- 0
- 0
- 種族
-
- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
＜月華＞ 宵闇邂逅 ～それはフツウを壊すモノ？～
「……帳さん、１つよろしいですか？」
「ええ」
「御剣君に、何をしたのですか？」
その、恐る恐る、といった声色が、緊張を物語る。刀が鋭い眼差しを帳に向け、周囲の者達も息を飲む。
（ろっこんを使う暇が無かった。けれども、帳さんが叫んだ途端、御剣君の表情が真っ白になって……）
悠は、その瞬間を見ていた。思わず叫び、紫が反応する。彼女は悠へ孝文を守るよう頼むと刀を助けに行ったのだ。
帳はどうにかして表情を殺そうとしているように見えた。彼女は、じとり、と刀を睨みつけると、冷たい声色で呟いた。
「私の『記録』のジャマをしたから、かき乱しただけ」
「……かき乱した……？」
紫が不思議そうに首をかしげていると、円が眉を潜めた。今の帳は、物凄くとっつき難い。
（けれどもそれは……調査を邪魔されたから？ ううん、なんだろ……何かとても嫌な事を抉られたのかなって思うな）
刀を見やる帳を見ているうちに、円は先日の事を思い出した。幾つもの眼差しが、自分を見ている。その中に、帳の目もあったような気がしたのだ。
「あのさ、ちょっといいかな？」
円はそれとなく帳に声を掛ける。と、彼女は「はい？」と不思議そうな顔で返事をした。
「ボク、ちょっと前に魔物の呪いを受けた事があるんだ。確かに魔物の雰囲気を感じるけど、『影の貴人』って理性があるんだね」
「ええ。魔物を束ね、弄り、愛憐様に従う者だからね。でも、復讐者でもあるのよ」
帳はまるで職業を答えるかのように、自然体で答える。だが、円は腑に落ちない事がまだあった。
「呪いについて聞きたいんだ。恋が叶わなかったほうが呪われるって、動機が気になってさ。だって嫉妬だとしたら普通、逆じゃないかな？」
その言葉に、帳は意外とでもいうような顔になる。彼女は優しい顔で円や悠を見やった。
「愛憐様は、お救い下さったのよ。引き千切られた思いを叩きつけるために。死にも等しい苦しみから、半分解き放ってくださったの」
そのどこかうっとりとした表情に、円は矛盾を憶える。脳裏に浮かんだ眼差しは、とても冷たかった。悲しみと苦しみに妬みも恨みも混じっていた。
「愛憐様は、自分が味わった苦痛から多くの人々を助けたい、とおっしゃったのよ」
「……本当に、そうなの？」
円がわからない、というようにかぶりをふれば、帳は微笑む。
「それは、本当の恋を知らないからじゃないかしら。貴方もきっと、深く誰かを愛するようになれば、愛憐さまの言葉も解るわ。でも、貴方の恋は実ってほしいわね。だって……」
そこまでいい、彼女は悲しげに微笑んだ。
「愛憐さまのお力も、完全ではなかった。この恨みだけは、あの男や、似た存在に返さなくちゃ気がすまないもの」
（半分だけ救われたって、そういう……）
円は、困惑しつつも視線を思い出した。呪いが集合体ならば、中に想いを抱えている、原点となる『何か』が居るのでは、と考えていた。
（愛憐、名前どおりだとしたら……）
円は静かに頭を下げ、礼を述べる。帳もまた礼をし、一同を見やった。次に手を上げたのは修だった。
「俺が気になったのは、その黒曜石みたいなものと、ゴーレムだ。倒したら靄となって消えたが、アレも影の魔物だったのか？」
「ええ。正しくはその加工品で、魔曜石（まようせき）と呼んでいます。私が加工技術を生み出しました。愛憐様と私だけの技術です」
帳は僅かに胸を張っていい、修は僅かに考える。彼女が『人型』の影の魔物である事は本人の口から聞いている。影の魔物は恋を結ぶ事が出来ず、呪いによって死んだ者たちの成れの果てだ、という事を修は知っている。だが、『人型』の魔物と聞き、ふと、思ってしまった。
（死んだ存在がそのまま魔物化した、という事か？）
修の背筋に冷たい汗が流れる。だが、それを直接口に出す事が、何故か彼には出来なかった。
さて、他には、と問う帳。今度は、誰も口を開かなかった。
「……では、これにて。次合間見えるときは、理性を取っ払って全力で……と言いたい所ですが」
ソコまでいい、帳は表情を険しくする。彼女はぎゅっ、と何かを握り締めると僅かに苦笑を浮かべた。
「私の力は元々これぐらい。非常に口惜しいのですが、他の方が出てくるかと思います。それでは」
その言葉を最後に、帳はすっ、と姿を消した。同時に……街の喧騒が戻ってきたのだった。
刀は、帳が消えた虚空を軽く睨みつける。
（俺の普通に手を出したテメエは、俺の敵だ。……次こそは！）
「ええ」
「御剣君に、何をしたのですか？」
その、恐る恐る、といった声色が、緊張を物語る。刀が鋭い眼差しを帳に向け、周囲の者達も息を飲む。
（ろっこんを使う暇が無かった。けれども、帳さんが叫んだ途端、御剣君の表情が真っ白になって……）
悠は、その瞬間を見ていた。思わず叫び、紫が反応する。彼女は悠へ孝文を守るよう頼むと刀を助けに行ったのだ。
帳はどうにかして表情を殺そうとしているように見えた。彼女は、じとり、と刀を睨みつけると、冷たい声色で呟いた。
「私の『記録』のジャマをしたから、かき乱しただけ」
「……かき乱した……？」
紫が不思議そうに首をかしげていると、円が眉を潜めた。今の帳は、物凄くとっつき難い。
（けれどもそれは……調査を邪魔されたから？ ううん、なんだろ……何かとても嫌な事を抉られたのかなって思うな）
刀を見やる帳を見ているうちに、円は先日の事を思い出した。幾つもの眼差しが、自分を見ている。その中に、帳の目もあったような気がしたのだ。
「あのさ、ちょっといいかな？」
円はそれとなく帳に声を掛ける。と、彼女は「はい？」と不思議そうな顔で返事をした。
「ボク、ちょっと前に魔物の呪いを受けた事があるんだ。確かに魔物の雰囲気を感じるけど、『影の貴人』って理性があるんだね」
「ええ。魔物を束ね、弄り、愛憐様に従う者だからね。でも、復讐者でもあるのよ」
帳はまるで職業を答えるかのように、自然体で答える。だが、円は腑に落ちない事がまだあった。
「呪いについて聞きたいんだ。恋が叶わなかったほうが呪われるって、動機が気になってさ。だって嫉妬だとしたら普通、逆じゃないかな？」
その言葉に、帳は意外とでもいうような顔になる。彼女は優しい顔で円や悠を見やった。
「愛憐様は、お救い下さったのよ。引き千切られた思いを叩きつけるために。死にも等しい苦しみから、半分解き放ってくださったの」
そのどこかうっとりとした表情に、円は矛盾を憶える。脳裏に浮かんだ眼差しは、とても冷たかった。悲しみと苦しみに妬みも恨みも混じっていた。
「愛憐様は、自分が味わった苦痛から多くの人々を助けたい、とおっしゃったのよ」
「……本当に、そうなの？」
円がわからない、というようにかぶりをふれば、帳は微笑む。
「それは、本当の恋を知らないからじゃないかしら。貴方もきっと、深く誰かを愛するようになれば、愛憐さまの言葉も解るわ。でも、貴方の恋は実ってほしいわね。だって……」
そこまでいい、彼女は悲しげに微笑んだ。
「愛憐さまのお力も、完全ではなかった。この恨みだけは、あの男や、似た存在に返さなくちゃ気がすまないもの」
（半分だけ救われたって、そういう……）
円は、困惑しつつも視線を思い出した。呪いが集合体ならば、中に想いを抱えている、原点となる『何か』が居るのでは、と考えていた。
（愛憐、名前どおりだとしたら……）
円は静かに頭を下げ、礼を述べる。帳もまた礼をし、一同を見やった。次に手を上げたのは修だった。
「俺が気になったのは、その黒曜石みたいなものと、ゴーレムだ。倒したら靄となって消えたが、アレも影の魔物だったのか？」
「ええ。正しくはその加工品で、魔曜石（まようせき）と呼んでいます。私が加工技術を生み出しました。愛憐様と私だけの技術です」
帳は僅かに胸を張っていい、修は僅かに考える。彼女が『人型』の影の魔物である事は本人の口から聞いている。影の魔物は恋を結ぶ事が出来ず、呪いによって死んだ者たちの成れの果てだ、という事を修は知っている。だが、『人型』の魔物と聞き、ふと、思ってしまった。
（死んだ存在がそのまま魔物化した、という事か？）
修の背筋に冷たい汗が流れる。だが、それを直接口に出す事が、何故か彼には出来なかった。
さて、他には、と問う帳。今度は、誰も口を開かなかった。
「……では、これにて。次合間見えるときは、理性を取っ払って全力で……と言いたい所ですが」
ソコまでいい、帳は表情を険しくする。彼女はぎゅっ、と何かを握り締めると僅かに苦笑を浮かべた。
「私の力は元々これぐらい。非常に口惜しいのですが、他の方が出てくるかと思います。それでは」
その言葉を最後に、帳はすっ、と姿を消した。同時に……街の喧騒が戻ってきたのだった。
刀は、帳が消えた虚空を軽く睨みつける。
（俺の普通に手を出したテメエは、俺の敵だ。……次こそは！）
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2016年07月17日
- 参加申し込みの期限
-
- 2016年07月24日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2016年07月24日 11時00分
