ブラックサンタウォーズ｜リアクション

ブラックサンタウォーズ

【御剣刀の場合】

　御剣刀も、サンタを探して走っていた。

（また神魂か！　しかも、今度はサンタかよっ！）

　刀は全力で街を疾駆し、サンタの姿を発見する。
　彼がサンタを視界に捉えたときにはすでに二人の知人――サキリ・デイジーカッターと天動記士郎がサンタと接触を試みていた。
　そこで、刀は目の前でサキリが柴犬に変えられてしまう姿を目撃する。
（……デイジーカッターっ！？）
　あと少し自分が来るのが早ければ、と刀は自らを詰る。
　が、悔やんでいる時間はなかった。
　幸い、変身させられたものはサンタを殴ればもとに戻るだろうとテオから聞いていた。
「天動さん、そいつから離れてっ！」
　刀は声を張り上げると、地面を蹴ってサンタに急接近していく。
　その声に、サンタと記士郎が刀を振り返る。
「ちっ、また邪魔が入ったか……。だが――」
　次の瞬間、サンタは『まきまきうんち』を記士郎に向かって投げた。
「……おっと」
　記士郎はさっと身をかわして避けた。
『うんち』はそのままポーンと宙を滑り、飛んでいく。

「なにっ……！？」

　サンタは目を見開く。
　その隙を刀は見逃さない。
　次の瞬間、刀は地面を大きく蹴って跳躍して、鋭いとび蹴りをサンタに向けて放っている。　
「見敵必殺！　御剣キック！」
　
　が、しかし。

「…………！？」

　ブラックサンタの身体は、刀の蹴りが命中する直前に、ふわりと宙に浮いて横滑りし、こともなげにその蹴りを回避してみせた。

「なんだ、あの妙な動きは……！？」
「ほう。あの妙な動きは厄介ですねぇ」

　驚く刀と記士郎に対し、サンタはフフフと笑う。

「サンタさんの邪魔をする悪い子にはもれなくこいつをプレゼントだ」

　サンタは、袋から新たな『まきまきうんち』を二つ取り出し、見せつけるようにして前に出した。

「ねー、ママ。あのサンタさん、うんちもってるよー」
「コラ、見ちゃいけません！」

「「「…………」」」

　いたいけな少女の声に、場には何とも言えない空気が満ちた。

「……さあ、先にうんちになりたいぼうやはどっちかな？」

　サンタはちょっと涙目だった。

　と、そのとき。

（ん？）

　刀は見た。

　一匹（？）のまきまきうんちが恨めしそうにサンタを見ている姿を。

（あれは、もしかして……）

「剣士さん、来ますよ！」

「……ッ！」

　記士郎の声に弾かれるように顔を上げて、刀は意識を目前の敵へと切り替えた。