――桜花寮(女子側)。
「えっ?! ここは桜花寮……よね?」
先ほどまで用事があり、シーサイドタウンへ出かけていたはずの
弘明寺 能美子が辺りを見渡して眉をひそめる。彼女は、いつの間にか桜花寮の中におり、少し困惑する。だが落ち着いて辺りを見ていると、彼女が知っている桜花寮にしては薄暗く、しかもちょっとだけ建物が大きくなっているような気がする。
僅かに目を凝らすと、近くに見覚えのある男が立っていた。短く切った灰色の髪に、金色の目をした過去に寝子島の住人に助けられた『天狼族』の男、ライメイだ。傍らには灰色の髪を一本の三つ編みにした少年、ツムジの姿もある。
『天狼族』は『異世界の月』に暮らす種族の1つで、狼になる事ができる。それ以外にも聖なる光を放ち、色々と浄化できるらしい。その為、影の魔物という存在に命を狙われている事を能美子は思いだした。
彼らの側には、十数名の老若男女が疲れた表情で座り込んでいた。彼らは皆、大小傷を負っている。これはただ事ではない、と思っていると、ライメイが能美子へと声をかけてきた。
「君は、先日助けてくれた娘さんだね。……大変すまないとは思っている。だが、私たちも少し困った事になってしまったんだ」
「あれから故郷に戻って、『晴ノ国』の王様が僕らを保護してくださったんだ。だけど、今度はそっちに影の魔物が……」
ツムジが途中で口ごもる。急に窓ががたがたと鳴り出したかと思うと、そこに烏や蛇のような黒い生き物が見えた。そこですかさずライメイが吼え、光を放つとその生き物は逃げていった。
あれが、影の魔物のようだ。窓の外を見れば、うようよとしているのが見えた。今、外に出るのは危険だろう。
能美子が後ろを振り返ると、彼女以外にも寝子島の住人がいた。彼らの表情は様々ではあるが、一蓮托生であるのにはかわり無い。
その時、1人の男性が姿を現す。黒髪を隠すように白い帽子を被ったその男性は、眼鏡を正し一礼した。
「私は、玄武族の巫覡長、綴(とじる)と申します。
今回は、皆様のお力を借りたく思います。説明いたしますので……」
綴となのった男は、静かに説明を始めた。
現在、各種族の王6人が、住人達を助けるべくこの地に月光を齎し異世界への道を作ると同時に魔物を葬るべく異世界の月にある青龍族の宮で儀式を行っているという。しかし、魔物の群生が持つ魔力が強いため、発動までに最速でも3日もかかるとの事だった。
「私たちは、元々避難している途中だった。だが、術を使っている最中に魔物に襲われて失敗し、ここへ転移してしまったようなんだ。どうやら、魔物たちもついてきてしまったようだな……」
ライメイが酷く申し訳無さそうに言う。綴もまた、同じような表情で一同をみる。
「ですが、今出来る事で最大限の事をさせていただきます。この場所を光の結界で囲めば、帰り道が出来るまで持ちこたえられます」
そこで、桜花寮を守るべく光の結界を張るべく火を絶やさないようにして欲しい、というのが綴の願いだった。
「影の魔物は、光がある限りこの桜花寮には入れません。ですが、欠ければ結界に綻びが生じ、そこから魔物が入ってきてしまいます。ですから、3日の間火を絶やさず番が出来る方が欲しいところです。
3日後には、月の光を通って異世界から迎えに兵士達が着ます。そのまま援軍として戦ってくれるでしょう。ですから、それまでどうか……持ちこたえてください」
彼はそういうと、深々と頭を下げ切実そうに願うのだった。
桜花寮にせまるは、影の魔物の群れ。
異世界の月からの援軍が来るのは、3日後の夜。
果たして、寝子島の住人達は天狼族たちを影の群れから守りきれるだろうか?
ども、菊華です。
今回の舞台は、切り分けられた世界の『桜花寮』。
そこでの篭城戦と相成りました。
影の魔物たちは、今だ傷の癒えぬ天狼族の男性、ライメイとその仲間たちの命を狙い襲い掛かってきます。
昼も夜も曇り空な為陽光も月光も差し込まないため、彼らを侵入させない『光』をなんとか確保しなくてはなりません。
しかし、3日目の夜になれば異世界の月の王たちが行っていた儀式により術が発動して月光が降り注ぎ援軍が到着する予定です。
みなさんはなんとしてでも3日間、影の魔物から桜花寮を守らなくてはなりません。
(正し、全て乗り越えたあと現実世界に戻ると精々2~3分後といったあたりに戻ってきます)
難易度:? ? ?
今回も皆さんのアクションにより変わります。
概要(長めですが、目を通してください)
敵について
今回襲い掛かってくるのは、影の魔物です。
彼らは『光』に弱いのですが、現在はその『光』が少ないため桜花寮付近にうごめいています。
桜花寮
実際の桜花寮に比べちょっと建物が大きい気がします。今回巻き込まれたのは女子寮の1棟と男子寮の1棟。間には川が流れています。
異世界の桜花寮なので、作りが少々違うようです。イメージ的に男女ともにC棟ですが、女子寮の方に食堂、男子寮の方に発電機があります。
現在は停電しているため照明はおろか電子機器全般が使用できません。
男子寮地下にある発電機を修理すれば部屋中に明かりを点す事が出来るでしょう。
また、女子寮にある食堂に食料と飲み水用のペットボトルがありますが寮にいる人間の半日分と言った所でしょう。
※PL情報
ガイドでは女子寮が舞台になっておりますが、皆さんは性別関係なく男子寮もしくは女子寮にいます。アクション冒頭に男子寮、女子寮のどちらに召還されたかを必ず記載してください。(書かれていなかった場合、適当に割り振ります)
使用可能施設
厨房、トイレなど一部の水道
結界は建物に張られています。
建物の外に出ること自体は出来ますが、影の魔物がうろついていますのでお勧めしません。その他、建物から外に出る事で僅かな時間ではありますが結界に綻びが生じる危険性があります。
※敷地の外は普段の寝子島とは違い、荒れています。
人はまったくおらず、影の魔物しかいません。
光の結界
現在、綴が光源を探しています。
懐中電灯でも蝋燭でも何でもかまいません。3日間光を絶やさぬようにしていただきます。
必要な光源は男子寮で10個、女子寮で10個です。
ただし、影の魔物の影響か電池が切れやすかったり火が消えやすくなっている可能性があります。
正し、発電機の修理に成功するとそのターンから照明を使う事が出来ます。
桜花寮にある照明を全部つける事で光の結界を強くする事が出来ます。
(光の番は照明操作へと変更となります)
避難してきた人々
現在、男子寮と女子寮其々15人ずつ『異世界の月』の住人がいます。
時間
今回は判定のため6つのターン(1日目の午前、1日目の午後、2日目の午前、2日目の午後、3日目の午前、3日目の午後)を設けます。皆さんは6つのうち『主に行動するターン』を1つないし2つを選び行動していただきます。
ターンを1つに絞る事で判定に有利にする事もできます。
逆に3つ以上選ぶと不利になります。
※PL情報
アクションとの兼ね合いや判定などで、指定したターン以外にも登場する事があります。
行動
1つのターンで行える行動は基本、1つだけです。
次の中からお選びください。
【探索】:寮内を探索し『光源』や『食料』など篭城に使えそうなものを探します。
【発電機の修理】:発電機を修理します。
【光の番】:灯りが絶えぬよう、光源をまもります。
【情報収集】:異世界の月の民から情報を聞きだしたり、影の魔物の様子を
探ったりします。
【運搬】:男子寮と女子寮の間で物資などの運搬を行います。
寮の間には川が流れています。橋は敷地内にありますが大破しており、
使用できません。また、影の魔物に対する対策も必要です。
所持品
普段持っていてもおかしくないものを2つ持ち込めます。
※3つ以上書き込まれた場合はランダムで選ばせていただきます。
ヒント
今までに出された『異世界の月』シリーズのシナリオで入手したアイテムの中に、
今回効果を発揮する物があります。
対象シナリオ
・月夜に囚われし姫君を救え
・トワイライト・フェアリーテイル ―逃げ出した姫―
・ふわりふる真珠、月の都の異邦人
・トワイライト・フェアリーテイル ―鳥篭の姫―
・狼は九夜山に吼える?
登場NPC
※リアクションスタート時にいる位置も書いております
<異世界の月の住人>
ライメイ
ツムジ
異世界の月の住人『天狼族』の生き残りで、今回は仲間からこの世界へ避難のため送られました。探索など協力してくれます。
綴(とじる)
異世界の月の住人『玄武族』の男性。『雨の国』にある王宮で巫覡長(巫女たちを纏める存在)を勤めています。今回は玄武族だけでなく他の王族からの使命を受けやってきました。
※この3人は女子寮にいます。
<寝子島の住人>
相原 まゆ
過去に朱雀族の姫と入れ替えられようとした事のある体育教師です。
今回は買い物中に巻き込まれた模様です。男子寮にいます。
所持品:スマートフォン、懐中電灯
牛瀬 巧
ライメイを探すべくツムジを手伝った事がある生物教師です。
今回は授業の資料を作っている最中に巻き込まれた模様です。男子寮にいます。
所持品:べっこう飴の袋、小刀
小日向 つばめ
過去に白虎族の王に婚姻を申し込まれた写真・映像技術の教師です。
今回は、写真撮影中に巻き込まれた模様です。女子寮にいます。
所持品:一眼レフカメラ、チョコレート
それではよろしくお願いします。