霧の妖精のいたずら～寝子島の青空を取り戻せ！～｜リアクション

霧の妖精のいたずら～寝子島の青空を取り戻せ！～

【戦闘開始〜猫鳴館〜】

「霧の妖精か。……厄介そうだけど、気分が高揚するね」

　サキリ・デイジーカッターは静かな表情の内に鋭い気配をにじませつつコートを身につけた。保温を考えつつも体の動きを邪魔しないようにジャケットタイプを選ぶ。
　懐中電灯にライター、刃物の手入れ用油をコンパクトなウエストバックに詰めた。コンバットナイフはいつでも抜けるように腰に鞘をセットする。

「部室によって保温水筒も持って行こうか」

　相手は霧。熱に弱いはずだとあたりをつける。

　日中だというのにひっそりと静まり返った寮内を歩いて行くと、玄関に邪衣士がぼんやりと寝ぼけ眼で立っていた。どこか不満げな様子を醸し出している。

「あれ、邪衣？　今日は臨時休校だし、冬眠してたんじゃないのかい」
「……テオの声で起きちまった」
「ああ、なるほど」

　邪衣は外を眺めながら「霧かぁ、霧ねぇ……」と呟いている。サキリは目の前の男のろっこんを思い出して納得した。

　邪衣がいるなら猫鳴館周辺は問題ないな。僕はもう少し索敵範囲を広げてみようか。
　
　そう思った矢先、横を突風のように駆け抜ける影を見て笑いがこぼれた。
　気配には気がついていたが、まったく迷いないダッシュにいささか意表を突かれたのだ。
　まったく彼女らしいなと思う。
　
「猫鳴館回りが晴れないとお洗濯に困るのだ！　雪女さん？　と対決なのだ～！」

　スキーウェアを着込みゴーグルを身につけた後木真央は、赤猫リュックに魔法瓶、懐中電灯と団扇という重装備で霧の中へ突貫する。慌てて追いかける召喚猫がおーも乳白色の空間に消えた。　

「邪衣、この周辺は任せるよ。僕は旧市街を見に行ってみる」
「おう。気をつけてな」

　邪衣の声を背中に、サキリは霧の中に足を踏み入れた。

このページにイラストを設定する