トワイライト・フェアリーテイル　―逃げ出した姫―｜リアクション

トワイライト・フェアリーテイル　―逃げ出した姫―

　華夜に理由を問えば、彼女は静かに口を開く。
「兄が見合いに連れてくる殿方は、なんの面白みもありませんでした。ただ笑顔の人ばかり。それ以外は公務に追われてばかりで……。私は日々に疲れていました。そんな時にこの世界を見、見つけたのが……貴方がたが先生と慕う女性でしたの」
　映像の中で、まゆは楽しそうに暮らしていた。それが、華夜には酷くうらやましかった。そして、悔しくなった……と悲しげに言えば５人はなんとも言えなくなる。
「確かに、気持ちは解らなくもない。だけども、やっていい事と悪い事があるだろう？」
　修の言葉に項垂れる華夜に、一同はどう話しかければいいのか戸惑う。だが、ただ一人斗南がそっと声をかけた。
「自分だけを見てくれる人が、欲しかったのか……？」
　華夜は、今にも泣きそうな顔で、ただ黙り込んだ。

　後ほど、まゆを連れた真央と時子、サキリが合流した。華夜はまゆに謝罪し、それをまゆは受け入れた。
「色々華夜ちゃんもあるとは思うけど、もうあんな事はしないでね？　……うーん、それにしても空を飛んでた気がするんだけど……」
「そうですね。狐か何かに化かされたって言葉もありますし」
　『ひと』であるが故に混乱していたまゆだが、修の言葉に頷き、そういう事にしておいた。
　また、サキリは先ほどの一件について謝る。と、華夜は安堵したように笑う。
「実を言うと、見合いを断った相手が放った刺客じゃないかとか思ってしまったのよね。過去にもそういう事があったから」
「中々ディープな事になっているよね。あぁ、それと……コレに見覚えはない？　白虎族の白鋼って知ってる？」
　サキリがそう言いながら見せた黒曜石のナイフに華夜は静かに頷く。
「知ってるも何も、白虎族の長だもの。幼い頃からの知り合いよ。あの人も早く奥様をみつけたらいいのに……。仕事人間なのよね」
　どうやら寝子島へ来た１件を知らないようで、サキリなど１件に関わった面々は教えるべきか否か悩んだ。

　落ち着いたところでねむるがぽん、と手を叩く。
「んじゃ、最後に一枚プリントシールでも撮ってみない？　こっちで遊んだ記念に、ね？」
「それ、いいな！」
　豪がぱちん、と指を鳴らして賛成し他のメンバーも頷く。戸惑う華夜に蛇那伊が手を伸ばして誘い、皆でぱちり、と一枚。うっかりあくびしてしまったねむるは「げっ」と思わず声を上げるが、苦笑してそれを渡す。
「……ま、これはこれで味があっていいよね。華夜さんどうぞ、僕達からのプレゼントだよ」
「え？　いいの……？」
　華夜の言葉に、一同頷く。彼女は大切そうに抱きしめ、嬉しそうに微笑んでありがとう、と呟いた。

　全てが丸く収まった事を仙藤紫はねこったーで知った。既に帰宅していた彼女は、疲れたので少し休んでいたのだ。
（先生が、帰ってきたのね）
　静かに安堵の息を吐いた彼女は、ミルクティーを飲みながら空を見る。すっかり暗くなった空に星を見、何処となく幸せそうに目を細めた。
「これで、めでたしめでたし、かしら」
　紫がそう呟いた頃、青果店では宮祀智瑜もまた解決した事を知り、喜んでいた。歴史が変わるかもしれないこの１件が収まったし、先生も戻ってきた。それがただただ嬉しかった。
（明日、会ったら元気に挨拶しましょう）
　にっこり笑いながら天を仰げば、月が輝いていた。
（華夜さん、今度は入れ替わり無しで来て欲しいです）

「恋に流されるのは月の民の特性かな」
　修がそんな風に言えば華夜は苦笑する。フードコートで色々食べつつのんびりしていると、いつの間にか蛇那伊は普段どおりのメイクをした姿に戻っていた。
「ふぅ、あの口調は肩肘張っちゃって疲れるのよね～。やっぱりこっちがアタシに合ってるわ♪」
「そう、かもな」
　蛇那伊の言葉に、思わずくすっ、と笑いそうになる斗南。華夜はそんな蛇那伊の姿に驚いたようだが、これはこれで「楽しい人ね」と前と同じように接する。と、真央がまゆと華夜の手を取って走り出す。
「まゆちゃん先生も華夜ちゃんも遊ぶのだ！　時子ちゃんたちも一緒に遊ぶのだ。万事解決ならもう遊ぶしかないのだ」
「ちょっ、ちょっと真央ちゃん！」
「少し待ってくださいませんこと？！　私だって帰る時間が……」
　そんな姿を時子たちは其々苦笑したり、笑いを堪えたりして追いかけるのであった。

　その夜、事件に関わった者全てにこのような手紙が送られる。
『妹・華夜が起こした事件を収めてくださり、心から礼を言う。　珊夜』

（終）

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あとがき

担当マスター：菊華伴
ファンレターはマスターページから！

菊華です。
今回は時間制限つきのトラブルでありましたが、結果は下記のとおりです。

・華夜の正体を明かすことができた
・華夜の希望を叶える事が出来た
・相原　まゆの救出により制限時間を排除した
　以上の点より、【相原　まゆの救出成功】といたします。

今回のシナリオは【華夜がどうしたら翼を出すのか】というところがカギとなりました。
ご明察にございます。くわしくはリアクションをご覧下さい。

また、空にいる状態で相原先生を助ける場合は
・飛んでいる状態のまゆから羽衣を奪う
というのが鍵でした。もし、羽衣を持った状態で地上に戻しても再び浮き上がる事になっていました。
今回はアクションが面白かったのでリアクション通りの結果となっております。
まぁ、華夜が正体を明かすと魔法が解け、ゆっくりと地上に降りると言う仕組みでした。

＞華夜について
こちら、自然体な付き合いがカギでした。
下手に演技すると見透かされます。腹芸が得意な人ほど警戒されるという具合です。
演技していても敵意とか打算とかを滲ませなければ大丈夫でした。

妹の事で迷惑をかけた、と華夜の兄が皆様に手紙のほか次のものを送っています。
・菓子折り（中身は大福餅っぽいもの）
・朱雀族の羽（お守りにどうぞ。朱雀族は恩義を受けた人や信頼できる人に羽を渡すという風習があるそうです）

ともかく、お疲れ様でした。
また縁がありましたらよろしくお願いします。

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