みんなショタったらいいじゃない（例外もあるけど）｜リアクション

みんなショタったらいいじゃない（例外もあるけど）

承：洋館でチャレンジ！　ショタVS苦手な食べ物！

　――洋館。

「はにゃ～～～～～っ？！」
　羽生碧南は、思わず変な声を上げていた。と、いうのも、気がついたら、いきなり５、６歳ほどの少年になっていたからである。
　ふわふわとした茶色い髪に、あどけない顔。どこからどう見てもショタである。因みに、普段の彼女はこちら（↓）のようなかわいいお嬢さんである。

　……お解かりいただけただろうか？　爽やか系のお嬢さんが、知的ショタに変化している。何かの夢だと言うのだろうか……。
（さっきまで、桜花寮の自分の部屋でゲームをしていた筈よね。まさか似たシチュに巻き込まれた？）
　碧南が遊んでいたのは、今年一番に発売された乙女ゲーム『いきなりショタ！』というもの。内容は『とある学園の化学教師が理科準備室で怪しげな実験をした結果、誤反応を起こして爆発拡散。偶然その周辺に居合わせた６人のイケメン（攻略対象）がショタになってしまう』という物。そこからストーリーが始まりショタ化したイケメンと協力しながら騒動を治めたり、ショタVerと普段Verのイケメンと交流したりできるのだ。
　しばらく困惑していた碧南だが、近くにあった鏡を見、別の意味で驚く。というのも、彼女の姿は白ポロシャツ＋半ズボンにサスペンダーと伊達眼鏡で攻略キャラ（ショタVer）の１人。騒動を引き起こした化学教師『下條貴也』そのものだったのであるっ！！

　説明しよう！　『下条貴也』は『いきなりショタ！』の攻略キャラクターであり騒動を引き起こした張本人である。研究者畑の両親から生まれ、学生の頃から怪しげな実験をしていた事で有名らしい。知的かつ爽やか（なのに多少マッドサイエンティスト）な青年である。

（これって、奇跡？！　折角だからキャラになりきってみようかな？）
　内心でテンション駄々上がりの碧南だったが、とりあえず深呼吸。貴也は、落ち着いたキャラクターである。知的で爽やかな青年で、ショタ化しても性格はそのままだった。
（少しは、大人を演じなくちゃね！）
　と意気込んだ彼女はそこで足音を聞いた。振り返ると、１１歳から１３歳ぐらいに見える少年がご機嫌な様子で歌っていた。歌うのが大好きな獅子目悠月である。

（この声なら……普段とちがう歌が歌えるな）
　当初は何故こんな風になったのか全く解らなかった悠月だが、自分から発せられる柔らかくて澄んだボーイソプラノに興味を持ち、どこかにピアノかヴァイオリンがないか探していたのである。
「ねぇ、ピアノが何処にあるか知らない？」
「僕は、見ていないよ」
　悠月の問いに、碧南が落ち着いて答えるも、内心はこちら。
（えっ？　音楽大好きな尚吾くんもいたの？！　これって偶然？！　これはこれで美味しいし、運がいいわ！！）

　説明しよう！　尚吾くんとは『いきなりショタ！』攻略キャラの１人で、歌うことが大好きな良家の子息である。普段はクールな俺様系なのだがショタ化すると悪戯大好き小悪魔系ショタになりヒロインを翻弄するという設定で、彼のルートではピアノを探して学校を歩き回るシーンがあるのだ。

　と妄想世界へトリップしかける碧南だが今は『下条貴也』になりきっている、という自覚で落ち着く。彼はどんなときでも慌てない。
「音楽が好きなのかい？」
「うんっ。歌うのが一番すきだ！」
　碧南の問いかけに、悠月は楽しげに笑って答える。その顔が本当に可愛くてちょっとだけ、どきっ、とする碧南だったがそこは堪えた。一方の悠月は近くにあったドアを開け、「こことかないかなー」と覗き込んでいる。だが、お目当てのピアノはなかったようだ。
「俺でよければ、探すの手伝おうか？」
「いいのか？」
　碧南がそう申し出ると、悠月の表情がぱっ、と明るくなる。こうして碧南と悠月は洋館内を楽しげに歩き回るのであった。

　※ちなみに、悠月によって開かれたドアは、開けられたままです。

このページにイラストを設定する