――寝子島高校
ボクシング部で練習に励んでいた
日暮 ねむるは「ん?」と窓から見えた物に目を丸くした。
よく見ると、黒っぽい何かが落ちてきているように見える。
(あれ……なんだろ? なんか気になる)
直感的な『なにか』を憶えた彼が首をかしげているうちに、終了時間となった。後片付けをしようと、ねむるが動いたとき、異変は起こった。
――音が消えた。
否、時が止まったかのように周囲の人間が動きを止めていた。
「えっ? ど、どういう事?」
ねむるが困惑していると、背筋が冷たくなっていく。嫌な予感を憶えながら辺りを見渡すと、大人の掌ほどの大きさをした黒曜石のような物がふよふよと浮いていた。
「なんか、訳アリみたいだね?」
ねむるはため息交じりに外に出た。
* * * *
部活などで外にいた生徒や先生は、軒並み動きを止めていた。例外的に動けた者達は、辺りを見渡したり、動ける人間を探したりしている。
「ふむ、流石に逢魔が刻……というべきかな」
ねむるが振り返ると、
永田 孝文が訝しげに辺りを見渡していた。どうやら帰宅しようとしていたらしいが、このような現象に出くわし、聊か困惑しているようだった。
「それにしても、何なんだろうねぇ?」
「先生は怖くない?」
何気なくねむるが問いかけると、孝文は苦笑する。
「怖くないな。むしろ……何故かわくわくしているよ」
彼がそう答えたとき、急に風が吹いた。不思議に思っていると、2人の目の前に黒髪を隠すようにフードを被った女性が立っていた。
「こんばんわ。あなた強そうね?」
彼女はそう言うと、きらきらと輝く黒曜石のような物を操り、急に人形をこしらえる。そうして現れる、4体のいびつな人形。
帳(とばり)と名乗った女性は、ねむると孝文を見て少し考えると、ぱちん、と指を鳴らす。途端に孝文は硝子のような物に包まれ、閉じ込められてしまった。
「! 先生!!」
ねむるが助けようと硝子の筒を叩くも、びくともしない。帳はくすり、と笑ってねむるを見た。
「彼を助けたかったらそこの人形を倒して御覧なさい。倒せなかったら、この教師かしら? 彼の命は無いわよ」
帳の言葉に、ねむるは歯を食いしばる。いま、この時、孝文の命は自分たちに賭けられたのだ。ねむると同じ境遇に追い込まれた者たちは、如何にして孝文を助けるか、目の前の人形を倒せるか考えるのであった。
菊華です。
今回より異世界の月シリーズ改め【月華世界】、略して月華シリーズとして展開していきます。
(過去のシナリオを読んでいなくても参加できます)
人質をとられての戦闘です。
みなさんは、永田先生を助けることができるでしょうか?
難易度★★★
(少し判定が厳しめです。成功を目指すなら気を引き締めてください)
※難易度について、くわしくはマスターページをご覧ください。
今回の概要
永田先生を人質に取り、謎の女性が勝負を挑んできました。
皆様は黒曜石で出来た人形(ゴーレム?)を倒していただきます。
成功条件:4体のゴーレムを倒す
失敗条件:全滅
黒曜石の人形
いびつな人の形をした人形です。動きはさほど素早くありませんが、力持ちです。
4体とも全長2,5mほどの大きさです。
近づいてくる敵を踏んだり、殴ったりしてくる他、1体は影の玉を放ってきます。
射程は5mほど。あたると体がしびれて少しの間動けなくなります。
PL情報
影の玉を放ってくる個体のみ、青い宝珠がついています。
戦闘の舞台
今回は寝子高の校庭ですが、戦闘が終わるまでは参加者さん以外の時間が止まっています。
寝子高生以外のみなさんは、戦闘が終わり次第元の場所に戻っています。
ちなみにですが、永田先生は結界の中で、どうにか脱出できないか模索しています。
永田先生が出す声は聞こえます。が、永田先生は外の音を聞くことができません。
先生に何か伝えるならば工夫が必要でしょう。
謎の女性:帳(とばり)
黒髪に黒目、浅黒い肌の小柄な女性で黒曜石のような物を操ります。
永田先生を人質に、戦いを申し込んできました。
硝子のような結界と、黒曜石っぽいものを操ります。
また、戦闘中は地上20mぐらいの所を浮かんで様子を伺っています。
みなさんに手は出しません。
異世界の月の住人に見えますが、『影の魔物』と似た雰囲気を持ちます。
※今回は制限時間などありません。けれども戦い方によって謎の女性の反応が変わります。
※過去の月華シリーズはこちらです。
1話完結のこともあれば、前作参加者が優先される明確な続き物のこともあります。
<これまでのシナリオ>
・月夜に囚われし姫君を救え
・トワイライト・フェアリーテイル ―逃げ出した姫―
・ふわりふる真珠、月の都の異邦人
・トワイライト・フェアリーテイル ―鳥篭の姫―
・狼は九夜山に吼える?
・漆黒の進撃・桜花寮篭城戦!
それではよろしくお願いします。