焼きそばパン再び！　あの壁を登れ！｜リアクション

焼きそばパン再び！　あの壁を登れ！

☆スタート！

　昼休み開始のチャイムと共に、いよいよスタート！
　一斉にボルタリングの壁に走る生徒たち。
　
　髪を肩の後ろで縛り帽子を深めに被った夜海霧楓が走り出した。
（ひりつく様な闘気と殺気を感じる）
　コメディエアーの影響だろうか。
「気を抜くと飛ばされそうだぜ」
　１０月から芸術科に転入してきた楓。
　等価交換とギブアンドテイクをよく唱え、契約・取引として成立すれば裏切らないことで信頼を得た。
　今回は体力勝負が得意でないクラス連中からの依頼で挑戦することになった。
（弁当派の俺なら裏切る事がないから、だそうな）
　小柄で眼鏡、どちらかというとこんな勝負には似つかわしくない体格だ。体力に自信があるわけではない。
（俺に一気に追い上げる手段はない）
　女子のパンチラを回避すべく、女子より先に上り始めることにした。
（屋上に早く着けさえすれば、秘密兵器があるからな）

「焼きそばパンドリームウルトラＤＸバージョン？　ヨロシイ、では本気を出して取りに行こう」
　お約束として争奪戦に参戦宣言した尾鎌蛇那伊。
　楓が感じた闘気の元は彼だったかもしれない。
　鎧と言えるほどの筋肉を纏い、周りが道を開けてしまうほどの圧倒的な存在感だ。
「うふふっ、このバトルアスリート状態の争奪戦、結構楽しみにしてたのよね」
　蛇那伊は壁に向かうと、まずは呼吸を整え気を練り上げる。
　ボルダリングについての知識は得ている。足→手→足→手の順番で登る、といったようなものだ。
　だが、その常識に従う気はない。
（全身の筋肉をフル活用して登ってくわよ。ロープを使うのは最小限、でなければこの筋肉が泣くわ。片腕でも全身を引き上げれるように鍛えたんだもの）
　必要に応じて片腕でぶら下がったり、片腕で全身を引き上げた後に足場に足を置いたり。
（上から何か落ちて来てもすぐ避けれるようにするわ）
　ロープを使うよりは遅いが、着実に巨体を支え危なげなく登っていく。

「今度はボルダリングで焼きそばパン購入を目指すのね。楽しそう！」
　気は優しくて力持ちな体育科女子、藤堂月乃は行動を制限されないようにスパッツをスカートの下に履き、ポケットにはお昼代を入れた財布と、飴玉も入れて準備万端。
「これで下から見られても大丈夫！　よーし、頑張っちゃうよ！」
　登る前に、飴玉を口に入れてろっこん『一粒入魂！』を発動した。
　飴玉を舐めている間だけ、身体能力が普段より数段アップするという能力だ。
「なぜ壁を登るのか？　そこに壁があるからだね！」
（目指すは、ドリームウルトラＤＸバージョンの焼きそばパン！　今度こそ、至高の焼きそばパンを手に入れてみせる！）

「何がなんでも、今日の焼きそばパンは私がゲットするわよ！」
　身長１８０ｃｍのバスケット部部員、羽生碧南も焼きそばパン争奪戦に参戦していた。
（今回の焼きそばパンは『～ドリームウルトラＤＸバージョン～』とのことで材料選びから既に半端じゃない。
　しかもお値段は100円！　他のパンとねこーひー牛乳を買ってもワンコインでお釣りがくる！　これはもう何が何でもゲットしなくちゃだわ！）
　北壁の攻略法をざっくりと思案する碧南。
「ここはもう小細工なしで真っ向勝負ね」
　普段はのんびりおっとりとしていて、闘争心の強そうなタイプではないが、ひとたびコートに立つと性格も表情も変わり、「戦う女」になる碧南。
　どうやら今回も「戦う女」のスイッチが入ったようだ。気合いを入れて北壁登頂を目指す。

このページにイラストを設定する