寝子小クリスマス会｜リアクション

寝子小クリスマス会

「速さよりも、プレゼントを落とさないことが重要です！」
　ミルカは、そう言いながらリアーネと一緒に一生懸命バランスをとってそりを引いていた。
「うん、じゅんいより、二人でゴールするのが大事だね」
　リアーネは１年生だけど、いつも女性に優しいパパを見ている。
　だから特に女性には大人びた優しさで接することが多い。
（悲しい思いや心細い思いをする子がいないように、みんなで楽しくクリスマス会ができればいいな）
　お姉さんのミルカに頼るというより、むしろ優しくしてあげたいと見守っているような感じだった。
　ミルカもしっかり者なのだが、まだまだ子供らしいところもあって、なかなか面白いペアと言えるかもしれない。
「あっ、あさひちゃん……！」
　少し離れて前を行く、同じクラスのあさひがバランスを崩したのを見て、思わずミルカは声をあげた。
「よかった、ころばなかったみたい」
　同じく息を飲んだリアーネが言う。
　近くなら駆け寄って助けてあげたいけれど、少し遠い。
　転ばないように気をつけながら、ミルカとリアーネはあさひとちかに近づいていった。

　転ばずになんとか持ちこたえたあさひだが。
「ソリが反対の方に行っちゃったよー……」
　すぐに反応できずにいる間に、プレゼントはゆらりと揺れ、崩れそうになる。
　すかさずちかが走り、手を伸ばす。
「やったで！　あれ？」
　もう一人、手を伸ばして支えてくれた子がいた。
　近くを走っていた二宮風太だ。
「今の話聞こえたから……プレゼント、落としたらこわれちゃうんだよね？」
　ちょっと恥ずかしそうにそう言うと、急いで自分のそりに戻っていった。
「おおきに！　おかげでクリスマスパワーたまったで！」
　ちかが手を振りながら大きな声でお礼を言う。
「ありがとう！」
　あさひも思いがけない助けがとても嬉しかった。
「ごめんねちかちゃん……」
　ほっとしながらも申し訳なさそうなあさひに、ちかは明るく返す。　
「ええんや、おとさなきゃへいきや。けどこらつみなおさなあかんな」
「うん……」
「だいじょぶや、クリスマスパワーがあるんや、まかしとき。これもっといて」
　ゴーグルを上げたちかは、支えたプレゼントの一つをあさひに渡し、どろだんごをこねる時のように細心の注意を払って積む角度や場所を決める。
　あさひも邪魔にならないように気をつけながら、一生懸命積んで行く。
「もうくずれないようにきっちりつむで」
　だがそんなことをしている間に、後ろから来たそりに抜かれていく。
（たくさんおいぬかれちゃったなぁ）
　あさひがそう思っていると。
「あさひちゃん、がんばって！」
　後ろからやってきたミルカが声をかけてくれた。
「ありがとう！」
　お礼を言いながらあさひは、さっきの劇のミルカの姿を思い出した。
　修行中だけど、プレゼントを配るため、一生懸命頑張るサンタさん。
「サンタさんのくろうがちょっとだけ分かったような気がするねぇ」
「ほんまや」
　あさひのつぶやきに、ちかがウインクした。
　