スキー＆スノボ教室！｜リアクション

スキー＆スノボ教室！

○ワクワクバスの中

　『スキー＆スノーボードキャンプ』のバスは大勢の参加者を乗せスキー場へ向かっていた。
　銀髪ポニーテールの柚瀬玲音はキャンプのしおりを広げわくわくしている。
　日程表には出発の後『バス車内でのゲーム』と書かれていた。
「バス内のゲームって言ったら、なんだろう……？　マイクを回してしりとりとか？　あ、雪山に関するクイズとかかもかも？」
「でんごんゲームとか、イントロクイズとかもええな」
　玲音の疑問に、隣の席の苑下ちかが言う。もうゴーグルをつけているが、これは普段からのトレードマークだ。
「わあ、どっちも楽しそう♪　おもいっきり参加したいな、したいな！」
　活発な玲音は、じっと座っているなんて苦手なのだ。

　引率の人の挨拶や諸注意の後、マイクを受け取ったのは坊主頭の真面目そうなお兄さんだった。
「あれ、もちつきのときにいたお兄ちゃんや」
　ちかがつぶやく。
「こんにちは。指導補助員の森蓮です。よろしくお願いします」
　蓮は礼儀正しく頭を下げ、皆の顔を見渡した。
「小中学生のみなさんに質問です。スキー場はどんなところだと思いますか。スキーやスノーボードにはどんな印象を持っていますか。お名前も一緒に教えてください」
「スキー場って雪がいっぱいあるとこやろ。テレビで見たで」
　声を上げたちかに蓮がマイクを渡す。
「おおきに。寝子小２年の苑下ちかや。スキーてあれやろ。ローラーシューズと一緒やろ。コツわかったら一発やで」
　ちかの明るい声と関西弁に、車内の空気がほぐれだす。
「ちかさんはスキーはローラーシューズに似ていると思うのですね。ローラーシューズが得意なのですか」
　蓮はさらに掘り下げて質問する。
「いつもはいとるで。これで行動力プラス７いうとこやな。ガーいって、ぴゅーいきーの、どかーんや♪」
　笑い声が上がった。
「よっしゃつかみはオッケーやな。次はれいねちゃんのばんやで」
　ちかが玲音にマイクを渡す。
「１年のゆせれいねです。スノボ！　じつははじめてだよだよ！　たのしそう！　スキーじょうは、ゆきがきれいだとおもう！」
「玲音さんはスノーボードに挑戦するのですね。スキーやスノーボードで一番大事なことはなんだと思いますか」　
　蓮の質問に玲音は首を傾げるが、すぐに答えを思いついたようだ。
「うーん、がんばってれんしゅうすることかな？　いっぱいれんしゅうしないとうまくなれないよね。銀色のかみをなびかせて、しぱーっとかっこよくシュプールをえがいてすべるボク……かっこいいなっておもうんだよ。だよ。だからがんばる！」

　マイクは反対側の席、眠そうな眼の少年へと渡る。
「３年２組、曖浜瑠樹だよぉ。寝子島に来る前にはちょっとだけスキーした事あるけど、最近はやってないから……久々のスキー、楽しみだよぉ！　ええと、スキー場はさむいけど、すべっているうちにあったまるねぇ」
　マイペースに話す瑠樹に蓮が問いかける。
「瑠樹さんは、スキーやスノーボードをひとつの色で表すなら、どんな色を思い浮かべますか」
　難しい質問だ。瑠樹は腕組みをした。
「うーん。雪は白だけど、スキーは青かなぁ」
「どうしてその色がスキーを表すと思うか、教えてもらってもいいですか」
「そうだねぇ……スピードがでるかんじで、かっこいい色だからかなぁ」　
「なるほど。ありがとうございます」
　蓮は頷いた。正解も間違いもなく、いろいろな考えを聞きたいと思っている。
　次にマイクが渡ったのは、セミロングの白い髪の女の子。
　表情の変化が乏しく、ツンドラ（ツンツンでドライ）に見える。
「ロシィ・イシロ。小学二年生。スキーあそんだことある、すーってすべるの楽しい！　スキー場は、おおかみがいそう。さがしてみたい」
　ざわめきや笑い声が起こった。「いるわけないじゃん」
　ほとんどの者が声に出さないまでもそう思っている。
　蓮は穏やかに答えた。
「狼ですか。昔絶滅したと言われていますが、近年目撃されたという話もあります。いる可能性も否定できませんね」
（一人ひとりの意見を尊重しましょう。自分にはない考えを知ることで、お互いに学びになると思います）
　蓮はそう思っている。

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