落葉の季節――男たちの秘密！｜リアクション

落葉の季節――男たちの秘密！

☆イレギュラーな人達　

　ようやく集会が終わり、生徒たちは我先に校舎へ戻っていく。
　そんな中、二年生の屑利執は校庭の片隅に魔方陣を描いていた。
（地毛がカツラになる異変……最初からハゲてる人にはどういう影響があるのか興味があるな）
　非科学的なもの、特に最近ではらっかみ関連を科学的に解明する事に命を燃やす執。
　ハゲを隠そうとか、元々バーコードな人の心境を慮ったりという発想はない。
「つーわけで出でよ沼田さん！！」
　魔方陣に、地味で物静かな中年サラリーマン『沼田さん』が出現した。
　そのバーコード頭から、執はひょいとカツラをはずした。
「おお、ちゃんとカツラになってる。完全なハゲじゃないからな。あ、今日一日ハゲだとばれなければ元に戻るってさ」
　実験結果に満足した執は満足げに去っていく。
「私の頭……」
　何度も異変に巻き込まれて良くも悪くも順応が早くなった沼田さんであるが。
　触れてみて完全にハゲている頭に気づき、慌ててバーコード頭のカツラをかぶり直すと呆然と立ち尽くした。
（ばれなければ？　カツラがばれるとどうなるか……）
　沼田さんは帰ることも忘れて考える。
　執から見たらハゲと大差ないのだろうが、沼田さんはバーコード頭を気にしていないわけではない。
　実生活の中でハゲを見られるよりは、ここにいるほうがマシだ。
　

（……ん、なんじゃあれは？！）
　男子たちの様子が気になり観察を続けていた夜光は、ある一年男子の姿に目が点になった。
　頭ではない、おかしいのは顎であった。黒い顎鬚……に見えたそれは、頭から続くゴム紐だったのだ。
「バレねえ。これなら絶対バレねえ！」
　とつぶやいている。一年生の握利平である。
（風で飛ばされないよう、トランクスのゴムを抜いて、アゴ紐装着したぜ。勿論、自然さを演出する為、黒く塗ってアゴヒゲ風にしたぜ。完璧だな）
　もちろん違和感バリバリであった。
　おまけにゴムを抜いたトランクスがずり落ちる。落ちないよう手で引っ張ってはいるが。
　他の男子はそこまで怪しくないものの、そういえば髪がずれそうな者たちがいることに夜光は気づいてしまった。
（なん……じゃと？　あいつらカツラだったんか……そうか）
　夜光は不思議なときめきを感じた。すでに寒さを忘れている。
「あんた……カツラ被ってるか？」
　夜光は利平に声をかけた。
「は？　何のことだ。いやー、忘れたわー。揉みあげから自然に繋がるアゴヒゲを剃るの忘れたわー」
　あくまでしらを切る利平だが。
「いや、皆まで言わんでも儂はわかる。お互い髪がないせいで苦労したんじゃ、頑張って生きていこうな、同士」
　勝手に仲間意識を持った夜光は利平に馴れ馴れしく肩を寄せた。