寝子小クリスマス会｜リアクション

寝子小クリスマス会

☆『あわてんぼうのサンタクロース』

　幕が上がる。
　雪の妖精役のみとは、家族とスキーに行ったりしたときのことを思い出して一生懸命雪を表現した。
「ひゅー、ひゅー」
（白くて、ふわふわして、つめたい。だけどかまくらとか、雪であそぶと、あったかい！　ゆきー！）
　他の役が登場するともう注目はそちらへ移ってしまうけれど、みとは一生懸命演技を続けた。
　
　サンタを待ってお祈りを捧げる子どもの役を演じるのは、１年生のリアーネ・ライニオ。
　子ども役は他にもいるが、物おじしないのと声量を買われて主役級の役どころだ。
　ストレートの赤い髪が舞台に映えていた。
「サンタさん、サンタさん、リィのプレゼントはなくても構いません。その代わり、みんなにはプレゼントをあげてください、お願いします」
　リアーネは舞台中央でひざまずき、星に向かって祈りを捧げる。
　その時シャンシャン、と鈴の音がした。鈴の音はだんだん大きくなり近づいてくる。
　トナカイ役の翼が首に鈴をつけ、四つんばいになって現れた。
　揺れるはちきれそうな胸。おませな子はお姉さんの魅力にメロメロだ。
「日頃家事なんかをしているので、それなりに力はあると思いますから、ある程度の重さの子なら乗せて歩くことも出来るんじゃないかと」
　練習の時翼がそう言って、ソリを引くことになった。後ろから他の子も押してくれることになったが。
　翼の後ろからはソリに乗った可愛らしいサンタ役の３年生ミルカ・アハティアラが現れる。
　赤いサンタ帽の下で、銀のツインテールが揺れた。
「わたし、まだ見習いサンタなんです！　いっぱい失敗もしてしまうけれど、ちゃんとクリスマスプレゼントを子供たちに届けなくっちゃ！」
　フィンランド生まれのミルカは、クリスマス雑貨の店を営む祖父と暮らしている。
　だらしない祖父に代わり家事をしたりするしっかり者だ。
　だからこの台詞も、半分演技のようなほとんど本気のような感じで役になりきって話しているのだ。
（トナカイって鳴き声どんな感じなんですかね？　ヒヒーンじゃ変でしょうか）
　ミルカのセリフを聞きながら、翼はそんなことを思っていた。
（まぁ、鳴かないで黙ってればいいですかね？）
　台詞がないのはちょっと物足りない気もするが、仕方ない。
　いろいろな困難を乗り越え、無事に子供たちにプレゼントを配り終えたミルカサンタと翼トナカイはにっこりする。
「さあ、これはきみのぶんだよ」
　ミルカサンタがほとんど空っぽになった袋からプレゼントをそっと取り出し、リアーネに差し出す。
「いいの？」
　戸惑いつつも控えめにそれを受け取るリアーネ。
　とろけるような笑顔を浮かべた。
　
　拍手喝采と共に幕が降りた。
「いいおはなしだったのですー」
　ゼロは普通に鑑賞し、満足そうに拍手した。

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