ブラックサンタウォーズ｜リアクション

ブラックサンタウォーズ

【倒せ、黒き聖十字】

　ミルカ・アハティアラは猫の姿で、サンタの名乗りの場に居合わせた。
（サンタクロスだかサザンクロスだか知りませんが、もう許せません！）
　ミルカは勝負に出た。
　サンタを視界に捉え、薬局のカエルの置物に前足をつけて、ろっこん《Joulutonttu》を発動！
　ミルカは、カエルにされた少女（一原みと）の敵討ちのつもりで、カエル攻撃を仕掛けた。

「むっ！？」

　いきなり現れたカエルに、サンタだけでなく、そこにいた誰もが驚いた。
　サンタは宙を滑り、カエルを回避する。
　だが、その瞬間に、カエルはサンタの視界を一部遮っている。
　その死角をついて、今度は天動記士郎が前に出ていた。
「悪いサンタにはお仕置きが必要ですね」
「……っ！？」
　元ボクサーである記士郎の鋭いワンツーがサンタに放たれる。
　しかし、滑るような動きで、サンタは記士郎の攻撃も回避する。
「俺は悪いサンタじゃねぇ。呪われし、黒き聖十字（サンタクロス）だ！」
「うわっ！？」
　サンタは白い袋を振り回して記士郎をぶっとばした。
　白い袋は痛くなかったが、サンタの言動はとてもイタかった。
　と、そこで殴った拍子に袋から飛び散ったぬいぐるみの数々に、ネコの姿でサンタを追ってきた曖浜瑠樹の目がキラリと輝く。

（あ、ほかにも可愛いぬいぐるみがいっぱいだぁ。和むなぁ……）

「にゃー」
　と、思わず和んだ瑠樹は、無自覚に、ろっこん《ゆるゆる和みと恩恵の輪》を発動させる！

　刹那、その場にいた誰もが脱力した！

「くぅ……。なんだ、この気持ちは……。俺様の中の悪が薄れていく……」

「にゃ？」

　しかし、当の本人の瑠樹はそもそもろっこんの存在自体に気づいていない。
　と、そのとき、様子見に徹して、瑠樹のろっこんの範囲外にいた羽生碧南がサンタの元にダッシュしてくる。

「よくわかんないけど、チャンス！」

　碧南は一気に懐に飛び込み、サンタを殴ろうとする。
　だが、
「……ちぃっ！？」
　サンタはすんでのところで立ち直り、ぬるっと回避。
　そして、
「おのれ！」
「きゃう！？」
　と、碧南に白い袋をぶつけてぶっ飛ばした。
「物陰からサンタさんを狙う悪い子にはこいつをプレゼントだ！」
　サンタは碧南に目掛けて天ぷらそばのぬいぐるみを投げた。
「どういうぬいぐるみよ、それ！？」
　突っ込みも虚しく、碧南は天ぷらそばになってしまった。
（ああ、もう！　これじゃ動けないじゃない！）
　そばの器は揺れていたが、もう碧南の声は仲間達には届かなかった。

「さあ、次にプレゼントが欲しいのはどの子かな？」

　サンタはまた不敵に笑う。
　しかし、さすがにその表情にはわずかな疲れが見え始めている。

　そして、戦いは最終局面へ。