テテテテッテッテーテ、テッテテー♪
どこかで聞いたことのあるレベルアップの音が周囲に鳴り響いた。
水守 流が目の前の雪だるマンをぶちのめした瞬間の出来事だった。
「これは、あきらかにサタンクロース・ファンタジーか?」
流は手にした木の棒と、消え去った雪だるマンがいた地面を、交互に見つめる。
『ゲームの世界に入り込むような面白い神魂手に入りますように!』
流がクリスマス雑貨店『Joulupukki』のサンタ☆ポストにそう願い事を書いていれたのは、学校帰り。
以前から行ってみたかったゲーム世界を願ってみたのだ。
そしたら、いきなり周囲の景色がドミノを倒すようにパタパタと変わりだした。
クリスマスの寝子島の町並みから、流の良く知るRPGゲーム『サタンクロース・ファンタジー』の雪原の風景に。
目の前にいた目つきの悪い雪だルマンが飛び掛ってきたから、とりあえず落ちてた木の棒で殴り倒してみたのだが、どうやらレベルアップしたらしい。
「サタンクロース・ファンタジーの世界にいると仮定すると、最初に始まりの村に立ち寄るべきか」
サタンクロース・ファンタジーはその名の通りファンタジーRPGだ。
異世界から召喚された主人公は雪原で雪だるマンを倒した後、すぐそばにある村に向かっていくことになる。
そこが始まりの村だ。
始まりの村では、異世界からの訪問者である主人公に、この世界の状況を詳しく説明してくれる神父様にも出会えるし、旅の宿もある。
冒険に役立つ手引書や、初期装備なども大体手に入るだろう。
主人公の職業は戦士、剣士、武人、白魔法使い、黒魔法使い、占い師、学者、ダークナイトなど、このほかにもRPGで馴染み深い職業がそろっている。
そして、主人公達は始まりの村から魔王の待つ魔王城へとレベルを上げながら向かっていくのだ。
(念願のゲーム世界。楽しませて頂きますか)
レベル上げ、面倒なんだけどね。
ぼさぼさの髪を片手で軽く弄り、流は始まりの村へと向かってゆく。
新月の晩。
冷たい玉座に腰をかけながら、
穢土原 礫は一人、嗤っていた。
口の端を上げ、灰色の瞳で窓の外を見つめる。
「この日を、俺は、14年待った。この、新月の晩を!」
玉座から立ち上がる。
漆黒のマントの裾が豪華にはためく。
彼の手が、窓辺に触れる。
するとどうだろう?
闇にくすんだ窓辺が一瞬にして黄金の輝きを放ちだす。
そう、彼は今、魔王となった。
触れるものすべてを黄金に変える魔王に。
この城でサンタクロースとなり、人々に幸せを配っていたことが走馬灯のように頭をよぎる。
だがそれは仮の姿。
真の姿はサタン・クロース。
魔王との契約者。
14年の時を経て、彼は今、このサタンクロース・ファンタジーの地に魔王として君臨する。
「賭けるか? 俺が勝つか、てめぇらが勝つか」
魔王たる俺が負けるはずがないがな。
まだ見ぬ、けれど必ずこの城にやってくるであろう勇者達を思い浮かべる。
傲慢かつ絶対的な自信を持つ高笑いが、魔王城に響き渡った。
はい、こんにちは?
今回は、クリスマスイベントの『サンタさんに手紙を送ろう!』企画より、水守 流さんの願いと穢土原 礫さんの願いを採用させて頂きました。
寝子島とは違う、ゲーム世界『サタンクロース・ファンタジー』は、魔王に支配された王道ファンタジーRPGです。
始まりの町周辺にはそれほど強いモンスターはいませんが、魔王城周辺には強力なモンスターが出現します。
特に、雪だるまに良く似た雪だるマンや、雪の精霊、真っ白なスノー・ドラゴンなど、雪にちなんだモンスターが多く出現するでしょう。
魔王討伐を目指すもよし。
村人Aになりきって、冒険者様ご一行を応援してもよし。
囚われのお姫様になってもよし。
ガイドに出てきていない踊り子や商人などの職業を選ぶのも、もちろん大丈夫です。
魔王の右腕で、城の守りをしているなんていうのも、もちろんOK。
いっそわれこそは真の魔王! なんていうのもありです。
魔王様が一杯になってしまったり、勇者しかいなくなってしまった場合は、NPC魔王やNPC勇者様を出現させますので、遠慮なく、自分がやりたい役で遊んでください。
沢山遊んで満足すると、自然とキャラクターたちは元の寝子島の世界に戻れます。
魔王を倒さなくても大丈夫です。
また、サタンクロース・ファンタジーの世界でのみ使える魔法や必殺技なども自由に考えて使用して下さい。
ただし、あまりにもチートすぎる能力の場合、発動できずに変わりに空から大量のお仕置き子猫さま(サンタ服着用。愛らしいです)が降ってきます。
どんなお仕置きかは、秘密です。
皆様の楽しいアクションをお待ちしております。