寝子小クリスマス会｜リアクション

寝子小クリスマス会

☆クリスマスの出し物

「やったー！　小学校でもクリスマスがあるんだ！！　ほいくえんでもあったけど、小学校のはどんなのになるんだろー？」
　１年生の小島海美は、クリスマス会をとても楽しみにしていた。
「みんなで出しもののれんしゅうがんばったけど、ほかの人のもたのしみだ！」
　そんなわけで『あわてんぼうのサンタクロース』に出る子供たちは、舞台下の入り口前に待機していた。
「げきはね、いっぱいれんしゅうしたから、すごくがんばる！」
　２年生の一原みとは、雪の妖精の白い衣装を服の上からかぶっていた。
　いつもマイペースでぽけーとしているみとだが、今日はやる気になっているようだ。
　５年生の夕鈴翼はその近くでトナカイパーカーを持っていた。
（実はこのパーカー、ボクにはちょっとキツくて前が閉まらないんですよね）　
　背は低いが、他の部分の発育が同年代に比べ良い翼。
　けれどそれを恥ずかしがったりはしない。
　ブラもまだ早いと思ってつけていないのだ。
　
　舞台の上ではクリスマスソングの合唱が披露されていた。
　ゼロ・シーアールシーも「とりあえず出てみるのですー」と気軽に参加し、歌っている。
　ウェーブのかかった髪にいつもの純白のふわふわワンピースを着たゼロは、天使のように見えた。
（ゼロが歌うとどんな歌を歌っても子守唄になってしまうのですー）
　そんな本人の思いを裏付けるように。
「みんな寝ちゃったのですー」
　体育館がストーブで暖かかったからだろうか。１年生を中心に、こっくりこっくりと眠気に襲われているようだ。
「おこさないと、風邪をひいちゃうのですー」　
　その時、舞台下の翼がつぶやいた。
「ところで着替えってどこですればいいんです？　まぁいいか、このままここで着替えれば」
　言うなり翼は脱ぎ始め、発育の良すぎる胸元があらわになる。
　眠りかけていたおませな男子たちがぱっちりと目を見開いた。
　しかし翼はみんなの視線を気にしていない。
「翼おねえちゃん、ここじゃみんながみてるからだめだよ！」
　慌てて海美が翼の手を取り、みんなから見えない舞台袖に引っ張っていく。　
　この騒ぎで１年生たちも目を覚ました。
「よかったのですー」
　無事合唱を終え、ゼロは舞台を下りていった。

　着替えを済ませた翼が舞台袖に向かうと、みとが列の後ろにいた。
　眠そうな目をしているけれど、眠いわけではないようで、元気に話しかけてきた。
「あのね、カエルさんってね、冬はさむいから『冬みん』するのよ。カエルさんは、さわるとつめたいでしょ？　さむいともっともっとつめたくなっちゃう。ずっとねてるのって楽ちんそうだけど、本当はすごくたいへん」
（カエルの役なんてあったっけ？）
　翼が首を傾げると、みとが、しまったと言うように口を押さえた。
「ちがった。……あのね、だから、カエルさんってきっと、雪を見たことないでしょ？　カエルさんみたいに、知らない人にも、雪ってどんなのかわかるみたいに、がんばるの！」
　翼は優しく頷いた。この子は劇に出るので緊張してテンションがあがっているのかもしれない。
　雪の妖精の役はほぼ背景のようなものだけれど、一生懸命練習してきたのだろうと思う。
「そうなんだ。頑張ろうね」
「うん」
　二人が笑顔で頷きあうと、舞台脇から合図があった。
　みとはちょっと緊張しながらライトに照らされた舞台へ出て行った。
　

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