サンタクロースの贈り物～サタン・クロース！～｜リアクション

サンタクロースの贈り物～サタン・クロース！～

「あら、そこにいるのは先日の冒険者ね。暗さんだったかな」
　陽毬は世界地図が描かれた旅行鞄を抱えなおす。
　先日始まりの街で会った暗が、陽毬と同じくこのダンジョンに来ていたのだ。
「なんで商人がこんな場所にいるんだ。俺は許可していないぞ」
　暗はむっとした表情で訝しがる。
「ふふっ、ここはそうゆう世界ですからね。武器も防具も、それに消費アイテムもほら、こんなにご用意してありますよ」
　不審がる暗に、陽毬は笑顔で受け流す。
　場所が場所だけに、魔物による幻覚や罠だと思われることも少なくないのだ。
「まぁいい。許そう。俺の眼鏡にかなうものがあるのか」
「ぜひぜひ見ていってくださいな。でも、御代はそれなりに頂きますよ？」
「お前、この俺から金を取るのか？」
「当然ですよ。だってここは危険なダンジョンですよ。ここまで商品を持ち運ぶのにどれほどの危険を乗り越えてきているか、暗さんにもお分かりでしょう？」
　陽毬はにっこり微笑んで、そのほんわかと優しげな雰囲気からは想像もつかないようなぼったくりな値段を吹っかける。
　しかし陽毬のいう事ももっともなのだ。
　街中と違ってダンジョンや危険地帯に属する場所は、商人であれモンスターの攻撃対象なのだから。
「ほら、この弓とか、如何です？　通常の弓は真っ直ぐにしか飛びませんが、この弓なら自動追尾つきですよ」
　陽毬が渋る暗に実演してみせる。
　細く白い指先から放たれた矢は、薄暗いダンジョンを左折し、そのまま、その先に潜んでいた雪だるマンダークをツプッと突き刺した。
「おおっ、お前やるな！」
「ふふっ、これでも腕前には自信があるのです。こちらの槍もお勧めですよ。暗さんが好きそうな魔術的文様が刻まれているんです」
　弓を置き、陽毬は槍を取り出して暗に見せる。
「確かに、禍々しくも美しい文様だな。この俺に似合いそうだ」
　見た目のわりに重みを感じないのも、暗には良かった。
「それからこちらの鎧もぜひぜひ見てください。槍と同じ文様が刻まれたおそろいのデザインになっているんですよ」
「格好いいじゃないか。だがこれは、どう見ても魔物と同じデザインじゃないか？」
　なんだかんだ真面目な暗は、その辺が妙に気になった。
「店長がどこからか、魅力的な品々を仕入れてきてくれるんですよ。品質は保障済みです」
「むー。確かに、へんな仕掛けなんかないよな。着てても違和感ないし。文様に加えて竜が刻まれているとか完璧だ」　
「納得していただけましたか？」
「まあな」
「では、お会計はこれほどになります」
「高っ！」
　陽毬の見せたお値段に、暗は思わず叫んだ。
　２か月分の食事が軽く吹っ飛ぶお値段だ。
　だが厨二心をくすぐる最高の装備。
　暗は、断腸の思いでサイフから金貨を取り出した。
　お買い上げ、ありがとうございます！」
　ずっしりと重くなった金貨袋を手に、陽毬は極上の笑顔で微笑んだ。