ブラックサンタウォーズ｜リアクション

ブラックサンタウォーズ

【二人の無邪気な子供達】

　サンタは、次の獲物を探し、寝子島をうろついていた。
　そして、
「わぁっ、サンタさんだぁ！」
　また一人、無邪気な少年がサンタを見つけてしまう。彼の名は曖浜瑠樹。小学３年生だ。
「メリークリスマス、ぼうや」
　サンタは邪な笑みを浮かべて瑠樹に語りかける。
「ん？　でも、今はまだクリスマスじゃないよねぇ」
　はっと気づいて首を傾げる瑠樹。
「あっ、いや……」
　サンタは慌てた。
　が、すぐに瑠樹は、
「そうかぁ。今年は少し早めに来てくれたんだねぇ！」
　と、一人で納得した。
「そ、そうなんだよ」
　サンタはホッとした。
　と、そのとき。
「あー、サンタさんだー♪」
　また一人、少女の声が空の下に響く。
　声の主は、小学二年生の少女、一原みとだった。
「サンタさんはどこのお店のサンタさんなんですかー？」
　みとは、可愛らしくサンタに駆け寄り、いきなり核心を突いた質問をした。

「「え……？」」

　と、サンタ＆瑠樹は驚きの表情で、みとの顔を見やる。
「は、ははっ。い、いったいなんのことかな？」
　サンタは目が泳いでいた。
　そんなサンタに変わって、瑠樹が、みとの問いに答える。
「オレ知ってるよぉ。サンタさんはねぇ、北の国から来るんだぁ。そうだよねぇ？」
「あ、ああっ。そ、その通りさっ！」
　サンタは首をぶんぶんと振って頷く。
　どうも、このサンタ、設定の詰めが甘いようだ。
「えっ、サンタさん、本ものなの？　そっくりさんじゃないの？　すご～い！」
　みとはそんなサンタの言葉を信じてしまったようだ。
「ささ、二人ともプレゼントをあげようねぇ」
　サンタは、ひきつった笑みを浮かべつつ、ごそごそと白い袋の中を手でさぐる。
「二人はどんな動物が好きかな。天そばかな、幕の内弁当かな？」

「「え……？」」

　今度は瑠樹とみとが目を開く側だった。
　二人は顔を見合わせると、互いの顔を寄せ合って、

（……ねぇ、『てんそば』って、動物？）
（きっとこのサンタさんは日本に来たばかりで、日本語が苦手なんだよぉ）

　と、小声で会話した。

　その瞬間、二人は、目と目でサンタさんを傷つけないようにする合意を固めた。

「あ、そのカエルさんのぬいぐるみカワイイ！」
　と、次の瞬間、みとは白い袋の中から覗く、カエルのぬいぐるみの姿に目を輝かせた。
「ほう。お嬢ちゃんはカエルさんが好きなのかな？」
「うん！　みと、カエルさん大好き！　あのね、そのカエルさんはヤドクガエルさんっていうの！　ヤドクガエルさんはね、すっごいの！　すっごい毒があって、食べたら死んじゃうんだって！　それでそっちは――」
　みとは凄い勢いで語り始めた。
「え……？」
　ブラックサンタが思わずその動きを止める。
　が、すぐに我に返り、袋からネコとカエルのぬいぐるみをそれぞれ瑠樹とみとに差し出す。
「わぁ、くれるのかねぇ！　うれしいなぁ！」
　瑠樹は満面の笑みでそれを受け取ろうとする。
　一方で、
「わーい！　あ、でも、お母さんが知らない人からものをもらったらダメって……」
　みとは一瞬戸惑った表情を見せる。
　しかし、
「サンタさんは皆知ってるからノーカンだよぉ」
「だよね！」
　瑠樹の鶴の一声で、みとはぬいぐるみをもらう決心をした。

　そして、

「君達は本当に素直な良い子だねぇ」

　サンタは邪悪な笑みとともに、二人にぬいぐるみを手渡す。

　刹那、サンタの赤い服が妖しい黒に染まり――

「わーい。ありがとうにゃ――にゃあ？」
『あれ？　サンタさんがおっきくなった？』

　次の瞬間、瑠樹とみとは、小さなネコとさらに小さなカエルに、変身させられてしまっていた。

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