スキー＆スノボ教室！｜リアクション

スキー＆スノボ教室！

○初級以上のレッスン

　緩い斜面では、スキーが初めてではない子たちを集めてのレッスンが行われていた。
（久々で手順忘れてる気がするから、お兄さんお姉さんに教えてもらいたいなぁ）
　何度か経験はあるけれど、瑠樹は初心に返ってスキーを習うつもりだ。
「よろしくお願いしまーす！」
「こちらこそ、よろしくお願いします。まずは準備運動をしましょう」
　蓮は礼儀正しく挨拶を返す。
（あれ、さっき済ませたはずだけど）
　と思った瑠樹だが、素直に従う。
「いきなり寒いところで運動すると体に悪いので暖かい環境で一度準備運動をしましたが、それから板を履いてストレッチをするといいと思います」
　蓮は中学校の修学旅行でスキーをした経験がある。
　指導補助員をするにあたって、改めてスキーについては勉強してきた。
　ストレッチを終え、いよいよ瑠樹は滑り出す。
「おっとっと」
　時折バランスを崩しかける瑠樹に、蓮は声をかける。
「腰をしっかり落として、膝は適度に曲げてください」
「こ、こうかなあ？」
「その調子です」
　蓮の微笑みに、瑠樹はにっこりと笑みをかえした。

（狼のいそうな雪山だ！　あえるかな？）
　ロシィは山のほうを見上げた。
　ロシィは朝からワクワクしていた。
　無表情に見えるので、それに気づいた人はいなかったかもしれないが。
　雪が恋しくなった父親に連れられて数度のスキー家族旅行の経験があるので、結構滑れる。
（あそこに見えるのは……人だ。こんなに人がいっぱいじゃ出てこない、か）
「ロシィ・イシロちゃんね」
　黙々と滑り、人よりも山のほうを見ているロシィに、同じくらいの背丈の真白が話しかけた。
「私はつくもましろ。ちょっと名前が似てるわね。あ、こう見えても私指導補助員だからね？」
　髪の色も同じ白だ。そして真白の目は片方だけロシィと同じ綺麗な青だった。
「私スキー大好きなの。ロシィちゃんは？」
「すーってすべるの楽しい！」　
「そうだよね！」
　だがスキーを楽しみつつ、ロシィにはやりたいことがあるのだ。
（みんないるわけないと言うけど、探してみないとわからない！）

　
　午前のレッスン時間が終了した昼食の時間。
「ふー、なんとかなったで」
　ローラーシューズとは違ったが、大分自由に滑れるようになってきたちかが、ロシィに声をかけた。
「なあ、バスで言ってたおおかみてなんや？」
　ちょっと驚きつつ、ロシィは答える。
「おおかみは、狼。銀色の毛で、山にいる生きもの」
「あれ犬みたいなもんやんな？　満月なった人間なれるんやったっけ？」
「……満月でへんしんするのはおおかみ男。ふつうは、なれないと思う」
　他の子たちにはいるわけないと言われたけれど、狼自体を知らない子もいるのだろうか。ちょっと寂しいなと思ったロシィだが。
「さがしいくん？　ほな、ちかもついてったるわ」
　ちかは意外なことを言い出した。
「えっ？」
「ちかもな雪男とかオコジョとか雷鳥とか見たいおもててん。ほな自由時間にいこか」
　ちかは好奇心でいっぱいな表情でウィンクした。