる。だが身を乗り出しすぎたようだ。さっと義弘が手を伸ばし、彼女を支えた。
「危ないぞ」
「すいません……」
ここではっとなり、智瑜は改めて彼を見た。義弘の口調が、敬語から普段の教師調に戻っている。
「もしかして……」
「しまった」
やれやれ、とため息して義弘はマスクを外し眼鏡をかけ直す。
「教師としては生徒がこういう場所にいることを注意するべきかと思ったが……禁止されているわけでもなし、無粋とも考えたのでな」
木で鼻をくくったようないつもの言葉使いだが、どことなく照れているような様子もある。
智瑜も照れつつマスクを外した。
「先生……いつから私だって、気がついてました？」
「恥ずかしながら、イルミネーション・スペースに出てようやく……だな」
だったら私、交際相手にふさわしいと思われました？――そんな問いが思わず口から出かかって、智瑜はそんな自分に驚く。どうしたのだろう？ 普段よりずっと、大胆になっているような気がする。
だがそんな問いかけは先生に迷惑だと考え直し、代わりに彼女はバッグから手帳を取り出した。そこに挟んだ白紙を取り、
「これ、学校で渡す予定だったうちのお祖母ちゃんの煮物やお味噌汁などのレシピです。どうぞ」
「ああ……すまないな」
「あのとき持って行った煮物を先生が喜んでくれたって言ったら、お祖母ちゃん凄く嬉しそうでした」
「そうか。よろしく伝えておいてほしい」
義弘は紙片を丁寧に畳んで胸ポケットにしまった。
もう、気がつくといつものやりとりである。単なる男女ではなく、教師と生徒の。
けれども智瑜はこう言うのを忘れなかった。もう二人は、ただの教師と生徒ではないのだ。
「クリスマスプレゼントに手袋編んでたけど、家に忘れてきちゃいました……先生に会えるって思わなくて」
「いや、それは……」
「あっ、手袋は学校に持って行くので受け取って下さいね！」
と言い残すと、智瑜は手を振って義弘の前から去るのだった。
男女の仲ではない。まだ、いや、もしかしたらそうなる日は来ないかもしれない。
けれども、単なる教師と生徒の関係ではなく、教師と、他の生徒よりちょっぴり親しい生徒の関係であったとしたら、嬉しい。
なぜだか綾辻綾花はイルミネーション・スペースに出たとたん、早川珪への想いがこれまでに増していっそう募るのを覚えていた。
抱きしめられたい。
彼の体温を体で感じたい。
そんな大胆なことまで考えてしまう。
――どうして……でも……？
今ならできる、触れあっても許される――そんな気がした。
しかし実行に移したのは、珪のほうだった。
「寒いね」
と何気ない口調で、手を伸ばして綾花の手を握ったのだ。
――！
嬉しくて、でも、思いがけない気もして、それで、綾花は固まってしまう。まるで体が動くことを拒否したかのように。
握り返すことすら忘れ、綾花はこう言うのが精一杯だった。
「あの……ベンチに、座りませんか……？」
生まれてこの方、綾花がここまで緊張したことはなかった。
ベンチに腰掛けると、綾花は持参した手提げ袋からプレゼントを取り出した。このとき手が離れてしまうのが惜しかったものの、そこは懸命にこらえる。
「プレゼント、です。会えたら渡したいと持ち歩いてました……」
「僕に？」
「はい……っ」
赤い紐のラッピングを解くと、万年筆のインクボトルセットが入っていた。この時期だけの限定品だ。
「珪先生は、万年筆を使われてるのでインクなら使ってもらえるかなって……。先生が書く姿ってよく見てたから印象が強いです」
固辞するのではないかと綾花は不安に思ったが、珪はむしろ、顔をほころばせて贈り物を受け取った。
「ありがとう」
そうして告げたのである。いつかお返しをしなくちゃね、と。
立ち上がった珪は、堂々と手をさしのべていた。
「さあ、もう少し、雪景色を見ないか？」
珪はもうマスクをしていない。綾花も、していない。
彼にはしかし、まだ心のマスクがあるように綾花は感じる。それを脱いで、本当に素顔を見せてくれるのはいつなのだろう……？
でも今は気にするまい。この、貴重な時間を大切にしよう。
宮祀智瑜は桐島義弘とこの場所に来ている。
聖夜の雪景色が一望できた。あまりに見事すぎて、光に包まれた一幅の絵のようだ。
雪の勢いは止まねど、むしろそのおかげで、これが絵ではなく現実だと理解できる。
桐島先生とデート、夜景を眺めながら、教師と生徒としてではなく、単なる男女として――本当に、夢かもしれない。
「ほら、あそこ、観覧車が見えます」
智瑜は夜景を指さし前のめりになる。だが身を乗り出しすぎたようだ。さっと義弘が手を伸ばし、彼女を支えた。
「危ないぞ」
「すいません……」
ここではっとなり、智瑜は改めて彼を見た。義弘の口調が、敬語から普段の教師調に戻っている。
「もしかして……」
「しまった」
やれやれ、とため息して義弘はマスクを外し眼鏡をかけ直す。
「教師としては生徒がこういう場所にいることを注意するべきかと思ったが……禁止されているわけでもなし、無粋とも考えたのでな」
木で鼻をくくったようないつもの言葉使いだが、どことなく照れているような様子もある。
智瑜も照れつつマスクを外した。
「先生……いつから私だって、気がついてました？」
「恥ずかしながら、イルミネーション・スペースに出てようやく……だな」
だったら私、交際相手にふさわしいと思われました？――そんな問いが思わず口から出かかって、智瑜はそんな自分に驚く。どうしたのだろう？ 普段よりずっと、大胆になっているような気がする。
だがそんな問いかけは先生に迷惑だと考え直し、代わりに彼女はバッグから手帳を取り出した。そこに挟んだ白紙を取り、
「これ、学校で渡す予定だったうちのお祖母ちゃんの煮物やお味噌汁などのレシピです。どうぞ」
「ああ……すまないな」
「あのとき持って行った煮物を先生が喜んでくれたって言ったら、お祖母ちゃん凄く嬉しそうでした」
「そうか。よろしく伝えておいてほしい」
義弘は紙片を丁寧に畳んで胸ポケットにしまった。
もう、気がつくといつものやりとりである。単なる男女ではなく、教師と生徒の。
けれども智瑜はこう言うのを忘れなかった。もう二人は、ただの教師と生徒ではないのだ。
「クリスマスプレゼントに手袋編んでたけど、家に忘れてきちゃいました……先生に会えるって思わなくて」
「いや、それは……」
「あっ、手袋は学校に持って行くので受け取って下さいね！」
と言い残すと、智瑜は手を振って義弘の前から去るのだった。
男女の仲ではない。まだ、いや、もしかしたらそうなる日は来ないかもしれない。
けれども、単なる教師と生徒の関係ではなく、教師と、他の生徒よりちょっぴり親しい生徒の関係であったとしたら、嬉しい。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2016年02月09日
- 参加申し込みの期限
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- 2016年02月16日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2016年02月16日 11時00分
