寝子小クリスマス会｜リアクション

寝子小クリスマス会

☆プレゼント運びレース！

　４年生のエルカディア・シュルツは、クリスマス会を楽しみにしていた。
（楽しそうにしているみんなを見てると、ボクもワクワクしてくるよ）
　出し物の次は、雪の積もった校庭に場所を移してプレゼント運びレースだ。
「プレゼント運びレースは二人一組でソリを引いてもらいます。何度出てもいいけれど、もらえるプレゼントは一つだけですよ」
　教頭先生が説明する。
（色んな場所でクリスマスを過ごしてきたけど、ネコジマのクリスマスも賑やかだね。今日は思い切り楽しみたいな）
　エルカディアは発明家の父に連れられて世界中を転々としてきた。寝子島もいつ離れることになるか分からない。
　だから数少ない思い出は良い物にしたい。
　そんなことを思いながら、同じクラスの暁桜逢莉の姿を探した。
　もう相手を決めていないだろうか、ちょっと心配しながら声をかける。
「アイリ、一緒に出ない？」
「えっ！　わたくしとですか？　ありがとうございます！」
　逢莉はびっくりしたように瞬き、朝焼け色の瞳を輝かせた。
「よろこんで！　こう見えて足に自信はありますから、わたくしの気宇壮大なさまを結果でしめしたいです！」
　言っていることはちょっと難しいが、エルカディアは逢莉のハイペースな明るさが好ましかった。
「頑張ろうね、アイリ」
「はい！　エルくんとなら獅子奮迅の実力を見せてみせます！」　　
　
「プレゼント運びレース……二人一組なのですね」
　ミルカ・アハティアラがあたりを見回すと、劇でも一緒だったリアーネ・ライニオが目に入った。
　リアーネとは前に一緒にカードを作ったこともある。
「ミルカちゃん、いっしょに出ませんか？」
　リアーネがにっこりと笑いかける。
「はい、よろしくお願いします。がんばりますね！」
　ミルカも笑顔で答えた。
（わたしの方がお姉さんですから、はりきらないと）

　３年生の椎名あさひの服は皆の注目を集めていた。
「トナカイさんだ！　サンタさんはいないのかな」
　１年生の子が指さしてきょろきょろする。
　角と目鼻がついたフードつきポンチョはトナカイのデザインで、クリスマスのベルがついている。下の服も同じ布でできていて、トナカイの着ぐるみのように見えた。
「お母さんの作ってくれたトナカイさんのおようふくをきてがんばるよー」
　あさひはそう言って、レースのペアの相手を探そうとあたりを見回した。
「おー、シカや。うちとレースに出えへん？」
　２年生の苑下ちかが声をかけてきた。
「トナカイなんだけど……うん、いいよ」
「ほなよろしくな。うち、クリスマスむっちゃたのしみしとってん」
　ちかとあさひはプレゼントが積まれたそりの綱を持った。
　ちかは頭につけていたゴーグルを目まで引き下ろす。
「たくさんプレゼントをつむとぐらぐらバランスがとりにくいねぇ」
　あさひが言うと、ちかが真面目な顔になる。
「コレはこぶんは重大にんむやで。夜なったらみなにくばるやつやろ？　おとしたらバチあたんで。ゆっくり、はよーや」
「え、これ夜くばるプレゼント？　それでレースするの？」
　あさひが目を丸くする。
「あ？　くばるやつつこてレースすんのなんでやって？　そんなんもしらんのかいな……えっとな」
　ちかが考え出したとき、スタートの笛が鳴った。

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