今年の汚れは今年のうちに？　久保田家ダンジョンの怪！｜リアクション

今年の汚れは今年のうちに？　久保田家ダンジョンの怪！

　見渡す限りのゴミと、浮遊するホコリ。その光景に唖然としたのは、この場で唯一の『ひと』である羽生碧南である。
「ココまで来ると、ある意味壮観だわ……。認めたくはないけど」
　中野先生に頼まれてきた彼女はマスクと軍手だけではなくトングとビニール袋も準備していた。目に付いたゴミを片っ端からビニールへと入れていくスタンスであったらしい。因みに、この時点で神魂の仕業であるとかはわかっていないかもしれない雰囲気があり、一部の『もれいび』たちからは「大丈夫か……？」と心配されていた。
「それにしても、マスクしていてよかった」
　碧南の呟きに頷いたのは、桜庭円だった。彼女は「ゴミ屋敷、楽しそう！」とわくわくした様子で向かっていたのだが、今はそのテンションも別の意味で高くなっている。
「ゴミ屋敷って聞いてきたけど、実際に来てみると、ダンジョンだった……。しかも空気乾燥してるしホコリも凄いし、マスク無いとつらいねぇ」
　そう言いながらも「まぁいいや」と花粉対策ゴーグルと、マスクを装着しており役立ってるなぁ、と思っていた。そんな彼女は雑巾の他、長柄のフロアモップ、ポリ袋を何枚かに、スプレーボトル（重曹入り）を準備している。
　そして、唯一の社会人である深縹露草は、完全に巻き込まれた口である。偶然掃除道具などを安く購入し「家に帰ったらさっそくお掃除デース」とるんるん気分で久保田先生の家の近くを歩いていたのだが、巻き込まれたのだ。
「ふむ、これも何かの縁デース。お掃除、がんばりマース♪」
　と、露草は三角巾を締めてゴーグル、マスク、軍手を装着し、割烹着を纏っていた。手には竹箒と雑巾。古きよきおかんスタイルである。それらを取っ払い黙っていると神秘的なイケメンなのだが、何故か妙に板についている。
「これで完璧なのデース！　ＨＡＨＡＨＡ！」
　妙に残念な感じが漂うものの、彼の特技は家事である。きっと戦力になるであろう。露草を知る者がいたらそう思っているに違いない。
「諸君、掃除好きな俺が来た」
　びしっ、とつなぎでびしっと決めたのは八神修。彼は寝子高大掃除の際も演説をぶちかますほどの掃除好きである。もちろんマスクとゴーグル、軍手は装着済み。用具も一式揃えている辺りどこぞの業者さんと見間違えてもしょうがなかった。事実マンションに来た際業者を手配していた人に間違えられたことをココに記しておく。
「俺たちは１１人しかいない。だが、全員がプロフェッショナルだと信じているよ」
　と、クールに言い放てば、自然と全員の顔に不敵な笑みが浮かび上がる。やる気と自信、（そして一部つっこみやら怒り？）が漲った眼差しには強い光が宿っていた。

　集まった面々はテオから聞いた内容で推測を立て、「ろっこんは使用しない方がいいのではないか？」「恋愛的な話は避けたほうがいいのではないか？」など作戦を立てていく。僅かな時間の会議を経て、一同は円陣を組んだ。
「ともかく、これ以上見てられねぇ。ゴミは駆逐する、みっちゃんも助ける。両方こなせばいい話だろう？　――いくぜテメェら」
「「おーっ！！」」
　静かに言い切った庚に全員が頷き、拳を上げて景気をつける。そして、視線の先に蔓延るモンスターたちへと立ち向かうのであった。

　その途中、庚が辺りを見渡して何気なく呟く。
「やっぱり、マッピングした方がいいかもしれねぇな、コレ」
「それじゃ、スマホでダンジョンの簡易地図を作るアル」
　華菜子は早速スマートフォンを操作し、地図を作り始める。この２人のひらめきが、後に効果を発揮していく事になるとはこの時全く予想していなかった。

　と、ここでお気づきになっている事だろう。くどいほどに個々人の装備を紹介している事に。しかし、これほどまでに装備を固めなければ、このゴミ屋敷ダンジョンには立ち向かえないのである。
　彼らが歩くたびにうっすらとホコリは舞い、気管支が弱い者にはひとたまりもないほどである。仮に、最低限のマスクですら装備していない者が入れば、ホコリと乾燥で酷く咳き込み、掃除どころではなかった筈だ。
（これは、徹底的に掃除する必要がありマース）
　露草は辺りを見渡し、深いため息を吐いた。

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